労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東京都(専務的非常勤職員設置要綱) 
事件番号  東京高裁平成25年(行コ)第10号 
控訴人  東京都 
被控訴人  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  東京公務公共一般労働組合 
判決年月日  平成25年4月24日 
判決区分  棄却 
重要度  重要命令に係る判決  
事件概要  1 都の1年任期の専務的非常勤職員である消費生活相談員(以下、本件相談員)について、都が平成20年2月から21年1月の間に、従来65歳まで何度でも可能だった雇用期間の更新を原則4回までにしたこと(以下、本件要綱改正)及び次年度の労働条件等について、団体交渉を申し入れた組合に対し、義務的団交事項ではないとして都がこれらに応じなかったことが、不当労働行為に当たるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、これらの団交申入れのうち20年2月12日付け及び同年8月12日付け団交申入れに対する都の対応は、労組法7条2号に該当する不当労働行為であるとして、都に対し、組合が要綱に規定する雇用期間更新及び次年度の労働条件について団体交渉を申し入れたときは、誠実に応諾しなければならない旨を命じた。
 都は、これを不服として、再審査を申し立てたが、中労委は、再審査申立てを棄却した。都は、これを不服として取消訴訟を提起したが、東京地裁は、都の請求を棄却した。
3 本件は、都の控訴に対する控訴審判決である。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  1 専務的非常勤職員の次年度の勤務条件を議題とする団交について、都は労組法7条2号の使用者か
(1) 労組法7条にいう「使用者」は、労働契約関係ないしはそれに隣接又は近似する関係を基盤として成立する団体労使関係上の一方当事者で賃金を支払う者を意味し、その一方当事者と特定の労働者との間の労働契約が法律上終了することが予定されているとしても、直ちに再び当該労働者との間に従前と同様な労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存する場合には、上記一方当事者は、当該労働者との関係で労組法7条にいう「使用者」に該当するものと解するのが相当である。このように解さないと、上記のような労働者は、事実上継続的な雇用が行われているにもかかわらず、そのような雇用実態にふさわしい処遇を求めて労働組合が団体交渉を行う余地がなくなることになり、憲法28条が労働者に団体交渉その他の団体行動をする権利を保障した趣旨が損なわれるからである。
(2) 組合が20年2月12日付けで都に団体交渉を申し入れた当時、都と本件相談員との間では、1年の任期が経過した後、契約が更新されて新たな労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存在していたということができるから、都は、労働契約関係ないしはそれに隣接又は近似する関係を基盤として成立する団体労使関係上の一方当事者として、本件相談員によって組織される労働組合からの団体交渉申入れに応ずべき労組法7条の使用者に該当していたものというべきである。
(3) 都は、本件における任用は行政行為であり、専務的非常勤職員である本件相談員と都との関係は公法上の任用関係にあるから、都が労組法7条の「使用者」に当たると解する余地はないと主張するが、本件相談員のような専務的非常勤職員も、都の指揮監督の下に労務を提供し、その対価として賃金を得て生活の資を得ているものである点において一般の勤労者と異なるところはなく、都は、労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存する状態にあった専務的非常勤職員の労働条件について、専務的非常勤職員を組織する労働組合との団体交渉に応ずべき立場にあったと解されるから、上記主張は採用できない。
2 専務的非常勤職員の次年度の勤務条件及び本件要綱改正は義務的団交事項か
(1) 地公法55条3項の規制は、専務的非常勤職員によって組織される労働組合にも及ぶと解されるが、地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項であっても職員の勤務条件に関する事項であれば交渉の対象とすることができると解される。そして、専務的非常勤職員は、雇用期間は1年であるが、更新が可能であり、これまで、本件相談員が更新を希望しながら更新されなかった例はなかったことからすれば、本件要綱改正がされた当時現に任用されている相談員が次年度も引き続き任用される可能性は高く、また、分会には、少なくとも4名以上の本件相談員が加入しているから、次年度に都の任用する相談員の中に組合の組合員が存在する可能性は極めて高かったということができる。このような更新の実態等からすれば、次年度の勤務条件は、現に都に任用されている本件相談員の勤務条件であるということができるし、また、専務的非常勤職員の任用期間の更新回数を原則4回までに制限する本件要綱の改正も、都との任用関係における本件相談員の待遇の一部に関わるものであるから、本件相談員の勤務条件に重要な変更をもたらすものということができ、専務的非常勤職員の勤務条件に関するものとして義務的団交事項に該当する。
(2) 組合は、本件要綱改正によって導入された5年有期雇用制度の撤回を要求項目の一つとして掲げてはいたものの、組合においても、職員の任用に直接介入することが管理運営事項として団体交渉の対象事項にはならないことを認識した上で、都に対し、継続的な雇用が行われている者に対して実態にふさわしい処遇を与えるべきことを求めて団体交渉の開催を要求し、組合員の勤務条件の改善のための成果を上げることを目指していたことが認められる。そうすると、組合が専ら合意達成の不可能な管理運営事項を団体交渉の対象としようとしていたとは認め難いから、直ちに都は組合と誠実に交渉する義務を免れるものではない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成20年(不)第13号 一部救済 平成22年4月20日
中労委平成22年(不再)第38号 棄却 平成23年10月5日
東京地裁平成23年(行ウ)第703号 棄却 平成24年12月17日
最高裁平成25年(行ツ)第358号・平成25年(行ヒ)第376号 上告棄却・上告不受理 平成26年2月7日
 
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