概要情報
事件名 |
東海旅客鉄道(新幹線関西地本掲示物撤去) |
事件番号 |
中労委平成22年(不再)第13号 |
再審査申立人 |
東海旅客鉄道株式会社 |
再審査申立人 |
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再審査被申立人 |
ジェイアール東海労働組合
同労働組合新幹線関西地方本部
同地方本部名古屋車両所分会 |
命令年月日 |
平成22年10月6日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、分会掲示板に掲出中であった組合掲示物のうち9点を撤去したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
愛知県労委は、掲示物9点の撤去について、いずれも不当労働行為に該当するとして、これら撤去に関する文書手交を命じたところ、会社は再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
Ⅰ 初審命令主文第1項のうち、平成17年6月24日撤去の見出し「Y2JR東海社長は「いじめのようなことは当社にはない」と、5月16日定例記者会見で!」の掲示物及び同年7月19日撤去の見出し「X4 裁判完全勝利!会社、「これ以上裁判を続けるのは無理だ」「すいません、和解させて下さい」」の掲示物に係る救済申立てを認容した部分を取り消し、これらの救済申立てを棄却する。
Ⅱ 初審命令主文第1項を次のとおり変更する。
東海旅客鉄道株式会社は、ジェイアール東海労働組合、ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部及びジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部名古屋車両所分会に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年月日
ジェイアール東海労働組合
中央執行委員長X1 殿
ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部
執行委員長X2 殿
ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部名古屋車両所分会
執行委員長X3 殿
東海旅客鉄道株式会社
代表取締役Y1
当社の新幹線鉄道事業本部関西支社名古屋車両所が、平成17年5月22日から同年9月12日までの間に、ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部名古屋車両所分会の組合掲示板から、掲出中の下記7点の掲示物を撤去したことは、中央労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
今後このような行為を繰り返さないよう留意いたします。
記
1 平成17年5月22日撤去の見出し「「いじめのようなことは当社にはない」! Y2 社長!ウソはやめろ!」の掲示物
2 同年6月3日撤去の見出し「「バカヤロー」「辞めてしまえ」は暴言ではない!これがJR東海では常識」の掲示物
3 同日撤去の見出し「いじめ日勤教育反対!社員運用の変更撤回!第十八回定期大会を成功させよう!」の掲示物
4 同月30日撤去の見出し「暴言!暴論!言いたい放題のY3 科長!!」の掲示物
5 同年8月8日撤去の見出し「JR西日本2年で1182件の「日勤教育」」の掲示物
6 同年9月8日撤去の見出し「会社による組合掲示物の不当な撤去を許さない!具体的な理由を明らかにせよ!」の掲示物(カラー刷り)
7 同月12日撤去の見出し「会社による組合掲示物の不当な撤去を許さない!具体的な理由を明らかにせよ!」の掲示物(白黒刷り)
(注:年月日は文書を手交した日を記載すること。)
Ⅲ その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件のように労使間で組合掲示板の貸与に関する労働協約が締結されている場合における掲示物撤去の不当労働行為該当性の判断に当たっては、労働協約で定めた撤去要件の規定の解釈・適用を中心にこれを判断すべきである。そして、当該撤去要件該当性判断は、撤去された掲示物が全体として何を訴えようとしているのかとの点を踏まえて、その記載内容による被侵害利益の性質、侵害の程度、記載内容の裏付け証拠の有無、掲示物掲出をめぐる労使関係等の具体的事情を実質的・総合的に考察した上で、当該掲示物が労働組合に組合掲示板を貸与した労働協約の趣旨・目的に反するものといえるか否かによって判断されるべきである。
2 この観点から本件掲示物の撤去をみると、組合掲示物9点のうち、「『いじめのようなことは当社にはない』!A社長!ウソはやめろ!」、「『バカヤロー』『辞めてしまえ』は暴言ではない!これがJR東海では常識」、「いじめ日勤教育反対!社員運用の変更撤回!第18回定期大会を成功させよう!」、「暴言!暴論!言いたい放題のB科長!!」、「JR西日本2年で1182件の『日勤教育』」(いずれもカラー刷り各1点)、「会社による組合掲示物の不当な撤去を許さない!」(カラー刷り1点、白黒刷り1点)を見出しとするものについては、掲示物全体を踏まえ、被侵害利益の性質・侵害の程度、記載内容の裏付け証拠の有無、掲示板掲出を巡る労使関係等の具体的事情を実質的・総合的に考察すれば、本件協約で定める撤去要件(「会社の信用を傷つけ、…個人を誹謗し、事実に反し、または職場規律を乱すもの」)に該当するとまではいえないから、これら7点を撤去した会社の行為は労組法7条3号に該当する。
他方、「A社長は『いじめのようなことは当社にはない』と、5月16日定例記者会見で!」、「C裁判完全勝利!会社、『これ以上裁判を続けるのは無理だ』『すいません、和解させて下さい』」(いずれもカラー刷り各1点)を見出しとするものについては、掲示物全体を踏まえ、被侵害利益の性質・侵害の程度等の具体的事情を実質的・総合的に考察しても、本件協約で定める撤去要件に該当するから、これら2点を撤去した会社の行為は不当労働行為に該当しない。 |
掲載文献 |
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