労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  大阪府労委平成20年(不)第30号 
事件番号  大阪府労委平成20年(不)第30号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成22年 9月 7日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   申立人組合が被申立人会社による組合員の解雇撤回、労基法等の法令遵守、団交拒否や不誠実な対応等の改善を求めてストライキを行った後に、会社が①ストライキ期間中に就労した従業員にのみ特別報酬を支給するとともに、ストライキに参加した組合員らの冬期賞与の減額を行ったこと、②組合員らに対する担当業務の変更指示やその他の業務上の不利益取扱いを行ったこと、③組合を誹謗中傷したこと及び組合員らを威嚇する内容等の発言をしたこと、④団交で協議すべき事項がまだあるにもかかわらず、会社が組合の団交申入れを拒否し続けていることは不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、会社に対し①冬期賞与の減額がなければ得られたであろう額と実際に支払われた額との差額の支払い、②組合員に対する「お年玉」の支給、③組合への文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員らに対し、平成19年冬期賞与について、同年10月6日のストライキ開始日の欠勤分が緊急公休に当たるとしての減額がなければ得られたであろう賞与相当額と既に支払った額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人は、平成19年12月30日又は同月31日が同年最後の勤務日となる準社員である組合員で現に出勤したものに対し、「お年玉」としての5,000円を支給しなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年月日
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部
  執行委員長 X1様
株式会社石原産業
代表取締役 Y1

 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、(1)から(6)までについては労働組合法第7条第1号に、(7)及び(8)については同条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)平成19年12月上旬頃から、貴組合員中心の作業ローテーションを作成し、洗車や車両点検等のみの作業指示を行ったこと。
(2)平成19年12月8日、貴組合員X2氏に対し、洗車の指示を行ったこと。
(3)平成19年12月20日、貴組合員X3氏に対し、ワックス掛けの指示を行ったこと。
(4)平成20年2月29日、貴組合員X4氏に対し、洗車とワックス掛けの指示を行ったこと。
(5)平成19年12月30日又は同月31日が同年最後の勤務日となる準社員である組合員で、現に出勤したものに対し、「お年玉」としての5,000円を支給しなかったこと。
(6)平成19年冬期賞与の支給に当たり、同年10月6日のストライキ開始日の欠勤分を緊急公休に当たるとして減額して支給したこと。
(7)平成19年12月7日、当社常務取締役Y2が貴組合員X5氏に対し、組合を誹謗中傷し、同組合員を威嚇する内容の発言を行ったこと。
(8)平成19年12月20日、当社常務取締役Y2が貴組合員X6氏に対し、組合を誹謗中傷し、同組合員を威嚇する内容の発言を行ったこと。

4 申立人のその他の申立てを、いずれも棄却する。
判断の要旨  1 被申立人会社が組合員らに対し、休憩時間や業務内容の変更などの業務指示等を行ったことは、不利益取扱いに当たるか。
(1)組合員X9に対する休憩時間の変更指示は、その是非はともかく、組合員であるが故の不利益取扱いとまではいえない。
(2)会社が組合員中心の作業ローテーションを作成し、一部の組合員に対し洗車や車両点検等のみの作業指示を行ったことは、ストライキ等の組合活動を牽制することを企図して行った不利益取扱いであるといえる。
2 会社が非組合員に対してのみ「お年玉」を支給したこと及び組合員に声を掛けずに新年会を開催したことは、不利益取扱いに当たるか。
(1)非組合員に対してのみ金銭支給を行ったことは、組合と会社との労使関係が悪化する中で組合を嫌悪して組合員らに経済的不利益を与えたものである。
(2)新年会は、会社が組合員を差別的に取り扱おうとして組合員には声を掛けずに開催したとまではいえないので、不利益取扱いに当たるとまでは認められない。
3 ストライキ実施後に、会社が①ストライキ期間中に就労した従業員に対してのみ特別報酬を支給したこと、②組合員らに対し、賞与を減額して支給したことは、労働組合の正当な行為を行ったが故の不利益取扱いに当たるか。
(1)ストライキ期間中に就労した従業員に対してのみ特別報酬を支給したことには一定の合理性が認められ、過重労働への対価に藉口した切り崩し策であったとまではいえないのであって、不当労働行為には該当しない。
(2)組合員らに対する冬期賞与の減額支給に合理性はなく、ストライキへの参加に対する制裁として行ったものであるとみるのが相当であって、かかる行為は不当労働行為である。
4 会社の課長や取締役の、組合員らに対する発言は、組合に対する支配介入に当たるか。
 常務取締役Y2の組合員X5及びX6に対する発言は、会社が組合を嫌悪し、組合を弱体化し、組合活動を阻害することを意図して行った、組合に対する支配介入行為である。
5 組合の団交申入れに対する会社の一連の対応は、不誠実団交又は団交拒否に当たるか。
 組合と会社は8回にわたる団交を実施の上、各項目につき、会社は具体的な根拠などについて一定の説明を行っているとともに、合意には至っていないものの会社が一定の譲歩を示し、対応を行った要求事項もあるとともに、引き続き会社は今後団交に応じる姿勢を見せているのであるから、一連の対応が不誠実であるとまではいえない。
掲載文献  

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成22年(不再)第49号・第50号 棄却 平成23年10月19日
東京地裁平成23年(行ウ)第756号 棄却 平成25年3月28日
東京高裁平成25年(行コ)第177号 棄却 平成25年11月28日
最高裁平成26年(行ヒ)第104号 上告不受理 平成26年4月10日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約537KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。