労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  鴻池運輸 
事件番号  福岡労委平成23年(不)第14号 
申立人  福岡地区合同労働組合 
被申立人  鴻池運輸株式会社 
命令年月日  平成24年10月26日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人会社が申立人組合からの団交申入れに対し、①団交ルールの設定については中労委の再審査命令を待って対応する、②組合員X2 の雇用契約期間満了は福岡県労委の命令のとおりであり、撤回しない、③雇用契約不更新の他の事例との比較は、会社と個人の個別労働契約にかかわるものであり、開示しない、と文書で事前に回答したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団交ルールの設定について
 当委員会は、平成23年10月21日、22(不)3号事件について「会社は、組合が申し入れた場合には団交ルールの設定を議題とする団交を拒否してはならない」旨の救済命令を発しているが、その後も本件労使間で団交ルールの設定について協議がなされた事実は認められず、被申立人会社は、本件回答時においても、団交ルールについての団交に応諾する義務があったといえる。そうすると、仮に会社が中労委の再審査命令を待って対応するとの理由で団交の席に着くことを拒否した場合には労組法7条2号に反するといわざるを得ない。しかし、会社は、本件回答に併せて団交開催希望日を申立人組合に提案しており、団交そのものについては応じる意思があったとみることができる。他方、組合は、本件回答をもって会社の団交拒否とし、団交日程について回答しないまま抗議文を発したにとどまっており、実質的な協議の可能性を自ら失わせたものと認めざるを得ない。
 以上のとおりであるから、会社が本件回答をしたこと自体をとらえて直ちに団交拒否であると評価することはできず、労組法7条2号には該当しない。
2 組合員X2 の雇用契約不更新について
 X2の雇用問題について組合と会社は合計6回にわたって団交を行っており、その中で会社は一定程度の説明をしてきていることが認められる。そもそも会社としては、組合の要求に応じる義務はなく、団交において合理的な範囲で説明の上、組合との間で十分な議論を尽くせば足りるのであって、要求内容について拒否回答をしたからといってそれ自体が団交拒否となるものではない。したがって、会社が本件回答で、組合の要求には応じられないとの回答を示したことのみをもって団交拒否あるいは不誠実団交に当たるとはいえない。
 会社が「雇用契約不更新の他例比較については、会社と個人の個別労働契約にかかわるものであり、開示しない」旨回答したことは、会社が主張するように仮にプライバシーを考慮するとしても、例えば個人名が特定されないような形に情報を加工して開示するなどの方法も可能と考えられるから、誠意に欠けているといわざるを得ない。
 しかし、本件回答は、慣例どおりにあらかじめ団交事項に関する会社の見解を表明したものにすぎず、団交に出席すること自体を否定する趣旨のものではなかったことは前記1で判断したとおりである。
 また、これに対する組合の対応をみると、機械的に団交要求書と抗議文を発することに終始しており、例えば個人名が特定できない形での情報の開示を求めるなど実質的な協議が進捗するよう努力する姿勢に欠けるところがあったといえる。
 したがって、組合は、他例比較の開示の機会、ひいてはX2の雇用問題についての団交の機会を自ら失わせたといわざるを得ず、少なくとも会社による本件回答をもって団交を拒否したものとまで評価することはできない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡労委平成22年(不)第3号 一部救済 平成23年10月21日
福岡地裁平成24年(行ウ)23号・同25年(行ウ)34号 棄却 平成26年7月16日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約303KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。