労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  石原産業 
事件番号  東京地裁平成23年(行ウ)第756号 
原告  株式会社石原産業 
被告  国 
被告補助参加人  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部 
判決年月日  平成25年3月28日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 組合は、会社が、組合のストライキ実施後、①組合員らに対し、洗車と車両点検のみの作業指示や休憩時間の変更指示等を行ったこと、②19年年末、組合員に「お年玉」を支給しなかったこと、③ストライキ期間中就労した従業員のみに特別報酬を支給したこと及び組合員に対し冬期賞与を減額して支給したこと、④組合を誹謗中傷し、組合員を威嚇する内容の発言をしたこと、⑤組合の団交申入れに対し、まだ団交応諾義務事項があるにも関わらず拒否していること等が不当労働行為に該当するとして救済を申し立てた。
2 初審大阪府労委は、会社に対し、①19年冬期賞与の減額がなければ得られたであろう賞与相当額と支払済額との差額支払、②「お年玉」の支給、③上記①、②及び洗車と車両点検のみの作業指示及び洗車とワックス掛けの作業指示、会社取締役の発言に関する文書手交を命じ、その余の救済申立ては棄却した。会社と組合は、それぞれ再審査を申し立てたが、中労委は、各再審査申立てを棄却した。
3 会社は、取消訴訟を提起したが、東京地裁は、会社の請求を棄却した。  
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 
判決の要旨  1 組合員中心の作業ローテーションを作成し洗車や車両点検等のみの作業指示を行ったこと(本件作業指示①)
 (1)①正社員の事務所コース(主に当日に顧客から依頼された臨時のゴミなどの収集作業を行うコース)への配置状況をみると、正社員の組合員、準社員の組合員ともに、19年12月中旬から下旬にかけて、事務所コースに配置される割合が明らかに高くなっている。会社も組合員を優先的に事務所コースあるいは待機とした事実については認めているところ、事務所コースは、臨時のゴミ収集依頼がない限り、本来的な業務というべきゴミ収集を行うことなく、収集コースであればゴミ収集後にこれに付随する業務として行われる洗車、車両点検等のみを行うもので、かかる事務所コースに高い割合で配置されること自体、不利益であると認められる。加えて、当時、組合員の事務所コースの割合を高くしなければならなかった状況は特段見当たらないことからすれば、本件作業指示①は、合理的理由がないにもかかわらず組合員であることを理由に行ったものと認められ、労組法7条1号に該当する。
2 19年12月8日、X2組合員に対し1日2回の洗車の作業指示を行ったこと(本件作業指示②)
 ①X2組合員がこれまで洗車を行った頻度は1日1回であり、1日2回の洗車を指示されたのは19年12月8日が初めてであったこと、②会社は、回収されたゴミの投棄のみを指示されて舞洲ピットから帰社したX2組合員に対して、使用したゴミ収集車を洗車した上でダンボール収集に行くよう指示したこと、③ダンボールの収集は、清掃された状態の車両を用いなければならないところ、普段であれば、空いている車両を使用して収集しており、同日も、車庫に清掃されたダンボール収集用の車両が駐車していたこと、④X2組合員はダンボールを収集した後、当該収集車を洗車したが、当該収集車は同日午後のゴミ収集に用いられたこと等からすると、本件作業指示②は、通常とは異なる必要性の乏しい作業を命じる不利益な内容の指示であったと認められ、かつ、かかる指示を行う特段の必要性はうかがわれない。したがって、本件作業指示②は、労組法7条1号に該当する。
3 平成19年12月20日、X12組合員に対しワックス掛けの指示を行ったこと(本件作業指示③)
 本件作業指示③は、19年12月20日木曜日に、正社員で事務所コース担当であったX12組合員に対しワックス掛けを指示するものである。通常、収集コースの担当者は、使用した車両について使用後必ず洗車はするが、ワックス掛けは毎週土曜日に行っていたと認められ、ワックス掛けは、洗車の後に必ず行うものではなく、臨時のゴミ収集を行う事務所コースの車両につきワックス掛けを行う頻度は低いものであるところ、正社員でありながら事務所コースを担当させられたX12組合員に対して、付随的な作業というべきワックス掛けを木曜日に行うように指示する必要性は明らかではなく、本件作業指示③は、通常行われる指示とはいい難い、必要性の乏しい作業を命じる不利益なものというべきであり、労組法7条1号に該当する。
