概要情報
事件名 |
東日本旅客鉄道(出勤停止処分等) |
事件番号 |
中労委平成22年(不再)第6号 |
再審査申立人 |
東日本旅客鉄道株式会社(「会社」) |
再審査被申立人 |
国鉄労働組合(「国労」)の組合員X |
命令年月日 |
平成23年1月12日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が行った次の行為が不当労働行為であるとして、国労組合員であるXが、救済申立てを行った事件である。
平成 19 年4月16 日ないし同21 年9月29 日までの間において、国労バッジを着用していたXに対し、服装整正違反を理由として、同20 年1月26 日付け出勤停止5日、同年10 月31 日付け及び同21 年9月29 日付け出勤停止10 日の各処分(以下「本件各出勤停止処分」)を行ったこと及びXに対し、平成20 年9月19 日、横浜支社総務部人事課副課長が、エルダー制度を希望しているが、国労バッジを着けているので再雇用できない旨の発言(以下「本件再雇用に関する発言」)を行ったことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。
神奈川県労委は、上記は、いずれも労組法第7条第3号に当たるとして、会社に対し、①本件各出勤停止処分がなかったものとして取り扱い、当該出勤停止処分による月例賃金の減額分相当額及び期末手当の減額措置がなかったならば支給されるべきであった各期末手当の額と既存額との差額相当額の支払い等、②本件各出勤停止処分及び本件再雇用に関する発言に関する文書手交を命じ、③その余の申立を棄却したところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
初審命令主文を変更する。(本件各出勤停止処分が不当労働行為に当たるとした初審命令は維持し、本件再雇用に関する発言が不当労働行為に当たるとした初審命令は取消し) |
判断の要旨 |
1 本件各出勤停止処分を行ったことは労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるかどうか。
(1)会社における国労バッジ着用者はXのみとなったが、Xの国労バッジ着用行為は、他の8名とともに、JR不採用問題に関する四党合意の受入れに反対する活動の一環として行われたものであり、国労内少数派の活動としての意義を有すると判断される。したがって、Xの国労バッジ着用行為は不当労働行為制度による保護の対象となり得る労働組合の行為(組合活動)に該当すると解される。
他方で、Xの国労バッジ着用行為は、会社の就業規則に反し、会社発足後の就業時間中の組合活動に関する労使関係上の運用に反するものであり、労働組合の正当な行為の範囲を逸脱するものといわざるを得ず、組合活動としての正当性を有すると認めることはできない。よって、会社がXに対し、就業規則に反するとして何らかの処分を行うこと自体は不相当であるとはいえない。 (2)上記の判断を踏まえ、本件について、会社の対応をみると、平成14 年3月の警告文(組合バッジ着用者に、さらに厳正な処分を行う旨の警告)の掲出前の訓告処分については、会社がその発足以来進めてきた職場規律・業務指示権の確立を図るということのみを目的とした措置ないし行為とみることができるが、それを超える減給、出勤停止処分については、処分回数・処分内容ともに順次重くなり、かつ、これによる大幅な賃金上の不利益が生じていること等に鑑みると、会社がこれら処分を行った真の意図は、組合バッジ着用が就業規則違反であることに藉口して、Xら国労内少数派の存在を嫌悪し、その弱体化ないし抑圧を図ることにあったというべきである。すなわち、組合内少数派であっても、会社がその存在を嫌悪し、その弱体化ないし抑圧を図ることは、国労の自主的な運営に対する支配介入を構成する。
(3) したがって、Xに対して本件各出勤停止処分を行ったことは労組法第7条第3号の支配介入の不当労働行為に当たるとした初審命令は相当である。 2 本件再雇用に関する発言は労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるかどうか。
(1)本件再雇用に関する発言の経過等をみると、①平成20 年9月19 日、横浜支社総務部人事課副課長は、Xに対し、エルダー制度を希望しているが、国労バッジを着けているので雇用契約はできない旨述べていること、②同21 年7月17 日、会社とXとはエルダー社員雇用契約を締結し、同22 年3月1日以降、Xは会社に再雇用され、グループ会社へ出向していること、③Xは、本件再審査結審後の同年8月5日に死亡していることが認められる。
(2)上記各事実からすると、本件再雇用に関する発言は、国労バッジ着用行為を継続するXに対し、定年後の再雇用はしない旨不利益な措置を示唆するもので、Xの四党合意の受入れに反対する組合活動を嫌悪しこれを抑制するという意図に基づいてなされたものとみるのが相当である。しかしながら、その後の経緯をみると、Xは定年退職後、会社に再雇用されており、加えて同人は既に死亡していること(本件再雇用に関する発言については、その被救済利益はXのみが有し、同人の死亡により被救済利益は消滅していると判断される。)を勘案すると、本件再雇用に関する発言に関しては、被救済利益は失われたものと解さざるを得ない。 (3) したがって、本件再雇用に関する発言について労組法第7条第3号の支配介入の不当労働行為は成立せず、この点に関する初審命令は取消しを免れない。 |
掲載文献 |
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