労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 光仁会(懲戒処分)
事件番号 中労委平成18年(不再)第39号
再審査申立人 全国一般労働組合長崎地方本部長崎地区合同支部
再審査被申立人 医療法人光仁会
命令年月日 平成19年9月19日
命令区分 一部変更
重要度 重要命令
事件概要 1 本件は、医療法人光仁会(以下「法人」という。)が、(1)平成16年10月7日、その設置運営する病院に勤務する従業員である、全国一般労働組合長崎地方本部長崎地区合同支部(以下「組合」という。)の下部組織である光仁会病院分会(以下「分会」という。)のA分会長に対し、同人が16年度夏季一時金交渉中に、法人の許可なく病院施設に組合旗を設置し、法人からの撤去要求に応じることなく組合旗の設置を続け、法人に損害を与えたことを理由に、就業規則に基づき懲戒処分に付す前提としての弁明を求めたこと、(2)上記(1)の懲戒処分に関して同月12日付けで組合から申入れのあった団体交渉(以下「本件事前団交」という。)に応じなかったこと、(3)上記(1)の組合旗設置に対し、撤去するよう組合に要求し、理事長名のビラを配布し、日の丸、横断幕及び立看板を設置したことがそれぞれ不当労働行為に当たるとして、組合が、長崎県労委に救済を申し立てた事件である。
 本件救済申立て後の同月22日、法人がA分会長に対し停職3か月(賃金不支給)の懲戒処分をしたので、組合は、上記(1)の申立ての内容を「懲戒処分に付したこと」に改めた。また、同年11月11日、法人と組合との間で、上記懲戒処分に関する団体交渉(以下「本件事後団交」という。)が行われたが、組合は、本件事後団交における対応が不誠実であるとして、追加申立てをした。 
2 長崎県労委は、組合の申立てに係る法人の行為はいずれも不当労働行為に当たらないとして、救済申立てを棄却することを決定した。これを不服として、組合は、再審査を申し立てた。

命令主文 初審命令令主文を次のとおり改める。
(1)本件懲戒処分がなかったものとしての取扱い及びバック・ペイ
(2)文書手交(本件事前団交不応諾に関して)
(3)その余の本件救済申立ての棄却
判断の要旨 1 本件懲戒処分について
 組合が、前件団交拒否事件に続く法人の不誠実な交渉態度に抗議し、事態の打開を図らなければならないような状況にあったとはいえ、16年度夏季一時金に関する法人の増額回答を求めるため、法人の許可なく本件組合旗を病院施設に設置し、法人の撤去要求に応じず3か月に及ぶ長期間にわたって本件組合旗の設置を続け、法人の対外的な信用低下の一因をなしたことからすると、本件組合旗の設置は、組合活動として行き過ぎており、その正当性の範囲を越えているといわざるを得ない。
 しかしながら、
(1) 法人は、本件組合旗の設置に対し、理事長名のビラを作成し、従業員に配布するとともに、53日間にわたり、本件組合旗付近に日の丸6本を掲揚し、公道に面した病棟に横断幕(縦70センチメートル・横10メートル)3枚を設置するなどした。上記ビラ等に、「赤旗さまをもう少し高く掲げ、へんぽんと翻させた方が、道往く人々に感銘を与えたでしょうに」などと組合をやゆし、挑発する内容の記載が含まれていることや、横断幕の大きさ・設置期間等を考え合わせると、法人の上記措置は、労使関係上著しく不適切な面があり、かえって混乱状態に拍車をかけ、本件紛争をいたずらに長期化させたものと評価せざるを得ない。
(2) 下記(2)のとおり、法人が本件懲戒処分を実施するに当たり、組合から申入れのあった本件事前団交に応じなかったことに正当な理由は認めらないことからすると、本件事前団交に応じることなく本件懲戒処分を実施したのは、組合を軽視したものといわざるを得ない。
(3) 本件懲戒処分は、停職3か月(その間、賃金不支給。また、病院敷地内へのA分会長の組合活動としての立入りも許さない。)というものであったが、理事長が、「理事会で、108日の旗揚げだから3か月の勤務停止でいいんじゃないかということになった。」などと供述しているとおり、処分内容の決定基準があいまいである。また、法人の上記(1)の措置にも業務運営上の支障発生の一因があるにもかかわらず、本件懲戒処分は、経済面・職業生活面及び組合活動面において、不利益性が相当程度に強いものである。
さらに、法人は、過去の労使紛争において、組合が本件組合旗の設置と同じ程度長期(73日間等)にわたり組合旗等を設置したことに対し、何ら処分をしなかったこと等の事情を考慮すると、本件懲戒処分の内容は、著しく過重、不合理であり、かつ相当でない。
(4) 労働協約の一斉解約通告、前件団交拒否事件、本件における6名ものガードマンの配置(病院施設へのA分会長の立入りの看視)等の事実関係からすると、組合に対する法人の嫌悪を十分推認することができる。
 以上総合勘案すると、本件懲戒処分は、法人が、組合活動の正当性の範囲を越えた本件組合旗設置等の行動を奇貨として、中心となって活動していたA分会長に対し、著しく過重で相当でない処分により打撃を与えその活動を封じ込めることによって、組合の運営に支配介入したものと評価するのが相当であり、かかる行為は、労働組合法第7条第3号に該当する。
2 本件事前団交不応諾について
 法人における懲戒処分には懲戒解雇等を含み、基本的労働条件に強くかかわるものであるところ、処分の基準も不明確で、本件のような処分の先例もなかったのであるから、懲戒処分に関して事前協議を行う旨の労使協定が存在しなくても、組合からの本件事前団交申入れに、法人は応じなければならず、他に、本件事前団交不応諾を正当化する理由も認められないから、本件事前団交不応諾は労働組合法第7条第2号に該当する(本件事後団交における法人の対応が不誠実であるとは認め難く、上記1(2)のとおり命ずる)。
3 本件組合旗撤去要求、ビラ配布及び日の丸・横断幕・立看板設置について
 ビラ配布及び日の丸・横断幕・立看板設置は、法人が本件組合旗の設置に対抗する措置として行ったものであり、これらは良好な医療・療養環境を阻害しかねないものであって、その記載内容にも労使関係上適切さに欠けていた面もあるが、本件組合旗の設置は組合活動としての正当性の範囲を越えていたこと等を考慮すると、ビラ配布等をもって組合の運営に支配介入したとまでいうことはできない。



掲載文献  

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
長崎県労委平成16年(不)第9号 棄却 平成18年6月5日
東京地裁平成19年(行ウ)第680号 棄却 平成21年2月18日
東京高裁平成21年(行コ)第121号 棄却 平成21年8月19日
最高裁平成21年(行ツ)第356号・平成21年(行ヒ)第467号 上告棄却、上告不受理 平成22年9月2日
 
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