労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 ネスレジャパンホールディング(東京)
事件番号 中労委平成17年(不再)第59号・第60号
再審査申立人 (59号)ネスレ日本株式会社・(60号)ネッスル日本労働組合東京支部
再審査被申立人 (59号)ネッスル日本労働組合東京支部・(60号)ネスレ日本株式会社
命令年月日 平成20年6月4日
命令区分 一部変更
重要度  
事件概要 1 本件は、(1)会社及び関係する2会社(関係2社)が、支部が平成15年1月6日付けで開催を申し入れた団体交渉(本件団体交渉申入れ)等のうち、東京支店に係る会社組織再編に関する事項(本件申入れ事項)について、自ら提案する団体交渉方式(連名方式)でなければ支部の交渉に応じられないなどとして、支部単独の交渉に応じなかったこと、(2)本件団体交渉申入れ等において、支部が会社の組織再編に伴い、東京支店における賃金決定の権限は会社及び関係2社のいずれにあるのか等説明を求めたのに対し、これに応じなかったこと、(3)本件団体交渉申入れ等に東京支店の支店長らを出席させなかったこと、(4)14年7月以降に行った支部との団体交渉に際して、団体交渉開催場所への移動時間について賃金控除を行ったことが、それぞれ会社及び関係2社による不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、関係2社に対する救済申立ては却下し、会社に対し、団体交渉開催場所への移動時間について賃金控除を行ったこと及び東京支店に係る会社組織再編に関する事項について具体的な説明を行わなかったことに関する文書交付及び履行報告を命じ、その余の救済申立ては棄却した。会社及び支部はこれを不服として再審査を申し立てた。

命令主文 初審命令を変更し、会社に対し、東京支店に係る会社組織再編に関する事項について、15年1月5日から16年1月26日までの間、連名方式に固執して支部単独の団体交渉に応じなかったこと及び団体交渉場所への移動時間について支部交渉員の賃金を控除したことが不当労働行為であると認定されたこと並びに今後このような行為を繰り返さない旨の文書を支部に対し手交することを命じ、その余の組合の救済申立ては棄却し、会社の再審査申立ては棄却した。
判断の要旨 (1) 東京支店に係る会社組織再編に関する事項についての会社の対応について
ア 会社組織再編においては、支部組合員自らの労働条件に直接関係する基本給通知書の名義人、年間休日の通知等について他社名義が使用されていたのであるから、支部組合員が自らの身分と会社の法的関係について疑念を持つとともに、重大な関心を持っていたことは容易に推認でき、支部が会社に対し説明を求めたことは相応の理由がある。
イ 平成7年最高裁判決によって支部の団体交渉権が確認され、組合本部も各支部の要求に対し、それぞれ支部団体交渉として誠実に対応することを会社に求めていることからすると、会社の組織再編問題についても支部独自の問題に関する限り、支部に会社と団体交渉をすることが認められているといえる。そして、本件申入れ事項は、会社が組合本部と交渉を行った会社従業員全体の組織再編後の所属先といった議題とはなり、東京支店における組織再編後の企業名の使い分けという支部独自のものであって、支部と会社間の義務的団体交渉事項であり、会社が同事項の団体交渉を拒否することは労働組合法7条2号に該当することになる。


ウ そこで、会社の対応は当該交渉拒否といえるかどうかについて検討すると、本件申入れ事項に係る交渉申入れについて、会社は、いずれも連名方式により交渉に応じる旨回答していること、団体交渉においても、当該交渉を支部団交とは位置づけようとしなかったり、会社の連名方式の提案をめぐって対立し、具体的な内容に入らないまま交渉が終了しているのことからすると、会社は連名方式に固執することにより実質的に交渉を拒否したものといえ、下記エのとおり、団体交渉議題が整理された16年1月26日までの間の対応は労働組合法7条2号に該当する。
エ 16年1月26日、支部は、会社及び関係2社らに対し本件申入れ事項は要望事項とする旨の要望書を提出したが、同要望書の冒頭には「支部団体交渉議題とは区別し本要望書を提出します。」とあること等から、同事項については、今後支部・会社間の団体交渉議題とせず、同支部の会社への要望事項として整理したものといえる。したがって、本件申入れ事項は、同日までは支部独自の義務的団交事項であったが、同日以降は支部が会社に義務的な交渉事項としては団体交渉を求めることができなくなったといえる。よって、会社が同日までの間、上記事項について連名方式に固執し実質的な団体交渉が開催されなかったことは労働組合法7条2号に該当するが、同日以降同事項について会社が交渉に応じなかったとしても不当労働行為の問題は生じない。
オ 支部は、団体交渉の場に東京支店の実情を知る支店長らを出席させなかったことは不誠実団交に該当すると主張するが、このことによって団体交渉の円滑な運営に支障を来したり、そのおそれがあるといった事情は見受けられない。したがって、東京支店の支店長らを団体交渉に出席させなかったことをもって、会社の対応を不誠実であるということはできない。

 カ なお、組合本部及び5支部の団体交渉申入れは、交渉議題や交渉希望日の重複あるいは近接等があり、会社は繰り返し組合内部での調整を求めたが、組合らは特段の対応を取らなかったのであるから、会社が連名方式を提案したこと自体を不当とまでいえないし、このことにより支部の組織のあり方や運営の仕方を支配したり、組合活動を抑制しようとした事情は認められないから、本件団体交渉申入れ等に対する会社の対応は支配介入には当たらない。
(2) 団体交渉開催場所への移動時間の賃金控除について会社は、(1)都労委の別件調査において団体交渉を実施する場合の移動時間の賃金保障については保障することを約束までしておらず、賃金カットを行わない旨記載した都労委の調査調書の記載は誤記である、(2)支部と実施した3回の団体交渉でも移動時間の賃金保障は行っていない等主張するが、会社は、上記調書の記載について訂正を申し出る等の措置をとっていないこと、上記団体交渉について賃金控除を行ったことを裏付ける証拠を提出していないことから、上記主張する事実は認めることができない。したがって、団体交渉の際に会社が団体交渉開催場所への移動時間にかかる賃金控除を行ったことは、別件調査において確認された団体交渉に関する労使間の取扱いを自ら破るものであり労組法7条3号に該当する。

掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成15年(不)第15号 一部救済 平成17年7月5日
東京地裁平成20年(行ウ)第514号 棄却 平成21年6月25日
東京高裁平成21年(行コ)第249号 棄却 平成21年12月24日
最高裁平成22年(行ヒ)第146号 上告不受理 平成22年12月2日
 
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