労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 関西馬丁労組
事件番号 中労委昭和35年(不再)第18号
再審査申立人 日本中央競馬関西馬丁労働組合
再審査被申立人 調教師Y
命令年月日 昭和36年12月6日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要 1 ストライキに参加した組合員である馬丁に対して、雇用主である調教師Yが担当馬を取り上げ、非組合員である馬丁に担当替えとし、その後、持ち馬がなくなったことにより休職を命じたことが、不当労働行為に当たるとして京都地労委に救済申立てがあった事件である。
2 京都地労委は、ストライキに参加した5名の馬丁のうち、X1から持ち馬を取り上げた行為は不当労働行為に当たるとして、文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
 本件は、これを不服として、X組合が再審査を申し立てた事件であるが、中労委はこれを棄却した。
命令主文 本件再審査申立を棄却する。
判定の要旨 1 被申立人の不当労働行為意図について
 X組合は、被申立人が過去に支配介入事件に関し地労委の命令をうけたことや、本件持馬取上げおよび休職に関しX組合と関西調教師会との間に締結された人事協定を無視したことは、いずれも被申立人の不当労働行為意図の証左であると主張するが、前記不当労働行為事件があるが故に、ただちに被申立人には本件についても不当労働行為意図があったものと推認することは困難であり、また、人事協定不履行についても、協議すべき事項の中に馬丁の持馬取上げなどの場合が含まれるか否か協定当事者間においても解釈上の争いがあり、また当事者間において必ずしも協定が全面的に守られていない事情があるので、被申立人がX組合と協議しなかったことは適当でないとしても、これが故に被申立人は、不当労働行為意図をもっていたとするわけにもゆかない。
2 馬丁X1、X2の持馬取上げについて
(1) X2の持馬取上げは、X1の場合と異なり、勤務成績が不良であり、しかも持馬が負傷により売却されたためであり、ほかに同人が組合員であるが故に差別的に取り扱われたものと認めうる特段の事情も存しない。
(2) しかしながら、X1の持馬取上げについてみると、馬主が被申立人に対して申し向けたことは結局、スト参加者には自己の所有する馬を持たせない、ということであって、このようなことそれ自体についてみれば、およそ労働組合法の期待するところに背馳するものであることは明らかで、これをそのまま容認することはできない。X1がその持馬を取上げられた所以のものは、同人がストに参加したということにある以上、被申立人のかかる行為はスト参加組合員に対する報復ということになり、これを放置するにおいては、労働組合の組織ならびに活動の弱体化を招くにいたるであろうことは明らかである。
 したがって、被申立人がなしたX1に対する持馬取上げの行為は、X組合に対する支配介入行為に該当すると認定した初審判断に誤りはない。
(3) ところで、X組合は、本件不当労働行為の救済として「被申立人は、X組合に対して支配介入してはならない」および「誓約書の掲示」を求めているが、この際、事案の内容からみて、文書手交を命じた初審命令を変更しなければならないとするほどの事情は見出し難い。
3 騎手Zの言動について
 Y厩舎においてZが日ごろ馬丁に対し飼料のやり方、馬の運動などにつき注文していたことが認められるが、これらは、騎手としての立場からの注文であって、被申立人に代わって馬丁を指揮監督しているものでもなく、またZが被申立人の利益代表者とみることも困難である。しかし、騎手は、調教師と馬丁の間にあって、このような立場にある者にして組合活動そのものを理解せず、組合活動を嫌悪し、かつその言動が馬丁に向けられたような場合、馬丁の組合活動を抑制しうる効果があることは見易いところである。
 したがって、馬丁の組合活動についての騎手の言動は慎重を期すべきものであると考えられるし、騎手がX組合員との関係において、調教師と通謀して行動したような場合は論外として、騎手がみずから使用者の立場にあると考え、あるいは使用者側の意をむかえるべく行動し、かつ調教師においてこれを黙認利用しているような場合には、申立人組合に対する支配介入行為として調教師がその責任を問われてもやむをえない場合もあることは否定するわけにはゆかない。
 ところで、本件におけるZのX1およびX2に対する言動には、甚だ妥当を欠くものがあり、組合員に対しかなりの影響を与えたことは無視しえないのであるが、とくに初審判断を左右しうるほどの直接の資料を見出しえなかったので、Zの言動がX組合に対する被申立人の支配介入行為に該当するとまで認定しえないとした初審判断は相当である。
3 以上のとおり、X組合の再審査申立には理由がなく、初審命令は相当である。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
京都地労委昭和34年(不)第22号 一部救済 昭和35年11月18日
京都地裁昭和35年(行)第12号 全部取消 昭和37年5月2日
大阪高裁昭和37年(ネ)第676号 全部取消 昭和41年1月27日
最高裁昭和41年(行ツ)第26号 上告棄却 昭和42年6月20日
 
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