労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 東芝(小向工場)
事件番号 中労委平成20年(不再)第31・32号
再審査申立人 株式会社東芝
再審査被申立人 全国一般労働組合全国協議会神奈川
命令年月日 平成21年10月7日
命令区分 一部変更
重要度 重要命令
事件概要 1 本件は、会社が組合員X1 の処遇等に関する平成18年10月3日の団交申入れ(本件団交申入れ)を拒否したことは不当労働行為に当たるとして、救済が申し立てられた事案である。組合は、初審審問終結時までに申立てを追加又は変更し、会社が、本件団交申入れに対し、平成19年2月26日まで団体交渉に応じなかったこと(①)、その後行われた組合との団体交渉において処遇制度に関し十分な説明をせず、資料の交付を拒んだこと(②)、組合との団体交渉において、団交議事録の作成や事前同意約款の締結等に応じないこと(③)、組合掲示板の設置等について申立外労組と同等の便宜供与をしないこと(④)はいずれも不当労働行為に当たるとして、救済を求めた。
2 初審神奈川県労委は、平成20年6月20日、前記1①、②の各事実は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、会社に対し、処遇制度に関し十分な資料を提示又は交付し、説明を行うこと(初審命令主文第1項)及び文書手交(同第2項)を命じる一方、その余の申立事実(前記1③、④)については、不当労働行為に当たらないとして、組合の救済申立てを棄却する旨の命令を発した。
3 組合及び会社は、いずれも前記初審命令を一部不服として再審査を申し立てた。
命令主文 (1) 初審命令主文第1項を取り消し、これに係る救済申立てを棄却する。
(2) 初審命令主文第2項を次のとおり変更する。(初審が手交を命じた文書の内容のうち、会社が組合との団体交渉において処遇制度に関する資料の交付を拒んだこと等が不当労働行為と認定されたとする部分を削除した内容に変更)
(3) その余の会社の再審査申立て及び組合の再審査申立てをいずれも棄却する。
判断の要旨 (1)【会社が平成19年2月26日まで本件団交申入れに応じなかったことは不当労働行為に当たる】
本件付随合意(X´組合(組合の前身組合)は、会社が組合員X1 を不当に扱うなどの特段の事情があれば、会社に対し組合員X1 が組合員であることを主張して団体交渉等を求めることができる旨の会社、X´組合及びX1 との間の合意)のもとにおいても、組合が不当な扱いを受けたとするX1からの訴えがあったことを認識できる程度に協議事項を特定し、あるいはその趣旨を示す限り、会社は団体交渉に応じるべきである。
本件団交申入れに関し、協議事項の特定等に欠けるところはないから、会社には、特段の事情がない限り、本件団交申入れに応じない「正当な理由」(労組法第7条第2号)はないというべきであるところ、本件において、上記「正当な理由」に当たるというべき特段の事情は認められない。
(2)【処遇制度に関する会社の資料の取扱い等は不当労働行為に当たらない】
会社が第5回団体交渉及び第6回団体交渉において処遇制度に関する資料を交付しなかったことは、あくまで相応の理由に基づく一時的な対応にとどまるものというべきであるから、不当労働行為には当たらない。この点につき救済を命じた部分は、取消しないし変更を免れない。
(3)【団交議事録等の作成に応じないことは不当労働行為に当たらない】。
団体交渉の内容等を文書化することは、あくまで交渉内容等を記録、保存する手段の一つであり、使用者が当然に団交議事録等を作成する義務を負うと解することはできない。しかも、会社は、交渉内容の録音を許容しているから、組合が交渉内容等の記録化や団体交渉そのものを不当に妨げられたということはできない。また、組合と会社との間で具体的な合意がされ、会社が合意事項の文書化を不当に拒んだと認める証拠も見当たらない。よって、会社の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為には当たらない。
他方、会社が、申立外労組に対し、常に団交議事録等の文書の作成に応じていると認めるに足りる証拠は見当たらないから、会社の対応が同条第3号の不当労働行為に当たるということもできない。
(4)【事前同意約款等の締結を拒否したことは不当労働行為に当たらない】
事前同意約款等が、会社の経営権及び人事権の行使を制約するものであること、工場内における東芝労組と組合の組織規模に大きな隔たりがあること(申立外労組支部の組合員が約1400名であったのに対し、組合の組合員はX1 1名)、組合が、会社との間で、会社が申立外労組との間で形成したであろう信頼関係等に相当する関係をにわかに構築することが困難であったと考えられることを考慮すると、会社が事前同意約款等の締結を拒んだことはやむを得ないところがある。これに、他の協議事項に関する会社の対応も併せると、会社の対応は、労組法第7条第2号、第3号の不当労働行為に当たらない。
(5)【組合掲示板の設置等を認めないことは不当労働行為に当たらない】
申立外労組と組合との間の組織規模に大きな差があること、本件団交申入れの時期からみて、会社と組合との間で、掲示板を設置するなどの便宜供与の前提となる信頼関係等を形成することは困難であったと考えられることに照らすと、会社が組合への便宜供与を拒んだことはやむを得ない対応であった。これに、他の協議事項に関する会社の対応も併せると、会社の対応は、労組法第7条第2号、第3号の不当労働行為に当たらない。
(6)【救済の利益】
本件団交申入れに至るまでの紛争の経過に加え、会社が正当な理由なく本件団交申入れに応じなかったこと、組合員X1 の就業時間外における要求書の提出すら拒んでいることを併せ考えると、会社が同種行為に及ぶ可能性は否定できないから、会社が本件団交申入れに応じなかったことの救済方法として文書手交を命じるのが相当である。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成18年(不)第33号 一部救済 平成20年7月25日
東京地裁平成22年(行ウ)第90号 棄却 平成24年2月29日
東京高裁平成24年(行コ)第145号 棄却 平成24年10月31日
最高裁平成25年(行ツ)第80号、同平成25年(行ヒ)第106号 上告棄却・上告不受理 平成25年4月26日
最高裁平成25年(行ヒ)第107号 上告不受理 平成25年4月26日
 
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