概要情報
事件名 |
ケーメックス |
事件番号 |
東京高裁平成23年(行コ)第341号 |
控訴人 |
株式会社ケーメックス |
被控訴人 |
国(処分行政庁:中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
全統一労働組合 |
判決年月日 |
平成24年2月15日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
重要命令に係る判決 |
事件概要 |
1 会社が、組合との、18年度の冬季賞与(以下「本件賞与」という。)に関する一連の団体交渉(以下「本件団交」という。)において、(1)組合の求める計算式による賞与要求を拒否したこと、(2)本件賞与支給額の根拠等のうち、①人事考課による賞与決定の仕組みについて十分な説明をしなかったこと、②分会員の個別の賞与支給額の根拠について団体交渉の場での説明を拒否したこと、(3)組合の求めた非組合員分を含めた全社的な資料を開示しなかったことが、不当労働行為に当たるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、本件団交において、会社が、分会員の個別の賞与支給額の根拠についての説明を拒否したこと、組合の求めた全社的な資料の一切を開示しなかったことが、不当労働行為であるとして、会社に対し文書手交及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。
会社及び組合は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てたところ、中労委は初審命令を一部変更し、本件団交において、会社が、分会員の個別の賞与支給額の根拠についての説明を拒否したことが不当労働行為であるとして、会社に対し文書手交を命じ、その余の会社の再審査申立て及び組合の再審査申立てをそれぞれ棄却した。
これに対し、会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は会社の請求を棄却した。
本件は、同地裁判決を不服として、会社が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は控訴を棄却した。
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判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
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判決の要旨 |
1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は、付加訂正し、後記2のとおり、当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における控訴人の主張について
(1) 会社は、本件賞与については、本件協定書が作成され合意が成立したことにより全て決着済みであり、会社が団体交渉に応じる義務を負う余地はない旨主張する。
しかし、本件賞与の具体的な給付内容につき労使間で合意が成立したことと、会社に対し、本件賞与に係る交渉の過程での不当労働行為につき、将来これを繰り返さないよう留意することを記載した文書の交付を命ずる本件命令の内容とは直接対応せず、本件命令は、本件賞与に係る団体交渉を命ずるものではないし、上記合意の成立により、将来にわたり同様の行為を繰り返さないことを担保する趣旨で発せられる救済命令の必要性が減じたとみることもできない。
なお、会社は、従業員の有する賞与請求権についての別訴判決での判断からすれば、既に会社が従業員に対する通知を発した賞与を団体交渉の対象とする余地はないとも主張する。
しかし、同判決は、会社からの通知により、そこで定められた額の賞与請求権が具体的に発生し、従業員から会社に対して給付請求することが可能になったことを判断するにとどまるのであって、その金額及び具体的根拠について組合から会社に対して説明を求めるなど団体交渉の対象となる余地を否定するものではない。
(2) 会社は、本件協定書作成に至る経緯や労働協約の性質に鑑みれば、会社と組合間で不当労働行為の責任追及を行わない旨の合意が成立したとみるべき旨主張する。
しかし、そうした合意が成立したとみることができないことは、原判決が説示するとおりである。
会社は、労働協約は交渉の議題となっていた事項全般につき全て解決済みのものとして締結されるのが原則であるとするが、その文言、内容、交渉対象の広狭、合意に至る経緯は労働協約ごとに千差万別であり、そうした一般論が成り立つ根拠は明らかではない。
本件協定書作成の経緯をみても、組合が不当労働行為に対する救済命令を求めず、その点も含めて合意する趣旨であったのであれば、本件協定書にその文言を織り込んでしかるべきであり、むしろ、その趣旨の文言が記載されない限り、原則的には、そのような合意はなかったとみるべきである。にもかかわらず、本件協定書には組合所属の従業員に係る本件賞与等の合意・妥結日、支給日及び支給額が掲げられているにとどまるから、救済命令の申立ての帰趨は合意に含まれていないと解するのが相当である。
なお、会社は、本件命令と原判決とでは、本件協定書において不当労働行為の責任追及を不問に付する旨の合意が成立していないと判断した根拠が異なっており、原判決は本件命令と異なる理由により、会社に対する救済命令を維持したから違法であるとも主張するようである。
しかし、上記合意が認められないと判断し、そのことを理由の一つとして救済命令を発し、維持した点において、原判決と本件命令との間でその判断に相違はない。会社の主張は、間接事実を含む事実認定の判断過程全てにおいて、取消裁判所は救済命令に拘束される旨をいうにほかならないが、そのように解すべき根拠はない。
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その他 |
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