労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 ネスレジャパンホールディング(東京)
事件番号 東京地裁平成20年(行ウ)第514号
原告 ネスレ日本株式会社
被告 国(処分行政庁 中央労働委員会)
被告補助参加人 ネッスル日本労働組合東京支部
判決年月日 平成21年6月25日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、Y会社及び関係2社が、①X組合の団体交渉申入れ等のうち、東京支店に係る会社組織再編について、Y会社の提案する団体交渉方式でなければ対応できないとして、支部単独の交渉に応じなかったこと、②東京支店に係る賃金決定の権限等に関する説明要求に応じなかったこと、③同団体交渉申入れ等に東京支店の支店長らを出席させなかったこと、④団体交渉開催場所への移動時間について賃金控除を行ったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 初審東京都労委は、関係2社に対する救済申立ては却下し、Y会社に対し、団体交渉開催場所への移動時間について賃金控除を行ったこと及び東京支店に係る会社組織再編について具体的な説明を行わなかったことに関する文書交付及び履行報告を命じ、その余の救済申立ては棄却した。
 Y会社及びX組合は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、初審命令主文の一部を変更し、会社の再審査申立てを棄却した。Y会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、請求を棄却した。
判決主文 1 Y会社の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)はY会社の負担とする。
判決要旨 ① 争点(1)(本件団体交渉申入れに対するY会社の対応は、労働組合法7条2号の該当する不当労働行為に該当するか。
  本件団体交渉申入議題ⅠないしⅢは、Y会社東京支店における組織再編に関する事項を内容としてものであり、X組合の組合員の身分や組合員が従事する東京支店に関する法的関係についての交渉議題であることが優に認められる。
  したがって、同議題は、組織再編後のY会社東京支店の従業員に関する労働条件その他の待遇や人事に関する事項として、X組合との関係における義務的団体交渉事項であるというべきである。そうすると、Y会社は、同議題について、X組合との間で個別に団体交渉に応じる義務がある。
  本件団体交渉申入れ後最初の団体交渉開催予定日に団体交渉が開催されなかったのは、直ちにY会社がこれを拒否してものとはいえないものの、その後2回開催された団体交渉については、X組合が個別の団体交渉を一貫して求めていたのに対して、Y会社が連盟方式による団体交渉に固執したため、その間でY会社東京支店に係る組織再編事項について団体交渉が行われなかったものである。その状態は平成16年1月26日にX組合が同事項を交渉事項から外すまで継続していたことが認められる。この間のY会社の対応は、連名方式でなければX組合との団体交渉をしないというものであって、実質的に団体交渉を拒否したものと評価できるものであるから、労働組合法7条2号の不当労働行為に該当するというべきである。
2 争点(2)(Y会社が、平成14年7月26日の団体交渉の際におけるX組合側交渉員の団体交渉開催場所への移動につき賃金控除をしたのは、労働組合法7条3号に該当する不当労働行為か。)
 Y会社は、別の不当労働行為事件の東京都労委での第5回調査期日において、X組合に対して、X組合側交渉員の団体交渉及び移動時間について賃金控除をしないことを確認したことが認められる。遅くとも、その時点では、Y会社とX組合との間に上記移動時間について合意が成立していたものと認めるのが相当である。そうすると、Y会社が同調査期日後の平成14年7月26日に開催された団体交渉におけるX組合側交渉員の団体交渉開催場所への移動時間について賃金控除したのは、上記合意に違反する行為である。そして、Y会社が、当該賃金控除について、X組合に事前に説明したり、協議を持ち掛けたりしたなどの事実がうかがえないことからすると、当該賃金控除は、Y会社が一方的に上記合意を破ってX組合側交渉員に経済的打撃を与える行為であり、X組合の団体交渉行為を萎縮させるものであるといえるから、Y会社がした当該賃金控除は、労働組合法7条3号に該当するというべきである。
3 以上によれば、争点(1)(2)に係る本件命令は相当であり、Y会社が主張するような違法はない。そして、これに対する救済方法として、文書掲示を命じたことも相当である。したがって、Y会社の請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成15年(不)第15号 一部救済 平成17年7月5日
中労委平成17年(不再)第59号・第60号 一部変更 平成20年6月4日
東京高裁平成21年(行コ)第249号 棄却 平成21年12月24日
最高裁平成22年(行ヒ)第146号 上告不受理 平成22年12月2日
 
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