労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 京都生活協同組合
事件番号 中労委平成19年(不再)第65号
再審査申立人 京都-滋賀地域合同労働組合
再審査被申立人 京都生活協同組合
命令年月日 平成20年10月15日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要 1本件は、生協が、(1)組合執行委員長A(「A」)に対し、パート職員としての時間給及び手当を支給せずアルバイト職員としての時間給のみを支給したこと(「本件手当等不支給」)、並びに平成18年6月6日及び同月27日の団体交渉において上記支給の根拠についてAが試用期間中のアルバイト職員であると答えるなどして誠実に応じなかったこと、(2)組合が同年5月11日に申し入れた団交を拒否したこと、(3)同月26日にAの雇用契約を解約したこと、(4)Aの雇用契約解約が正当であること等を説明する文書を掲示したことが不当労働行為であるとして、組合が京都府労委に救済を申し立てた事件である。
2京都府労委は、上記(1)~(4)はいずれも不当労働行為に当たらないとして、組合の申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てたものである。
命令主文 本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨 (1)本件手当等不支給について
ア手当等の不支給について
 生協がAに対しアルバイト職員としての時間給のみを支給したことは、Aが試用期間中のアルバイト職員の地位にあったことによるものであり、これは妥当な措置であったといえる。また、生協が、Aの組合加入や組合活動を理由としてAを不利益に取り扱ったものでないことは明らかである。
イ団交における生協の回答について
 生協が、団交においてAを試用期間中のアルバイト職員として採用した旨説明したことは、生協としての事実認識について言及したものであって、これが不誠実な対応であるということはできない。また、組合の執行委員長であるAに対する不利益取扱いであるとか、組合弱体化を企図した発言であるとは認められない。
(2)団交拒否について
 生協の店長が組合の団交申入書をいったん返却したことは認められるが、生協は、その翌日には同店長からの団交申入れの報告に対して即座に受け取るように伝え、団交申入書を受け取っていることなどから、同店長が団交申入書を直ちには受け取らなかったことをもって、生協が団交を拒否したと評価することはできない。
 また、生協は、組合が指定した日には団交に応じていないものの、団交申入書を受け取ってから団交開催に至るまでの生協の対応をもって、とりたてて団交期日を引き延ばしたものとみることはできず、不誠実な対応であったということはできない。
 なお、上記生協の対応が、組合を他の労働組合と差別する不利益取扱いであり、組合の組織と活動に対する支配介入であるとの組合の主張を認めるに足りる証拠はない。



(3)雇用契約解約について
 Aの勤務状況や試用期間延長の経緯からすると、生協は、Aが組合の組合員であると認識する以前から、同人の業務遂行能力や従業員としての適格性に疑問を持ち試用期間を延長したものの、Aの組合活動が顕在化した後においても、同人の勤務状況に改善がみられなかったことから、Aは通常業務に耐え得る能力・適性を備えていないと判断して、雇用契約の解約を行ったものと認められる。したがって、生協の挙示した、Aの業務適性不良や協調性欠如があるとの解約事由は、相当性を有するものということができる。
 また、Aの雇用契約解約は、Aの組合活動等との関連性は認められないし、組合が主張するような団交破壊や組合の弱体化を意図したものであるともいえず、不当労働行為には該当しない。
(4)生協の文書掲示について
 生協が掲示した各文書の内容からすると、生協としては、ビラ配布等の組合の情宣活動を放置すれば、生協が「不当労働行為」や「不正売買」を行っているとの誤解を顧客らに与えることになりかねないことから、生協の信用が失われることを危惧して各文書において生協の見解を掲示するに至ったものと理解できるものである。また、各文書の全体をみても、組合が主張するような組合に対する誹謗中傷等を何ら含むものではない。
 そうすると、生協の行った文書掲示は、いずれも組合の情報宣伝活動に対する使用者としての見解を表明したものであって、組合の弱体化を企図したものということはできない。

掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
京都府労委平成18年(不)第3号 棄却 平成19年11月2日
京都地裁平成20年(行ウ)第15号 却下 平成21年1月29日
東京地裁平成21年(行ウ)第48号 棄却 平成22年3月15日
東京高裁平成22年(行コ)第137号 棄却 平成22年10月13日
 
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