労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  田中酸素 
事件番号  中労委平成22年(不再)第12号 
再審査申立人  田中酸素株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  田中酸素労働組合(「組合」) 
命令年月日  平成23年1月19日 
命令区分  一部変更 
重要度  重要命令 
事件概要   会社が、①約6年間にわたって訴訟で解雇を争い、離職していた組合執行委員長のXを21年1月13日付けで同社の小野田営業所に配置転換したこと(本件配転)、②20年12月24日付けでXを出勤停止処分に付したこと(本件処分)、③組合との団体交渉に誠実に対応しなかったことは不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件である。
 山口県労委は、本件配転及び本件処分は労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たり、団体交渉で組合が要求した売上げ、経費、人件費、利益等の会社業績に関する資料を提供しなかったこと等は同条第2号の不当労働行為に当たるとして、会社に対し、①本件配転を取り消し、Xを原職復帰させること、②本件処分がなかったものとして取り扱い、Xが本件処分中に受けるはずであった賃金相当額を支払うこと、③組合との団体交渉で、組合から要求のあった給与・賞与の算定基礎となる売上げ、経費、人件費、利益等の会社業績に関する資料を示し、説明するなどして誠意をもって応じることを命じたところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  1 初審命令主文第3項(団体交渉における誠実応諾を命じた部分)を変更し、今後の団体交渉において、組合員の給与又は賞与の算定の基礎となった会社の売上げ等の資料を示すなどして誠実に対応しなければならない、との内容にする。
2 その余の本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件配転は労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
 本件配転に、契約違反、過重な作業負荷、左遷などの不利益を認めることはできないが、本件配転は、Xが希望していた原職ではなく、Xの職務経験及び業務遂行能力にそぐわず他の従業員が専従しなかった作業に従事させることを内容としていた点で、Xに精神的ないし職業上の不利益をもたらすものであったということができる。
 Xの原職の職場は業務規模を縮小していたものの、人手を要しない状態にあったということはできず、他方で配転先の営業所が人手を要する状況にあったとも認めがたいこと、Xは解雇を争い約6年間離職していたが、Xの業務遂行能力が若干の指導、補助等を補っても通常の業務遂行に耐える程度まで失われていたとみることはできないことからすると、本件配転の合理性には疑問が残る。
 以上に加え、Xは組合の執行委員長であり、会社と組合はほぼ恒常的に対立、緊張関係にあったこと、Xに対する2度目の解雇を無効とする判決が確定するや、Xの意向等を聴取せずに本件配転を行ったこと等に照らすと、会社は、X及び同人らの組合活動を嫌悪し、Xを本社から排除し不利益を与えるとともに、X及び組合の会社及び他の従業員に対する影響力を減殺する意図をもって本件配転に及んだと認めるのが相当である。よって、本件配転は労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
2 本件処分は労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
 本件処分は、懲戒解雇に関する就業規則の規定を適用し、懲戒事由に当たらない事実をも根拠として行った不相当なものである。Xは組合の執行委員長であり、会社と組合はほぼ恒常的に対立、緊張関係にあったこと、Xに対する2度目の解雇を無効とする判決が確定するや、Xの弁明等を聴取せずに本件処分を行ったこと等に照らすと、会社は、X及び同人らの組合活動を嫌悪して本件処分に及んだと認めるのが相当である。
 よって、本件処分は労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
3 会社が組合員の給与・賞与に関する団体交渉で売上げの具体的な金額を示さなかったことは労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
 組合が平成20年2月2日以降の団体交渉に関し救済を求める事実(社長が団体交渉に出席しないこと、賞与に関する資料を提供しないこと、日程調整に応じなかったこと)のうち、会社が、給与・賞与に関する要求を議題に含む同年2月16日の団体交渉で、会社の業績は企業年鑑に載っているので調べてほしい旨を回答するにとどめたことは、不誠実な対応といわざるを得ない。このような会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
4 救済の適否及び方法
 初審が、会社に対し、本件配転を取り消し、Xを原職復帰させること、本件処分がなかったものとして取り扱い、処分中の賃金相当額を支払うことを命じたのはいずれも相当である。
 団体交渉での対応については、会社が平成20年12月6日以降の団体交渉で売上げ等の資料を提供し、組合との間で団体交渉のルールを合意するなど、ある程度誠実な対応をした事実が認められるが、本件に関する事実経過等からみて、会社が今後の団体交渉で交渉に必要な説明を不当に怠る可能性がないとはいえず、正常な団体交渉を定着させるためなお救済を命じる必要があるから、変更後の主文の限度で初審命令を維持するのが相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
山口県労委平成21年(不)第1号 一部救済 平成22年1月28日
東京地裁平成23年(行ウ)第175号 棄却 平成24年7月30日
東京高裁平成24年(行コ)第333号 棄却 平成24年12月6日
最高裁平成25年(行ツ)第130号・平成25年(行ヒ)第169号 上告棄却・上告不受理 平成27年1月22日
 
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