概要情報
事件名 |
田中酸素 |
事件番号 |
中労委平成20年(不再)第14号 |
再審査申立人 |
田中酸素株式会社 |
再審査被申立人 |
田中酸素労働組合 |
命令年月日 |
平成21年7月1日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
重要命令 |
事件概要 |
1 本件は、会社が、[1]組合員A に対し、営業支援を命じたこと(以下「本件支援命令」)及び[2]組合員A、B 及びC の17年夏季ないし18年冬季の賞与及び19年1月以降の給与を減額したことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる、[3]A に対し注意書を交付したこと及び[4]B に対し戒告処分とし、営業所においていわゆる職場八分としたことは、同条第3号の不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審山口県労委は、前記[1]について、A を本件支援命令が発せられる前の職場に速やかに復帰させること、[2]について、17年冬季ないし18年冬季の各賞与について、明確かつ具体的な査定基準と支給手続を明示した上で、再査定に基づいて賞与支給額を定め、既支給額との差額を支払うこと、19年の月例賃金の基本給を18年と同額とし、既支給額との差額を支払うことを命じ、その余の申立を却下ないし棄却したところ、会社は、救済を命じた部分を不服として再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
(1) 初審命令主文第1項(本件支援命令に関し救済を命じた部分)を取り消し、この部分に関する救済申立てを棄却する。
(2) その余の再審査申立てを棄却する。
(3) 主文第2項を訂正する(再査定に関し、組合員3名が組合員であることを考慮しないこと、組合に明示した査定基準及び手続きに則って行うことを明らかにする内容に訂正)。 |
判断の要旨 |
(1)【本件支援命令は不当労働行為に当たらない】
本件支援命令の内容は、毎朝本社に出勤した後社用車で営業所に赴き、同営業所での勤務を終えた後、定時の勤務終了時刻までに社用車で本社に戻るというものであり、Aの給与、就業時間等の基本的労働条件を不利益に変更するものではなかった。また、A の勤務態様に照らせば、昼の休憩時間を除き、勤務時間外の本社での組合活動は制約されず、仮に昼の休憩時間における組合活動が制約されるとしても、本件支援命令により組合活動がどのように制約されたのかは明らかでないから、Aに救済すべきほどの不利益があったと認めることは困難である。更に、本件再審査が申立てられた後、本件支援命令は解除されており、Aは本社に復帰している。
以上によれば、Aに救済すべきほどの不利益があったと認めることは困難であるから、本件支援命令は労組法第7条第1号の不当労働行為に当たらない。
(2)【査定制度に基づく賞与減額は不当労働行為に当たる】
Aら3名の17年冬季ないし18年冬季における賞与の支給額が、それ以前の支給額や他の従業員の支給額の傾向からみて低額(以前の約3分の1又は4分の3)であったと認められること、会社が、前年同季の支給額を基本として賞与の支給額を決定していたと推認されることに照らすと、不利益な取扱いに当たるというべきである。
また、賞与に関する査定制度の運用が客観性、合理性を欠く恣意的なものであったと認められること、会社が主張するAら3名の勤務態度を減額事由とすることに合理的な理由が見当たらないこと、組合と会社が継続的に対立関係にあったことに照らすと、会社は、Aら3名の組合活動を嫌悪し、同人らに経済的不利益を課す意図に基づいて賞与の減額を行ったものと認められる。
したがって、会社が、Aら3名の17年冬季ないし18年冬季における各賞与を減額したことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
(3)【査定制度に基づく賃金減額は不当労働行為に当たる】
19年の職能給を減額された者が、従業員28名のうちAら3名を含む4名しかいないこと、Aら3名の19年の職能給を減額する合理的な理由が見当たらないことから、Aら3名に対する19年の職能給の減額(前年比9600円ないし1万5000円減)は、A ら3名に対する不利益な取扱いであると認められる。
また、会社が、(2)のとおり、不当労働行為意思に基づいて賞与を減額していたことも併せると、会社は、Aら3名が組合員であることもしくは正当な組合活動を行ったことを理由として、19年の職能給を減額したものと認めるのが相当である。
従って、会社が、Aら3名に対する19年の職能給を減額したことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。 |
掲載文献 |
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