労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  田中酸素  
事件番号  東京高裁平成24年(行コ)第333号  
控訴人   田中酸素株式会社  
被控訴人   国(処分行政庁:中央労働委員会)  
被控訴人補助参加人   田中酸素労働組合  
判決年月日   平成24年12月6日  
判決区分   棄却  
重要度  重要命令に係る判決  
事件概要  1 会社が、①約6年間にわたって訴訟で解雇を争い、離職していた組合執行委員長X1を平成21年1月13日付けで同社のO営業所に配置転換したこと(以下「本件配転」という。)、②20年12月24日付けでX1を出勤停止処分に付したこと(以下「本件処分」という。)、③組合との団体交渉に誠実に対応しなかったことが、不当労働行為に当たるとして、山口県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審山口県労委は、本件配転及び本件処分は労組法7条1号の不当労働行為に当たり、団体交渉で組合が要求した売上げ、経費、人件費、利益等の会社業績に関する資料を提供しなかったこと等は同条2号の不当労働行為に当たるとして、会社に対し、①本件配転を取り消し、X1を原職復帰させること、②本件処分がなかったものとして取り扱い、X1が本件処分中に受けるはずであった賃金相当額を支払うこと、③団体交渉で、組合から要求のあった給与・賞与の算定基礎となる売上げ、経費、人件費、利益等の会社業績に関する資料を示し、説明するなどして誠意をもって応じることを命じた。
 会社は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令のうち③について、今後の団体交渉において、組合員の給与又は賞与の算定の基礎となった会社の売上げ等の資料を示すなどして誠実に対応しなければならないと一部変更し、その余の再審査申立てを棄却した。
 これに対し、会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
 本件は、同地裁判決を不服として、会社が、東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、控訴を棄却した。
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(当審において生じた補助参加による費用を含む。)は控訴人の負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所も、控訴人の本件請求は理由がないから、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり補正し、後記のとおり控訴人の当審における主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 判断」に記載するとおりであるから、これを引用する。
 (原判決の補正)〔抄録〕
(1) 原判決〔第3の1「争点1(本件配転は不当労働行為に当たるか)」のイに係る〕39頁20行目から40頁4行目までを次のとおり改める。
 「イ 上記のほか、会社は、平成20年7月31日言渡しの第2次解雇訴訟控訴審判決の確定によりX1が会社の従業員の地位にあることを争えなくなって、X1の職場復帰を検討したが、本社リース部門では人員補充の必要性があるのに対し、O営業所では人員補充の必要性を認め難く、しかも、洗浄業務のみを長期間行う者はいなかったにもかかわらず、X1をO営業所に配置して洗浄業務に従事させることとし、〔平成21年1月〕13日、O営業所への配置転換を命じる本件配転をしたことが認められる。上記認定事実に、X1が組合の執行委員長であり、第1次解雇訴訟を機に結成されて以来組合と会社が対立し、緊張関係にあったことを併せて考えれば、会社は、業務上の必要があって本件配転をしたのではなく、組合及びその活動を嫌悪し、X1を本社から排除して従業員に対する組合の影響力を減殺する目的で本件配転に及んだものであるから、組合員であることの故をもって本件配転をしたということができる。」
(2) 同〔第3の2「争点2(本件処分は不当労働行為に当たるか)」のウに係る〕43頁4行目から10行目までを次のとおり改める。
 「ウ 会社は、組合及びその活動を嫌悪し、X1を本社から排除して従業員に対する組合の影響力を減殺する目的で、業務上の必要がないのに本件配転に及んだこと、本件処分はこれに先立ち、〔第2次解雇訴訟〕控訴審判決後の〔平成20年〕12月24日にX1に対して行われたものであり、本件処分の処分理由とした非違行為等があったとする時期から数年経過してから行われていること、本件処分の処分理由は第1次解雇訴訟及び第2次解雇訴訟で会社が主張した懲戒解雇事由と同一であり、蒸し返しとなっていること等に照らせば、本件処分は、過去のX1の言動を蒸し返して労働組合の結成及び活動に対する報復ないし嫌がらせを企図したものと見られても仕方がないものであって、会社は、企業秩序回復のために必要があって本件処分をしたのではなく、組合及びその活動を嫌悪し、X1を本社から排除して従業員に対する組合の影響力を減殺する目的で本件配転に及ぶ布石として本件処分をしたから、組合員であることの故をもって本件処分をしたということができる。」
2 当審における控訴人の主張に対する判断
 会社は、①本件配転について、X1の担当業務につき職種を制限する特約はない、本件配転によるX1の職業上ないし精神上の不利益はない、本件配転当時本社リース部門は縮小されており、X1に本社リース部門の業務を担当させる業務上の必要性はなかった、他方、O営業所にX1を配置すればシルバー人材からの補充を繰り返す必要がなくなるから、本件配転の業務上の必要性があった、②本件処分には処分理由があり、相当である、処分理由の発生から5年経過したのは裁判のためであり、やむを得なかった、解雇理由と同一であっても、軽減された処分を行うことは適法である、けじめをつけるために本件処分を行った、③団体交渉については、平成21年12月19日の団体交渉で要求された資料の呈示を約束し、後日これを示して説明したなどと主張する。
 しかし、上記①については、補正の上で引用する原判決が説示するとおり、本件配転は、不利益な取扱いに該当し、業務上の必要があってされたものではなく、会社が組合及びその活動を嫌悪し、X1を本社から排除して従業員に対する組合の影響力を減殺する目的でしたものであるから、会社はX1が組合の執行委員長であることの故をもって本件配転をしたということができる。
 また、上記②についても、補正の上で引用する原判決が説示するとおり、処分理由とした非違行為等があったとする時期と本件処分がされた時期との関係、本件処分の処分理由と第1次解雇訴訟及び第2次解雇訴訟で会社が主張した懲戒解雇事由との同一性等に照らせば、非違行為等に対する企業秩序回復のために本件処分をする必要があったとは認め難く、会社は、企業秩序回復を目的として本件処分をしたのではなく、組合及びその活動を嫌悪し、X1を本社から排除して従業員に対する組合の影響力を減殺する目的で本件配転に及ぶ布石として本件処分をしたから、会社はX1が組合の執行委員長であることの故をもって本件処分をしたということができる。
 さらに、上記③については、確かに、会社は組合との間の団体交渉で、平成20年12月6日には会社の売上げを開示する等、誠実に団体交渉に応ずる方向で改善が見られたなど、評価に値するけれども、補正の上で引用する原判決が認定する事実関係によれば、上記に至るまでの経過に照らし、救済命令により会社に誠実団体交渉義務があることを明らかにしておくことが、以後の団体交渉の円滑化に資することになると考えられるから、救済命令により会社に誠実団体交渉義務があることを明らかにしておく必要はなおある。
 以上、会社が組合執行委員長であるX1に対してした本件配転及び本件処分並びに組合との間の組合員の給与又は賞与に関する団体交渉で組合員の給与又は賞与の算定の基礎となった会社の売上げ等の資料の呈示を適時に行わなかったことの各行為がいずれも不当労働行為に該当し、救済命令を発する必要がある。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
山口県労委平成21年(不)第1号 一部救済 平成22年1月28日
中労委平成22年(不再)第12号 一部変更 平成23年1月19日
東京地裁平成23年(行ウ)第175号 棄却 平成24年7月30日
最高裁平成25年(行ツ)第130号・平成25年(行ヒ)第169号 上告棄却・上告不受理 平成27年1月22日
 
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