労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る] [顛末情報]
概要情報
事件名  東芝(小向(こむかい)工場)  
事件番号  東京高裁平成24年(行コ)第145号  
控訴人兼被控訴人補助参加人   株式会社東芝  
控訴人兼行訴法22条に基づく参加人   全国一般労働組合全国協議会神奈川  
被控訴人   国(処分行政庁:中央労働委員会)  
判決年月日   平成24年10月31日  
判決区分   棄却  
重要度  重要命令に係る判決  
事件概要  1 Y会社が、①X組合の組合員X1 の処遇等に関する平成18年10月3日の団体交渉申入れに平成19年2月26日まで応じなかったこと(以下「本件団交拒否」という。)、②その後の団体交渉で処遇制度に関し十分な説明をせず、資料の交付も拒否したこと、③前記団体交渉で団交議事録の作成や事前同意約款の締結等に応じないこと、④組合掲示板の設置等について申立外Z組合と同等の便宜供与をしないことが、不当労働行為に当たるとして、神奈川県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審神奈川県労委は、前記1①、②の各事実は労組法7条2号の不当労働行為に当たるとして、Y会社に対し、処遇制度に関し十分な資料を提示又は交付し、説明を行うこと(初審命令主文1項)及び文書手交(主文2項)を命じ、その余の申立事実(前記1③、④)については棄却した。
 X組合及びY会社は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てたところ、中労委は、前記1①の不当労働行為を認定し、文書手交を命じ(中労委命令主文2項)、その点に関するY会社の再審査申立てを棄却する一方(主文3項)、その余の不当労働行為を認定せず、初審命令主文1項を取り消し、前記1②の不当労働行為に係るX組合の救済申立てを棄却し(主文1項)、その余のX組合の再審査申立てを棄却した(主文4項)。
 これに対し、Y会社及びX組合は、これを不服として、、それぞれ東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、Y会社及びX組合の請求をいずれも棄却した。
 本件は、同地裁判決を不服として、Y会社及びX組合が、それぞれ東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、いずれの控訴も棄却した。
判決主文  1 控訴人会社の控訴及び控訴人組合の控訴をいずれも棄却する。
2 当審における訴訟費用は、補助参加によって生じた費用及び行訴法22条に基づく参加によって生じた費用を含めて、2分の1を控訴人会社の負担とし、2分の1を控訴人組合の負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所の判断は、〔一部〕改めるほかは、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」1~6に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 争点1〔本件団交拒否が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか〕に関して、Y会社は、当審において、付随合意の成立の経緯及び内容からすると、X組合がY会社に対して団体交渉を申し入れる際には、X1がX組合に対してY会社による「不当な扱い」と訴え、X組合としても「不当な扱い」と考える内容を、Y会社に対して具体的に説明する必要があるなどと主張する。
 しかし、付随合意がそのような説明をすることまでを義務付けているとは解されないことは原判決の説示するとおりである。
3 争点4〔事前同意約款等の締結拒否が労組法7条2号、3号の不当労働行為に当たるか〕及び5〔X組合に対する組合掲示板の設置及びY会社施設内におけるビラ配布等の求めの拒否が労組法7条2号、3号の不当労働行為に当たるか〕に関して、X組合は、当審において、Y会社のZ組合に対する対応とX組合に対する対応の差異について、併存する組合に対する使用者の中立義務に違反し支配介入に該当する、Y会社の対応は不当労働行為意思の下に行われた、原判決が具体的な便宜供与の内容にこだわる判断を示したことは、判断の枠組み自体を誤っているなどと主張する。
 しかし、X組合とZ組合間にはその組織するY会社の従業員数に極めて大きな相違があり、かつ、Y会社とZ組合間には長年にわたる闘争、協力及び互譲の歴史的背景の中で積み重ねられた信頼関係があるから、Y会社がZ組合への対応とX組合への対応に差異を設けることには合理性があることは原判決の説示するとおりであり、Y会社の対応が中立義務に違反するとか、支配介入に該当するということはできない。
 X組合は、Y会社が行った団交拒否等を根拠に、Y会社がZ組合への対応とX組合への対応に差異を設けたことは不当労働行為意思の下に行われたなどと主張する。
 しかし、Y会社が対応に差異を設けたことに合理性があることは上記のとおりであり、Y会社が過去に団交拒否した事実等があるからといって、上記取扱いの差異が不当労働行為意思の下に行われたと認めることはできない。
 なお、X組合は、原判決が具体的な便宜供与の内容に言及して判断を示したことについて判断の枠組み自体を誤っているなどと主張する。
 しかし、原判決の認定するとおり、X組合は、要求書において、「Z組合への便宜供与と同等の便宜供与を当組合にも行うこと」という抽象的な要求を行っていたが、神奈川県労委に対する救済申立てでは、「組合掲示板の設置、会社施設内におけるビラ配布、その他施設内又は就業時間内における組合活動について、Z組合と同等の取扱いをしないこと」が不当労働行為と主張し、中労委でも、「X組合に対して組合掲示板の設置、会社施設内におけるビラ配布等を認めないこと」が不当労働行為と主張し、具体的な便宜供与の内容を示してY会社の不当労働行為を主張していたから、原判決が具体的な便宜供与の内容に言及しつつ、Z組合とX組合間の取扱いの差異の合理性を判断したことは不当ではない。
 そして、X組合が示した具体的な便宜供与をY会社がX組合に対して供与しないことが不当労働行為に該当しないことは原判決が説示するとおりであり、他に、便宜供与に関して、Y会社によるX組合に対する不当労働行為と認められるべき行為はない。
4 X組合は、当審においても、第5回団交及び第6回団交における処遇制度に関する資料の不交付や、回答書の不交付及び団交における合意事項等の文書化の不応諾が、具体的な団交の経緯からすると不当労働行為に該当する旨主張する。
 しかし、これらが不当労働行為とはいえないことは原判決の説示するとおりである。
 また、Y会社は、当審においても、本件団交拒否が不当労働行為に該当するとしても救済命令を発する必要性はないなどと主張する。
 しかし、中労委が文書手交を命じたことについて、労働委員会に付与された裁量の範囲を逸脱するとか、裁量の濫用があるということができないことは原判決の説示するとおりである。
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成18年(不)第33号 一部救済 平成20年7月25日
中労委平成20年(不再)第31・32号 一部変更 平成21年10月7日
東京地裁平成22年(行ウ)第90号 棄却 平成24年2月29日
最高裁平成25年(行ツ)第80号、同平成25年(行ヒ)第106号 上告棄却・上告不受理 平成25年4月26日
最高裁平成25年(行ヒ)第107号 上告不受理 平成25年4月26日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約174KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。