労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東日本旅客鉄道(減給処分等) 
事件番号  平成20年(不再)第8・10号 
再審査申立人  東日本旅客鉄道株式会社(「会社」) 
再審査申立人  国鉄労働組合(「国労」)の組合員Xら個人9名 
再審査被申立人  東日本旅客鉄道株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  国鉄労働組合(「国労」)の組合員Xら個人9名 
命令年月日  平成22年10月20日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社が行った次の行為が不当労働行為であるとして、国労組合員であるXら9名が、救済申立てを行った事件である。
(1) 平成14年3月28日、会社各事業所に就業時間中の組合バッジ着用者に対し、従前より厳正な処分を行う旨を警告する文書(「本件警告書」)を掲出したこと。
(2) 平成14年7月11日から同19年4月15日までの間に、国労バッジを着用していた国労組合員であるXら9名に対し、服装整正違反を理由として処分を行ったこと。
(3) 平成8年7月23日から同15年9月19日までの間に、Xら5名に対し、服務規律違反を理由として処分を行ったこと。
 初審東京都労委は、①服装整正違反を理由として行ったXら6名に対する各減給処分および各出勤停止処分は、労組法第7条第3号に当たるとして、会社に対し、上記各処分がなかったものとしての取扱い、なかったならば支払われるべき賃金と支給済み賃金額との差額の支払いを命じ、②上記(2)および(3)の各処分のうち、その申立期間を徒過した処分に関する申立ては却下し、③その余の申立てを棄却したところ、Xらおよび会社は再審査を申し立てた。  
命令主文  本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件救済申立ては、労組法第27条第2項の定める期間内に行われたか。
 上記事件概要の(2)および(3)の各処分に関する本件救済申立のうち、各処分発令日から1年以上経過した行為に係るものは、申立期間を徒過した不適法なものとして却下を免れない。この点に関する初審判断は相当である。
2 平成14年3月28日、本件警告書を会社各事業所に掲出したことは労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか。
 会社が、本件警告書の掲出に至った経緯からすると、従前から取り組んできた職場規律確立や是正を図るための施策の一環として行われたものとみるのが相当であり、本件警告書の掲出自体をもって国労やXらの活動を抑制する意図に基づくものとまでいうことはできない。したがって、本件警告書の掲出自体をもって不当労働行為とまではいえないとした初審判断は相当である。
3 Xらの国労バッジ着用行為が労働組合の正当な行為(正当な組合活動)といえるか。
 Xらは、いずれも勤務時間中に、顧客ら第三者と接触する職場において国労バッジを着用していたものであり、国労バッジの形状(1.2cm四方程度)等からみて実際の業務阻害の程度は小さいとしても、国鉄改革の経緯から職務専念義務、服装の整正、勤務時間中の組合活動の禁止等を定めた会社の就業規則には、一般的な合理性を有することに加えて、特別の経営上の必要性を有することからすると、Xらの国労バッジ着用行為は、職場規律の確立や企業秩序の維持・確立の施策に反するものであって、実質的にも会社の就業規則に反し、労働組合の正当な行為の範囲を逸脱するものといわざるを得ず、組合活動としての正当性を有するとは認めることはできない。
よって、会社が就業時間中の国労バッジ着用行為を継続しているXらに対し、就業規則に反するとして何らかの処分を行うこと自体は不相当であるとはいえない。したがって、Xらの国労バッジ着用行為に対し、本件服装整正違反を理由とする処分は労組法第7条第1号の不利益取扱いの不当労働行為には該当しない。
4 本件服装整正違反処分は労組法第7条第3号の支配介入の不当労働行為に当たるか。
 本件服装整正違反に対する訓告処分については、Xらの国労バッジ着用行為をもって就業規則違反として取り扱うべきでないとする特段の事情があるとはいえず、会社がその発足以来進めてきた職場規律・業務指示権の確立を図ることを目的とした措置ないし行為とみることができる。しかしながら、それを超える減給処分および出勤停止処分については、処分回数・処分内容ともに順次重くなっており、かつ、これによる大幅な賃金上の不利益が生じ、将来的にもその影響が持続するものであること等に鑑みると、会社がこれら処分を行った真の意図は、Xらの四党合意や三党声明の受入れに反対する活動に対し、組合バッジ着用が就業規則違反であることに藉口して、上記組合活動を行う同人ら国労内少数派の存在を嫌悪し、その弱体化ないし抑圧を図ることにあったというべきである。そして、たとえ、組合内少数派であっても、会社がその存在を嫌悪し、その弱体化ないし抑圧を図ることは、国労の自主的な運営に対する支配介入を構成するというべきである。したがって、本件国労バッジ着用を理由とする上記各減給処分および各出勤停止処分は労組法第7条第3号の支配介入の不当労働行為に当たるとした初審判断は相当である。
5 Xらに対し服務規律違反を理由に厳重注意処分等をしたことが労組法第7条第1号および第3号の不当労働行為に当たるか。
 会社の挙示する各処分理由は、いずれも職場規律に反するもので、これらの処分理由は相当である。また、本件服務規律違反処分はXらの組合活動等を理由であるとする証拠はない。したがって、本件服務規律違反処分に係る申立てを棄却した初審の判断は相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成14年(不)第108号・平成17年(不)第86号 一部救済 平成20年3月4日
東京地裁平成22年(行ウ)第708号、平成23年(行ウ)第290号 棄却 平成25年3月28日
東京高裁平成25年(行コ)第183号 棄却 平成25年11月28日
最高裁平成26年(行ツ)第150号・平成26年(行ヒ)第150号 上告棄却・上告不受理 平成27年1月22日
最高裁平成26年(行ツ)第149号・平成26年(行ヒ)第149号 上告棄却 平成27年1月22日
 
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