労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ケーメックス 
事件番号  中労委平成21年(不再)第6号・第7号 
再審査申立人  株式会社ケーメックス 
再審査申立人  全統一労働組合 
再審査被申立人  全統一労働組合 
再審査被申立人  株式会社ケーメックス 
命令年月日  平成22年 6月2日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、組合との、18年度の冬期賞与(本件賞与)に関する一連の団交(本件団交)において、(1) 組合の求める計算式による賞与要求を拒否したこと、(2) 本件賞与支給額の根拠等のうち、(ⅰ)人事考課による賞与決定の仕組みについて説明しなかったこと、(ⅱ)分会員の個別の賞与支給額の根拠について団交の場での説明を拒否したこと、(3) 組合の要求した資料を開示しなかったことが、不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。
2 初審東京都労委は、本件団交において、会社が、分会員の個別の賞与支給額の根拠についての説明を拒否したこと、組合の求めた資料の一切を開示しなかったことが不当労働行為であるとして、会社に対し文書手交を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社及び組合は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。
 
命令主文  1 東京都労委平成19年(不)第25号事件に係る初審命令主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。
 株式会社ケーメックスは、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を全統一労働組合に交付しなければならない。


平成 年 月 日
全統一労働組合
中央執行委員長 X1 殿
株式会社ケーメックス
代表取締役 Y 

株式会社ケーメックスが、18年度の冬期賞与に係る団体交渉において、個々の貴組合組合員に対する賞与支給額の根拠についての説明を拒否したことは、中央労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。
今後このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は、交付した日を記載すること。)

2 その余の会社の本件再審査申立てを棄却する。
3 組合の本件再審査申立てを棄却する。
 
判断の要旨  1 基準内賃金を基礎とした組合要求への会社の対応について(争点(1)のア)
(1)会社は、賞与について組合の要求するような計算式を採っておらず、そのことを組合に回答しており、 また、会社の回答以降、組合が更に説明を求めるなどしていたことを窺わせる証拠もないことから、 会社が組合の要求する計算式に対応した回答や説明を行わなかったことをもって、 不誠実な対応であったとまではいえない。
2 組合に賞与支給額の通知をしなかったことについて(争点(1)のイ)
 本件賞与について会社が全従業員に個別に通知を行ったことをもって、不誠実な対応であるとまではいえない。
3 本件賞与支給額の根拠等((i)人事考課による賞与決定の仕組み、(ii)分会員の個別の賞与支始額の根拠)に関する説明及び交渉態度について(争点(1)のウ)
(1)会社は、人事考課の運用実態について一定程度の説明を行っており、 これに対して組合が、 異議を述べて更なる追求を行ったとは認められないことから、 そのような会社の態度をもって不誠実な交渉態度であったとまではみることができない。
(2)次に、個々の分会員の賞与支給額の根拠に関する会社の説明及び交渉態度について、
ア 評価項目、評価基準等の賞与支給基準を具体化する規定等はなく、その支給決定が個別に行われ、各分会員の賞与支給額が会社から個々人に通知されているような仕組みにおいては、組合は、賞与支給額の根拠の説明を求め、その当否について交渉するほかないのであるから、分会員の個別の賞与支給額の根拠は義務的団交事項に当たるものといえる。
イ 会社には苦情解消システムがあるが、当該システムは、組合とは無関係に上司が従業員から苦情・不満を聞いて説明するだけのものであるので、組合がこれとは別個に会社に対し団交で説明を求めることができるのは当然のことである。
ウ 以上のことから、会社の態度は、分会員の賞与に関する団交において行うべき説明を拒否する不誠実な交渉態度として、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。
4 本件賞与に関する資料の不開示について(争点(1)のエ)
(1) 会社が、従業員個人の支給額が推認されるおそれがある資料の開示について消極的な態度であったことは、 不誠実な交渉態度と断ずることはできないが、 そのようなおそれのない数値については、 分会員の賞与支給額が他の従業員と比べどのような位置にあるのか(分会員であるが故に差別されていないか)を判断するためには必要な資料であり、会社が合理的な理由も示さず同資料の開示を拒否する態度をとったことは不誠実な交渉態度である。
(2) なお、20年度夏季賞与からは資料の一部については開示されている状況にあること等からすれば、 開示に係る不誠実な交渉態度は必要な限度で改められていることから、現時点においては救済を命じる必要性があるとまではいえない。
5 妥結・協定書締結後の不当労働行為責任の存否について(争点(2))
 本件再審査の審査中に本件賞与に関する協定書が締結されているが、分会員の個別の賞与支給額の根拠を本件団交の場では説明しないと した対応は協定書締結後も基本的な変化はなく、また、組合としては本件申立て意思を留保した上で協定書を締結したと理解できることから、正常な労使関係秩序の回復・確保という不当労働行為救済制度の観点から、今後は同様の行為を繰り返さないように留意する旨の文書の交付を命じるのが適切である。
6 救済方法について(争点(3))
 本件再審査の審査中に、本件において争いとなっていた事項を含む本件賞与についての協定書が締結されていること等の事情を総合して勘案すれば、文書交付だけではなくポスト・ノーティス及び将来に係る不作為命令をも命じるべきであるとの組合の主張は採用できない。
 以上のとおりであるので、初審命令主文を主文のとおり変更し、組合の本件再審査申立てには理由がないから棄却することとする。
 
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成19年(不)第25号 一部救済 平成20年12月16日
東京地裁平成22年(行ウ)第366号 棄却 平成23年9月29日
東京高裁平成23年(行コ)第341号 棄却 平成24年2月15日
最高裁平成24年(行ヒ)第224号 上告不受理 平成25年3月15日
 
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