4 20年2月29日、X6組合員に対し、洗車とワックス掛けの指示を行ったこと(本件作業指示④)
 本件作業指示④は、20年2月29日午前7時頃にX6組合員が帰社した際、継続して洗車とワックス掛けを行うよう指示するものであったところ、午前4時に出勤する待機コースについては、午前7時頃に帰社した後は、午前8時の朝礼までの間、休憩をとることが通例であったと認められること、上記指示は同日が初めでであったが、かかる指示をしなければならない特段の事情もうかがわれないこと等からすれば、本件作業指示④は、通常とは異なる必要性の乏しい不利益な内容の指示を合理的理由もなく行うもので、労組法7条1号に該当する。
5 19年12月31日に出勤した準社員である組合員に対し、「お年玉」としての5000円を支給しなかったこと
 会社は、19年12月31日に出勤した組合員である準社員に対し、お年玉として5000円を支給しなかったが、同日に出勤した組合員以外の者には5000円が支結されたこと、同月30日に出勤した準社員(同日がその年の最終出勤日となる者)に対して5000円が支給されたこと等からすれば、会社による上記行為は、組合員にのみ合理的理由なくお年玉を不支給とするもので、労組法7条1号に該当する。
6 19年冬期賞与の支給にあたり、同年10月6日のストライキ開始日の欠勤分を緊急公休にあたるとして減額して支給したこと
 緊急公休を定めた当時、ストライキを想定していなかったことについては会社も認めているところであり、緊急公休が賞与の減額という経済的不利益をもたらすものである以上、ストライキが緊急公休に該当するというためには、かかる取決めや合意等があったことが必要であるというべきところ、かかる取決めや合意等を認めるに足りる証拠はない。そうすると、会社が組合員の19年冬期賞与を減額したことは、ストライキの場合の取扱いが明確に定められておらず、したがって減額の明確な根拠がないにもかかわらず賞与を減額したものといわざるを得ず、かかる減額は、合理的理由のないものとして、労組法7条1号に該当する。
7 19年12月7日、Y1常務がX3組合員に対し、組合を誹謗中傷し同組合員を威嚇する内容の発言を行ったこと
 19年12月7日、Y1常務はX3組合員に対し、「連帯は儲かってるんか。どう考えてもそんなに儲かってるように思われへんねんけどなー」「儲からんのに、あんなんして、あほみたいやなー」「だいたいあの、執行委員ってなんやねん、えらそうに、もの言いやがって」「X15いうんか、あの眼鏡チビはー、あいつにおうたら言うとけ、眼鏡チビいつでもかかって来い、なんやったら後ろから刺したろかってな」「ストライキするような組合は信用でけへん。これからは、夜中の仕事には行かせへんからな」と述べたことが認められる。上記発言は、組合活動を非難し、攻撃的趣旨を含むもので、組合に対する誹謗中傷であり、不利益を示唆することで組合員を威圧するものというべきであり、労組法7条3号に該当する。
8 19年12月20日、Y1常務がX10組合員に対し、脅迫的発言を行ったこと
 19年12月20日、Y1常務はX10組合員に対し、「組合員が足を踏まれたいうのも、俺は踏んでない」「自分でトンカチで足たたいて、組合に関係のある病院で診断書出してもうてるんや」「連帯の奴らは散弾銃で撃ってやる。後ろから刺してやる。覚えとけ」と発言した。これらの発言は、組合を非難するもので、暴力的発言といわざるを得ないものであり、業務全体の監督指導を行う常務取締役と一従業員という関係の下で、組合員を威圧し、組合活動を萎縮させる意図をもって行われたものといえ、労組法7条3号に該当する。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成20年(不)第30号 一部救済 平成22年9月7日
中労委平成22年(不再)第49号・第50号 棄却 平成23年10月19日
東京高裁平成25年(行コ)第177号 棄却 平成25年11月28日
最高裁平成26年(行ヒ)第104号 上告不受理 平成26年4月10日
 
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