概要情報
事件名 |
関西馬丁労組 |
事件番号 |
京都地労委昭和34年(不)第22号 |
申立人 |
日本中央競馬関西馬丁労働組合 |
被申立人 |
調教師Y |
命令年月日 |
昭和35年11月18日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
1 ストライキに参加した組合員である馬丁に対して、雇用主である調教師Yが担当馬を取り上げ、非組合員である馬丁に担当替えとし、その後、持ち馬がなくなったことにより休職を命じたことが、不当労働行為に当たるとして京都地労委に救済申立てがあった事件である。
2 京都地労委は、ストライキに参加した5名の馬丁のうち、X1から持ち馬を取り上げた行為は不当労働行為に当たるとして、文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
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命令主文 |
1 被申立人は、左記内容の文書をこの命令交付の日から7日以内に申立人に提出せよ。
記
昭和34年12月1日、組合員X1より、その持馬であるAを取上げた行為は、貴組合の団結権を侵害し、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であることを認め、今後かかる行為を繰返えさないことを誓約する。
右京都府地方労働委員会の命令により表明する。
昭和 年 月 日
調教師 Y
日本中央競馬関西馬丁労働組合殿
2 申立組合のその余の救済申立はこれを棄却する。
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判定の要旨 |
1 馬丁X1、X2の休職について
両名とも、休職後共助会から所定の休務手当を異議なく受領していること、その後、X2はZ1調教師に馬丁として雇用せられ、被申立人厩舎を退職する旨、退職届を提出している事実、X1はZ2調教師に馬丁として雇用せられ、被申立人厩舎を退職する旨、退職届を提出している事実ならびに右両名は、なんらの留保もなく被申立人厩舎を退職している事実を考えれば結局、右両名の退職は、自己の自由意思に基づきなされたものであることが明らかである。
以上の次第であるから、既に自発退職したX1、X2両名についての労働組合法第7条第1号の救済申立は、認容することができない。
2 支配介入について
(1) 馬丁X1の持馬取上げについて
ア 一般的にいってストライキの終了は、即時正常勤務への復帰を意味するものではあるが、事情によっては、多少の遅延をみることは避けがたい場合もある。ことにX1は、スト当日その解除後の飼料などにつき、全然労務を放擲していたとは認めがたく、飼料、水飼いのため、担当厩舎に就労しようとしたことが認められ、かつ同人の持馬に何らかの明確なる支障をきたしたことの認められない本件においては、スト解除直後のこの程度の不就労に対し、その持馬を取上げるほどの重大なる措置をもって臨むことは、甚だしく酷であって、被申立人自身もそこまでの意図を有しなかったことは、明らかである。
馬主たるZ3が被申立人に対し、①当日X1のストライキ参加を非難し、かつ今後ストライキに参加する者には馬を持たせないと言明し、②Aの馬丁として、ストライキに参加しない者を強く要望している等の事実を総合すれば、Z3がX1から持馬Aを取上げようとした真の理由は、スト直後のX1の不就労にあったのではなく、同人が、ストライキに参加したがためであるとみるのが相当である。
③右のような事由で、組合員である馬丁から馬を取上げることを正当視するならば、組合は遂に壊滅に導かれることが当然予想せられることであり、被申立人もこのことを予想できた本件において、たとえ馬主の希望にそわんとしたものであっても、被申立人が、X1より持馬Aを取上げたことは、馬主の意図に藉口して、正当なる組合活動に対する報復をしたものと認められる。
イ しかも被申立人がX1の持馬を引上げた以後、当時被申立人に雇用せられていた5名の組合員のうち2名は組合を脱退し、X1を含め3名が転厩した。その結果、1名の組合員もいない事実を総合すれば、被申立人がX1の持馬を取上げた行為は、被申立人厩舎における組合員壊滅の因をなし、ひいては組合の運営に影響をおよぼしたことは明らかであるから、労働組合法第7条第3号に該当する支配介入である。
(2) 馬丁X2の持馬取上げについて
X2が持馬を取上げられた事情は、(馬丁としての経験も浅く、かつ勤務成績は概して良好ではなかったことによるもので)この点につき被申立人が、組合に対する支配介入の意思にもとづいて取上げたものと認めるにたるなんらの証拠も存在しない。
従って、この点についての救済申立は認容することができない。
(3) 騎手Z4の言動について
(被申立人に雇用されている騎手であるZ4はX1に対して、「労働組合に入っている間は二頭持ちはやらさない。」などと述べ、また、X2に対して、「組合をやめるのであれば新しく入った馬を持たすが、組合をやめないのであれば持たさない」などと述べたところ)Z4のX1、X2両名に対する言動については、同人は被申立人に代わって、馬丁を指揮監督する権限もなく、被申立人の利益代表者とみることは困難である。
さらに、X1やX2に対する言動の中には、はなはだしく常軌を逸するものがあり、あるいは被申立人の意をうけたのではないかと疑わしむる点もないではないが、これを証拠づけるものなく、結局、Z4個人の考えから述べたものとみるほかないので、これを被申立人に帰責せしめるわけにはいかない。
従って、本件Z4の言動をもって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとし、陳謝文の掲示を求める組合の申立は認めるに由ない。
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掲載文献 |
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