概要情報
事件名 |
東京都(専務的非常勤職員設置要綱) |
事件番号 |
東京都労委平成20年(不)第13号 |
申立人 |
東京公務公共一般労働組合 |
被申立人 |
東京都 |
命令年月日 |
平成22年4月20日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、法的な争点としては、1年任期の専務的非常勤職員の次年度の労働条件、及び雇用期間の更新に係る要綱改正が、それぞれ義務的団体交渉事項に当たるか否かが争われた事案である。また、団交申入れに係る対応については、組合の①平成20年2月12日付、②6月27日付、③8月12日付、④12月22日付、24日付及び21年1月24日付団交申入れに対する都の対応が、それぞれ団交拒否に当たるかが争われた事案である。
東京都労委は、①専務的非常勤職員の雇用期間の更新に係る団交申し入れの誠実応諾、②消費生活総合センターの相談員の次年度の労働条件に係る団交申し入れの誠実応諾を命じ、その余の申立てを棄却した。
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命令主文 |
1 被申立人東京都は、申立人東京公務公共一般労働組合が、東京都専務的非常勤職員設置要綱の規定する専務的非常勤職員の雇用期間更新について団体交渉を申し入れたときは、更新は団体交渉事項ではないとの理由で拒否してはならず、誠実に応じなければならない。
2 被申立人都は、申立人組合が、東京都消費生活総合センターの消費生活相談員の次年度の労働条件について団体交渉を申し入れたときは、次年度の労働条件は団体交渉事項ではないとの理由で拒否してはならず、誠実に応じなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 本件の争点は次のとおり。
組合からの①平成20年2月12日、②6月27日、③8月12日、④12月22日、24日及び21年1月24日付各団交申入れに都は応じたか否か。応じていないとすると、それに正当な理由があったか否か。
2 争点に係る判断
(1)専務的非常勤職員に対する労組法の適用について
相談員などの専務的非常勤は、都の指揮監督下に労務を提供し、その対価として賃金を得ているのであるから、労組法上の労働者であり、その労働条件について、都は、専務的非常勤を組織する労働組合との団交に応ずべき立場にあるということができる。
(2)専務的非常勤の次年度の労働条件について
都は、次年度も引き続き任用される可能性が現実かつ具体的に存する専務的非常勤である相談員の次年度の労働条件について、団交に応ずべき地位にある。次年度の非常勤の労働条件は、すべて任用における採用条件となるため義務的団交事項ではないとする都の主張は、団交を拒否する正当な理由とは認められない。
(3)本件要綱改正について
専務的非常勤の更新回数を4回までとする本件要綱改正について、都は、公法上の任用の問題であり、かつ、管理運営事項でもあるので義務的団交事項ではないと主張するが、この主張は以下の点から、団交を拒否する正当な理由とは認め難く、採用できない。
ア 公法上の任用関係であっても、専務的非常勤は、労組法上の労働者であるから、その労働条件について、都は、団交に応ずべき立場にある。従来、勤務成績等の要件を満たせば定年年齢(65歳)の範囲内で回数に関わらず可能であった更新が、原則4回までに変更されたということは、4回更新後に継続勤務を希望する場合、例外規定の対象とならない限り、新たに公募への応募が必要となる制度変更であり、労働条件の重大な変更に当たるから、都は、このことについて団交に応ずべき立場にあるというべきである。
イ 都は、本件要綱改正が管理運営事項であると主張するが、更新を4回までに限るとした要綱の規定自体は、職の改廃について直接定めたものではないので、管理運営事項であるとはいえず、むしろ、雇用期間の更新に係る規定であるから、労働条件そのものであるというべきである。
(4)各団交申入れに対する都の対応について
組合は、上記1に掲げた①から④の各団交申入れに対する都の対応が団交拒否であると主張するところ、
ア 20年6月27日並びに、12月22日、同24日及び21年1月24日の団交申入れに係る都の対応については、正当な理由のない団交拒否とまではいうことができない。
イ 20年2月12日及び8月12日の団交申入れについては、都は、本件要綱改正や相談員の次年度の労働条件は義務的団交事項ではないとの立場で対応したと判断される。かかる対応は、正当な理由のない団交拒否に該当する。
(5)団交への総務局の出席について
専務的非常勤の要綱や制度の企画・立案は総務局が所管するが、具体的な運用は、その設置職場をもつ各局が行うのであるから、専務的非常勤に係る組合の申入れに対し、具体的な運用を行う生活文化スポーツ局等が対応したことは、不合理であるとはいえない。組合は、職員団体である別組合は総務局と賃金交渉をしていると主張するが、専務的非常勤である組合員がいる職場は生文局所管の2カ所のみであることを考慮すれば、組合と別組合とで全く同じ対応をしなければ不当労働行為になるとまではいえない。
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掲載文献 |
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