労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 明治大学
事件番号 中労委平成19年(不再)第72号
再審査申立人 明治大学消費生活協同組合労働組合
再審査被申立人 明治大学
命令年月日 平成21年7月15日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要 1 本件は、大学が、(1) 組合から申入れのあった明治大学消費生活協同組合(以下「生協」)に対する施設貸与の廃止及び同廃止の撤回を議題とする団交を拒否したこと、(2) 組合から申入れのあった生協の解散を議題とする団交を拒否したことが労組法7条2号の団交拒否に当たり、(3) 組合と協議しないまま、生協に対する請求権を放棄しなければ退職金を支払わない等の内容の文書を従業員に送付し、同書面を返送した従業員に対してのみ退職金の補てん金を支払うとするなどした生協従業員の退職金をめぐって行った一連の対応が同条3号の支配介入に当たるとして、東京都労働委員会に救済申立てがあった事件である。
2 東京都労委は、大学は、本件組合員との関係で労組法7条の使用者ということはできず、大学が組合との団交を拒否したこと、生協従業員に対する退職金の補てんをめぐる大学の行為はいずれも不当労働行為に該当しないとして救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。
命令主文 本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨  当委員会も、大学は、生協の従業員であった組合の組合員との関係において、労組法7条の「使用者」に該当するとはいえないと判断する。その理由は、次のとおりである。
(1) 大学が組合員に対し、労組法7条の使用者に該当するか
ア 労組法7条にいう「使用者」は、同法が助成しようとする団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味し、労働契約上の使用者がこれに該当するものの、必ずしも雇用主に限定されるものではなく、雇用主以外の者であっても、当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、その限りにおいて同条にいう「使用者」に当たると解される。
イ 本件については、生協の設立の経緯、出資者、理事長及び理事等生協組織、財政の基盤、組合員ら生協従業員の雇用についての諸々の観点からみて、大学が独立して運営されている生協の従業員を雇用しているとか、事実上管理しているとは認め難い。
 また、便宜供与見直しや施設貸与廃止の撤回及び生協そのものの解散問題に関しては、確かに便宜供与に係る部分については、生協に対して使用貸借等の当事者として大学が影響力を行使したことが認められるにしても、その性格及び影響力を行使せざるを得ない状況に至った経緯、内容等を勘案すれば、この面からも大学に本件団交の当事者性を認めることはできない。
 したがって、大学が組合員の基本的労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているとはいえないから、大学は、組合員との関係において労組法7条の使用者に当たるとはいえない。
ウ 組合は、労働者の労働条件等の労働関係の諸利益に対して影響力ないし支配力を及ぼし得る地位にある者は同条の使用者である旨、また、同条3号の使用者とは、労働組合の結成や運営に対して介入し、これを支配することの可能な者をいう旨主張するが、これは同法上の使用者の範囲を拡大しすぎるものであり、相当とはいえない。
(2) 大学が使用者に該当することを裏付ける根拠として組合が挙げる事実について
ア 大学が生協従業員Aの採用に異議を唱え、採用の取消しや同人の解雇を求めたとしても、生協は解散に伴う従業員全員の解雇まで同人に給与を支払っていたのであり、同人の採用の取消しや解雇の事実は認められないから、大学が生協従業員の採用を支配していたということはできない。
イ 生協が大学に対し経営状況等について報告を行ってきたことや、大学教員である生協理事の辞任の事実をもって、生協が大学に従属させられ、大学が生協を支配しているということはできない。
ウ 生協に対する請求権を放棄しなければ退職金を支払わない等とする文書の送付は清算準備事務局が行ったものであり、請求権放棄の文言は、東京高裁の勧告に応ずる条件として生協の解散と清算を早期に行うとされていたことからすればやむを得ない措置であって、文書の送付をもって大学が組合の運営に対し介入したとは認められない。
 また、退職金の補てんは大学と生協間における行為であって、大学が生協従業員に対して行ったものではないので、大学が雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたとは認められないから、退職金をめぐる大学の一連の行為をもって大学が労組法7条3号の使用者に該当する旨をいう組合の主張は採用できない。
(3) 結論
 以上のとおり、大学は、生協従業員であった組合の組合員との関係で、労働契約上の使用者には該当せず、また、大学が、組合の組合員の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたことを裏付けるに足りる事実関係があったとも認められない。
 したがって、大学は、組合の組合員との関係において、労組法7条の使用者としての地位にあるとはいえず、本件救済申立てに係る事実は同法7条違反には該当しない。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成14年(不)第44号・平成16年(不)第6号 棄却 平成19年11月20日
東京地裁平成22年(行ウ)第55号 却下・棄却 平成25年5月9日
東京高裁平成25年(行コ)第228号 棄却 平成25年10月1日
最高裁平成26年(行ツ)第10号・平成26年(行ヒ)第16号 上告棄却・上告不受理 平成26年3月6日
 
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