労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  明治大学 
事件番号  東京地裁平成22年(行ウ)第55号 
原告  明治大学消費生活協同組合労働組合 
被告  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被告補助参加人  学校法人明治大学 
判決年月日  平成25年5月9日 
判決区分  却下・棄却 
重要度   
事件概要  1 組合は、大学が、①組合から申入れのあった明治大学消費生活協同組合(明大生協)に対する施設貸与の廃止及び同廃止の撤回を議題とする団交を拒否したこと、②組合から申入れのあった生協の解散を議題とする団交を拒否したことが労組法7条2号に、③組合と協議しないまま、生協に対する請求権を放棄しなければ退職金を支払わない等の内容の文書を従業員に送付し、同書面を返送した従業員に対してのみ退職金の補てん金を支払うとするなどした明大生協の一連の対応が同条3号に当たるとして、救済を申し立てた。
2 初審東京都労委は、大学は、本件組合員との関係で労組法7条の使用者ということはできず、いずれも不当労働行為に該当しないとして申立てを棄却し、中労委も組合の再審査申立てを棄却した。
本件は、組合が提起した取消訴訟一審判決である。  
判決主文  1 本件訴えのうち、不当労働行為救済命令発令の義務付けを求める訴えを却下する。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。  
判決の要旨  1 労組法7条に定める「使用者」の意義及び判断基準
一般に、使用者とは、労働契約上の雇用主をいうものであるが、労組法7条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除し、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることに鑑みると、雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視することができる程度に現実的かつ具体的に支配し決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、その事業主は同条の使用者に当たる。
2 大学の労組法7条の「使用者」該当性について
(1)大学が、組合の組合員との間で労働契約を締結したことがなく、組合員との関係で、雇用主以外の者であることは争いがない。
(2)大学が、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視することができる程度に現実的かつ具体的に支配し、決定することができる地位にあるかどうかについて検討すると、①明大生協は、いわゆる職域生協であり、最高議決機関は明大生協職員の中から選出される総代により構成される総代会であって、理事会は、総代会で選出された20名の理事が構成員となり、日常の業務活動を統括しており、ほかに役員として監事がいる、②明大生協の従業員の労働条件については、その就業規則に就業時間、給与、定年、退職及び解雇等の定めがあるほか、給与規定及び退職手当支給細則に、基本給及び諸手当並びに退職手当の支給率等が定められている、③組合と明大生協の間で昭和51年に締結された労働協約において、「理事会は組合員の生活と権利にかかわることを決定もしくは施行する場合は、事前に組合の同意を得なければならない」との定めがある、といった事情に照らせば、明大生協従業員の基本的な労働条件等を現実的かつ具体的に支配していたのは雇用主である明大生協である。他方、大学が雇用主と(部分的とはいえ)同視することができる程度に現実的かつ具体的に支配力、影響力を有していたと認めるに足りる証拠はない。
(3)大学は、職域生協としての明大生協の運営及び存続につき影響力を有していたことは認められるものの、その態様及び程度は、大学が、その福利厚生を担う組織としての明大生協に対して及ぼす管理・監督の域を超えるものとはいえず、明大生協の従業員の雇用そのもの(採用、配置、雇用の終了等)はもとより、基本的な労働条件等につき現実的かつ具体的な支配力ないし影響力を及ぼしていたとは認められない。
したがって、大学が、明大生協従業員との関係で、労組法7条に定める「使用者」に当たるとはいえない。
3 本件中労委命令は、取り消されるべきものとはいえず、無効又は不存在ともいえないから、本件訴えのうち、不当労働行為救済命令発令の義務付け訴訟は、行訴法37条の3第1項2号に規定する訴訟提起要件を欠き、不適法である。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成14年(不)第44号・平成16年(不)第6号 棄却 平成19年11月20日
中労委平成19年(不再)第72号 棄却 平成21年7月15日
東京高裁平成25年(行コ)第228号 棄却 平成25年10月1日
最高裁平成26年(行ツ)第10号・平成26年(行ヒ)第16号 上告棄却・上告不受理 平成26年3月6日
 
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