労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  石原産業 
事件番号  東京高裁平成25年(行コ)第177号 
控訴人  株式会社石原産業 
被控訴人  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部  
判決年月日  平成25年11月28日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 組合は、会社が、組合のストライキ実施後、①組合員らに対し、洗車と車両点検のみの作業指示や休憩時間の変更指示等を行ったこと、②19年年末、組合員に「お年玉」を支給しなかったこと、③ストライキ期間中就労した従業員のみに特別報酬を支給したこと及び組合員に対し冬期賞与を減額して支給したこと、④組合を誹謗中傷し、組合員を威嚇する内容の発言をしたこと、⑤組合の団交申入れに対し、まだ団交応諾義務事項があるにも関わらず拒否していること等が不当労働行為に該当するとして救済を申し立てた。
2 初審大阪府労委は、会社に対し、①19年冬期賞与の減額がなければ得られたであろう賞与相当額と支払済額との差額支払、②「お年玉」の支給、③上記①、②及び洗車と車両点検のみの作業指示及び洗車とワックス掛けの作業指示、会社取締役の発言に関する文書手交を命じ、その余の救済申立ては棄却した。会社と組合は、それぞれ再審査を申し立てたが、中労委は、各再審査申立てを棄却した。
3 会社は、取消訴訟を提起したが、東京地裁は、会社の請求を棄却した。
4 本件は、これを不服として、会社が東京高裁に控訴した事件である。  
判決主文   本件控訴を棄却する。
 当審における訴訟費用及び補助参加によって生じた費用は控訴人の負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所も、本件命令に控訴人の主張する違法はなく、控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり訂正〔略〕し、後記2のとおり当審における控訴人の補足的主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「第3 当裁判所の判断」に説示のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における会社の補足的主張に対する判断
(1) 争点の事実①について
ア 会社は、労組法7条1号にいう不利益な取扱いとは、解雇が例示されていることからみても、当該取扱いがそれ自体として客観的に不利益なものでなければならないところ、本件の場合、事務所コースの方が収集コースより実作業量が重いということはあり得ず、事務所コースに配置されたからといって、何ら不利益は存しないと主張する。
 しかし、労組法7条1号の不利益な取扱いは、労働者としての地位の得喪に関する不利益な取扱い、賃金や人事上の不利益な取扱い等経済的に不利益な差別待遇だけでなく、広く使用者の労働者に対する取扱いのあらゆる場面にわたってあり得るものであり、負担の軽い業務であっても評価の低い職場や仕事に配置すること、雑作業に従事させること、全く仕事をさせないことなどのように精神的に不利益な差別的取扱いも含むものと解するのが相当である。そうすると、事務所コースに配置されることは、ゴミ収集業務を営む会社の労働者にとってみれば、本来の業務から外され、これに付随する単純作業のみに従事させられる結果となるのであるから、組合員にとって職務上又は精神上の不利益な取扱いであると評価することができ、労組法7条1号の不利益な取扱いに当たるものというべきである。
イ 会社は、組合員を事務所コースに配置しなければならなかったのは、平成19年12月当時、組合がストライキを行う可能性があったためであると主張する。
 しかし、19.10ストに至る経緯は、事前に団体交明が重ねられ、ストライキを含む権利行使を行う旨の通知等もされていたのに対し、平成19年11月、12月頃には団体交渉やストライキの予告等はされておらず、平成19年12月当時の状況は同年10月当時とは全く異なっていたことが明らかであるから、平成19年12月にストライキが実施される可能性があるとの会社の懸念には、合理的かつ具体的な根拠はなかったものといわざるを得ない。
(2) 争点の事実②ないし④について
 会社は、これらはいずれも平成19年当時定着していたルールを通常どおりに適用した結果であるから、これをもって不当労働行為であるとすることはできないと主張する。
