労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  西日本旅客鉄道 
事件番号  岡山地労委 平成12年(不)第1号 
岡山地労委 平成13年(不)第1号 
申立人  ジェーアール西日本労働組合 
申立人  ジェーアール西日本労働組合岡山地方本部 
被申立人  西日本旅客鉄道株式会社 
命令年月日  平成16年10月14日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、(1)現場長らが組合員に対し、組合からの脱退を慫慂したこと及びこれに応じなかった組合員を転勤、転職させたこと、(2)岡山支社が岡山地本からの団体交渉申入れに応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に、(1)組合員に対する転勤を手段とした脱退慫慂を行うことによる、支配介入の禁止、(2)文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、申立人ジェーアール西日本労働組合岡山地方本部所属のX1に対し、転勤を手段とした脱退慫慂を行うことにより、申立人の組織、運営に支配介入してはならない。
2 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、申立人ジェーアール西日本労働組合及び同組合岡山地方本部に対し、本件命令後、速やかに、次の文書を手交しなければならない。
       記
            平成 年 月 日
ジェーアール西日本労働組合
   中央執行委員長 X2 殿
ジェーアール西日本労働組合岡山地方本部
   執行委員長   X3 殿
          西日本旅客鉄道株式会社
            代表取締役社長 Y1
 当社が、岡山支社内において、貴組合員のX1に対し、貴組合からの脱退を慫慂したことは、岡山県地方労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されましたので、今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
3 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  2610 職制上の地位にある者の言動
2625 非組合員化の言動
X1に対する脱退慫慂の申立てについては、会社企画課長Y2及びY3所長の発言は、重大な事故を起こしたにもかかわらず、再乗務を希望するX1に対して、反省を求めるとともに、運転士職以外への転職を含めて、今後の進路を考えるように求めたものであると考えるのが妥当であること、またY5指導助役らの発言も、X1を再乗務させることが困難である旨を伝えたに過ぎず、仮にこれらの発言によってX1が再乗務に危惧を感じ、動揺したとしても、これらの発言をもって直ちに組合からの脱退慫慂発言と解釈することはできないこと、Y4岡山支社人事課職員の発言に関しては、証明不十分であり、会社の意を体しての発言であるとの証明もないこと、事故に伴う日勤期間46日間というのも、安全の確保という会社の重要使命を考えれば、入駅すべき番線を間違えるという安全運転の基本にかかわる事故を起こしたX1の日勤が長期間に及んだことが組合を特に差別するものであったとの疎明もないこと等から、この点に関する組合の申立ては認められず、組合のX2、X3に対する脱退慫慂の申立てについても、会社が両名に対し脱退慫慂を行ったとする本人の証言も疎明もないことから、不当労働行為であるとする組合の主張は認められないとされた例。

1300 転勤・配転
2625 非組合員化の言動
上記3名に対する転勤については、3名に対する脱退慫慂があったと断定できない以上、「みせしめ転勤」であったとの組合の主張は採用できず、本件転勤に不当労働行為を認めることはできないとされた例。

1300 転勤・配転
「11.10転勤」では、車掌職については、車掌職配置が廃止されることとなったため大部分の者が転勤しているが、車掌職、検修職の異動に関し、組合員が不当に差別されたとの証拠や疎明はないこと、運転士職については、車掌の要員配置がなくなり、運転士が大幅に減員となる津山鉄道部において、縮小後の要員配置などについて、効率的な運用を図ることが求められていたことを考慮すれば、会社が幅広い業務を行うことができる社員を残すべく、内勤及び運転士も車掌もできるという混み運用の可否を転勤の基準としたことは相応の合理的根拠があったと認められ、転勤後の状況を見ると、混み運用の可能な社員が同鉄道部に残っていることが認められ、一方組合は会社の主張する転勤の基準を否定するのみで、個々の転勤が不当なものであるとの疎明は何らされておらず、転勤者の大部分が組合の組合員であったとしても、その事実のみをもって、差別的取扱いであったと認めることはできず、本件転勤を不当労働行為と断定することはできないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2625 非組合員化の言動
X4に対する脱退慫慂については、会社Y6課長らは、X4に対して、遠隔地への転勤をにおわせる発言により、X4本人と妻の動揺を誘い、X4に組合からの脱退書を書くことを約束させていることが認められ、これらの行為が、津山勤務を強く希望するX4の心情を利用し、組合からの脱退を慫慂するものであることは明らかであり、人事異動に関して直接的権限はないとしても、現場長として一定の権限があると認められるY6課長らの行為は会社の意を体して行われた行為であると認定でき、また、Y6課長らがX4の自宅を訪問したことについても、個人的なつきあいがあったという事実は認められるものの、一職員の自宅に管理職がそろって出向くという行為自体が不自然といわざるを得ず、人事異動を背景としたY6課長の発言が個人的な行為であるとの具体的な疎明もないことから、Y6課長らの行為は、組合の弱体化を意図し、管理者の立場から、X4に対し、組合からの脱退を慫慂したものであり、組合に対する支配介入であると認められた例。

1300 転勤・配転
組合が不当労働行為と主張するX5に対する脱退慫慂及びそれを拒否したことによる報復的な転勤転職発令については、証人尋問におけるX5の記憶が曖昧であること等を考慮すれば、その証言の信憑性を疑わざるを得ず、また、X5は本件を含めて5件もの停止位置不良事故を起こしており、そのうち3件について処分を受け、日勤勤務を余儀なくされていることが認められ、このように同種の事故を繰り返し起こしている経緯を考えれば、安全の確保という観点から、X5を運転業務からはずし、他の職種に就かせようとした会社の判断を不当なものであると認定することはできず、会社のX5に対する対応に不当労働行為があったとは認められないとされた例。

2216 その他
X1、X2、X3の転勤の撤回を求める団交申入れについては、組合が門前払いされたと主張する簡易苦情処理会議は、労使委員で審議した結果、意見一致がみられず、結果的に転勤の撤回が行われなかったに過ぎず、そのことのみをもって直ちに簡易苦情処理会議が機能を果たしていないと断定することはできないこと及び簡易苦情処理会議が団交に代わる機能を果たしていないとの疎明もないこと、X5の転勤転職に関する団交申入れについては、岡山支社は窓口整理で説明しようとしたところ、組合が拒否し、正式な団交を求めたものであるが、窓口整理は、別組合とも行われている労使協議の一つであって、労使慣行と認めざるを得ないにもかかわらず、組合は、突然、従来応じていた窓口整理での労使協議を拒否する態度にいたっていることからすると、本件団交が正式に申し込まれていると認めることはできず、この2件に対する岡山支社の対応を団交拒否であるとする組合の主張は採用することはできないとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委 平成16年(不再)第73・74号 一部変更 平成18年2月15日
東京地裁 
(基本事件 平成18年(行ウ)第160号)
参加申立ての却下 平成19年3月14日
東京地裁 平成18年(行ウ)第160号 棄却 平成19年11月26日
東京高裁 平成19年(行コ)第429号 棄却 平成20年5月29日
最高裁  平成20年(行ツ)第263号
       平成20年(行ヒ)第305号
上告棄却、不受理 平成20年11月25日
 
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