労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  関西馬丁労組 
事件番号  大阪高裁昭和37年(ネ)第676号 
控訴人  京都府地方労働委員会 
控訴人補助参加人  中央競馬労働組合(昭和37年5月9日に旧名「日本中央競馬会関西馬丁労働組合」から名称変更) 
被控訴人  調教師Y 
判決年月日  昭和41年1月27日 
判決区分  全部取消 
重要度   
事件概要  1 ストライキに参加した組合員である馬丁に対して、雇用主である調教師Yが担当馬を取り上げ、非組合員である馬丁に担当替えとし、その後、持ち馬がなくなったことにより休職を命じたことが、不当労働行為に当たるとして京都地労委に救済申立てがあった事件である。
2 京都地労委は、ストライキに参加した5名の馬丁のうち、X1から持ち馬を取り上げた行為は不当労働行為に当たるとして、文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
 X組合は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委はこれを棄却した。
 一方、調教師Yも京都地労委命令を不服として、京都地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は京都地労委の救済命令を取り消した。
 本件は、同地裁判決を不服として、京都地労委が大阪高裁に控訴した事件であるが、同高裁は第一審判決を取り消した。
判決主文  1 原判決を取り消す。
  被控訴人の請求を棄却する。
2 訴訟費用は第一、二審ともすべて被控訴人の負担とする。
判決の要旨  1 被控訴人がX1から持馬Aを取り上げたことが不当労働行為に当たるか否かについて
(1) 馬丁の給料は昭和34年2月まではその持馬の頭数にかかわらず同じであったが、同年3月からは組合の申入れにより持馬の頭数によって給与に差が生ずるようになりX1はAを取り上げられたことにより減収となり不利益を蒙ったものであることが認められる。
(2) X組合は、本件ストは全一日ストで、スト当日の午後4時頃解除せられたのはピケだけであるから、X1が当日午後5時の飼付および午後8時の水飼、投草を怠ったとしても、スト継続中のことゆえ当然のことである旨主張するけれども、本件ストが当日午後4時頃終了したことが認定されるから、X組合の右主張は前提を欠き失当である。
(3) 馬主は自己の持馬Aの担当馬丁X1がストに参加していることについて痛く憤慨し、被控訴人や騎手に対しストに参加する馬丁には自己の持馬を担当させられない旨言明していることおよび被控訴人の説得にもかかわらずストに参加した馬丁以外の馬丁に担当換えすることを強く要望しているのであるから、馬主はX1がストに参加したこと(本件スト参加が労働組合の正当な行為に当ることは明らかである)を嫌忌して、これに対する報復として被控訴人にX1から持馬Aを取り上げることを要望したものと認められる。
 もっとも、馬主の名刺には、右要望はX1のスト参加によるものではなく、スト解除後の飼付を怠ったことを理由として担当換えを要求するもののごとく記載されているけれども、馬主が被控訴人の説得によりたやすくその当初の意図を飜し、スト終了後の飼付を怠ったことに対する処置としては酷にすぎると思われる持馬Aの取上げを要望したものとはとうてい認めることはできない。
(4) しかして、被控訴人は馬主のストに参加しない馬丁ならばよいとの要望を受け入れて被控訴人厩舎の非組合員の馬丁にAを担当換えしたものであり、馬主の前記意図を察知してX1からAを取り上げたものであることは明らかである。そうすると被控訴人は第三者(馬主)の不当労働行為意思に従ってこれを実行したものであって被控訴人にも不当労働行為意思があったといわねばならない。
 被控訴人において馬主の意図の実現を妨げんと努力したことが顕著に認められる本件において、被控訴人の不当労働行為意思は否定せらるべきであるとの主張については、被控訴人は馬主の不当労働行為意思を察知しながら、これに従ってその意図を実行したものであるから、被控訴人にも不当労働行為意思があったとみるべきは当然であって、被控訴人厩舎においても損失を蒙るから万やむをえずと判断したとしても、被控訴人に不当労働行為意思が認められることには何ら変りはない。
 けだし馬主の右意図は労働組合法が使用者に対し期待するところに背馳するものであることは明らかであるから、馬主の不当な要望を拒否すべきであって、これを拒否せず、馬主の要望に従ってX1に対し不利益な処分をした以上、X1のスト参加を理由としてその持馬を取り上げたものというべきであるからである。
2 結論
 被控訴人のX1から担当馬のA取上げ行為は、X1が本件ストに参加したことに対する報復と認められ、これを放置するにおいては組合の組織および活動の弱体化を招くに至ることは明らかであるから、被控訴人の右行為は組合に対する支配介入に該当する。そして右不当労働行為の救済として文書を組合に対し提出することを命じた本件救済命令は相当である。
業種・規模   
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
京都地労委昭和34年(不)第22号 一部救済 昭和35年11月18日
中労委昭和35年(不再)第18号 棄却 昭和36年12月6日
京都地裁昭和35年(行)第12号 全部取消 昭和37年5月2日
最高裁昭和41年(行ツ)第26号 上告棄却 昭和42年6月20日
 
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