 しかし、争点の事実②については、X1組合員が1日2回の洗車を指示されたのは平成19年12月8日が初めてであり、しかも、同日は、清掃されたダンボール収集用の車両が車庫に駐車しており、この車両を使用することに支障があったとの事情はうかがわれないのに、X1組合員は、ゴミ収集を終えた車両を洗車してダンボールの回収を行うよう指示されたのであるし、争点の事実③については、X2組合員(正社員)は、木曜日である同月20日、同年10月までは正社員が配置されることは少なかった事務所コースに配置され、ワックス掛けを指示されたが、通常、正社員の収集コースの担当者はワックス掛けを土曜日に行っており、日々の洗車後必ず行うものでなく、また、事務所コースの車両のワックス掛けの頻度は低いものであり、争点の事実④については、X3組合員は、平成20年2月29日午前7時頃、洗車とワックス掛けを指示されたが、同日X3組合員が担当していた午前4時始業のコースでは、常日頃から午前7時頃から休憩を取ることが通例であり、この時間帯に洗車等の指示を受けたのは初めてであったことに照らすと、争点の事実②ないし④は、いずれも、組合員であることを理由に、通常とは異なる必要性の乏しい作業を命じる不利益な取扱いであったと認められる。
(3) 争点の事実⑤について
 会社は、平成19年12月30日に出勤しなかった者には「お年玉」を支給しなかったことは、労働義務がない公休日に出社したという業務協力に対して、任意的給付として報いるという「お年玉」の趣旨に合致するのであるから、不当労働行為には当たらないと主張する。
 しかし、会社は、同月31日に出勤した準社員のうち組合員でない者には同日「お年玉」として5000円を支給したが、同日出勤した組合員である準社員には「お年玉」を支給しなかったものである。また、同月30日(日曜日)及び同月31日(年未年始)は、いずれも会社における「公休日」であったが、同月30日は出勤し同月31日は休んだ準社員(組合員にはそのような者はいなかった。)には、公休日に1日休んでいるにもかかわらず「お年玉」が支給される一方、同月30日は休み同月31日は出勤した組合員に対しては、公休日に休んだことを理由に「お年玉」を支給しないというのは、明らかに不合理であるというべきである。
 したがって、会社が同月31日に出勤した準社員である組合員に「お年玉」を支給しなかったことは、組合員にのみ合理的理由なく「お年玉」を支給しなかったというほかない。
(4) 争点の事実⑥について
ア 会社は、勤務開始直前にストライキ通告をしたことは、代替の人員の確保が困難な時点で勤務しないことを申し出ることである点で「緊急公休」と同じであり、会社は、ストライキをしたこと自体を問題にしたわけではなく、勤務開始ぎりぎりになって勤務しないことを申し出たことを問題としているのであるから、冬期賞与を減額して支給したことは、不当労働行為には該当しないと主張する。
 しかし、会社が「緊急公休」についてのルールを定めた当時、組合に加入している労働者はなく分会も結成されていなかったので、「緊急公休」についてのルールはストライキを想定しておらず、ストライキをした場合の賞与の取扱いについては明確な定めはなかったのであるから、会社は、明確な根拠がないにもかかわらず賞与を減額したものといわざるを得ない。そして、「緊急公休」の場合と同様、一律20%(1回目)ないし45%(2回目)という多額の減額をしたことが組合員に経済的打撃を与えたことは明らかであり、組合員に対する冬期賞与の減額支給は、ストライキに参加したことに対する報復措置というほかなく、労働者が労働組合の正当な行為をしたことの故をもってされた不利益な取扱いというべきであるから、冬期賞与の減額支給は不当労働行為に当たるものと認められる。したがって、会社の上記主張は採用することができない。
イ 会社は、ストライキの場合は「緊急公休」に当たらないとしても、任意的給付たる賞与の支給額の決定において、ストライキ通告が勤務開始直前であったことを考慮することは許容され、このことが不当労働行為となるものではないと主張する。
 しかし、仮に会社における賞与が任意的給付であるとしても、その支給に関する差別待遇により不利益が生じたことは明らかである。そして、19.10ストについては、事前に団体交渉が重ねられて、ストライキを含む権利行使を行う旨の通知等もされていたことからすれば、19.10ストの実施は、会社にとって予測不可能であったとはいえず、冬期賞与の減額支給には合理性は認められない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成20年(不)第30号 一部救済 平成22年9月7日
中労委平成22年(不再)第49号・第50号 棄却 平成23年10月19日
東京地裁平成23年(行ウ)第756号 棄却 平成25年3月28日
最高裁平成26年(行ヒ)第104号 上告不受理 平成26年4月10日
 
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