概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道(西労岡山脱退勧奨等) |
事件番号 |
東京地裁平成18(行ウ)160号 |
原告 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
被告 |
国(処分行政庁 中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
ジェーアール西日本労働組合 |
被告補助参加人 |
ジェーアール西日本労働組合中国地域本部 |
判決年月日 |
平成19年11月26日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
現場長らが組合員に対し、組合からの脱退を慫慂したこと及びこれに応じなかった組合員を転勤、転職させたこと並びにA支社が組合地本からの団交申入れに応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、初審岡山県労委は、会社に対し、転勤を手段とした脱退慫慂を行うことによる組合らの組織、運営への支配介入の禁止及び文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 組合及び会社はこれを不服として、再審査を申し立てたが、中労委は、初審命令の一部を変更し、その余の申立てを棄却した。会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
争点1 組合員X1に対する脱退慫慂の有無及び会社の帰責性について ① 組合員X1に対する脱退慫慂の有無 認定事実から、会社のY1区長らは、平成9年8月頃から平成12年1月の間、家庭の事情等から津山鉄道部での勤務を希望していたX1に対し、組合からの脱退を促し、これに応じた場合には津山鉄道部への勤務もあり得ること等を示唆したことが認められ、Y1区長らが、組合員X1に組合からの脱退を慫慂していたものと認められる。 ② 会社の帰責性 X1に対する脱退慫慂で中心的な役割を果たしたY1区長は、岡山運転区長又は岡山支社輸送課長の地位に、Y2部長は、津山鉄道部長の地位におり、いずれも非組合員であり、脱退慫慂の発言をしたY3科長及びY4科長は、別組合の組合員であったが、いずれもY1区長又はY2部長の補佐又は代理をする立場であった。認定事実から、Y1区長及びY2津山鉄道部長は、現場長として、助役も現場長の指示に従うかたちで、いずれも、X1の人事に事実上の影響力を有していたことが認められる。このような事実上の権限を有する複数の者が、場面に応じて一連の流れの中で、一体となって繰り返しX1に対して脱退慫慂行為を行っているのであり、その具体的な発言内容も、X1が強い関心を有していた異動に絡めてなされている上、会社の組織の一員としての発言と、客観的に見ても、また、X1から見ても解釈できるものがある。会社が組合に対して嫌悪感を有していたことに照らすと、Y1区長らは、会社の意を体して、X1に対する脱退慫慂を行ったと認めるのが相当であり、このような行為は支配介入に該当すると評価できるものである。 争点2 組合員X2に対する脱退慫慂の有無及び会社の帰責性について ③ 組合員X2に対する脱退慫慂の有無 認定事実から、会社のY5区長らが、平成13年1月に行われた日勤勤務中に、乗務に復帰することを強く希望していたX2に対し、組合から脱退すれば希望どおり乗務に復帰することもあり得ることなどを示唆し、組合から脱退しないと再度の乗務ができないことを示唆したことが認められるのであるから、Y5区長らによる組合員X2に対する組合からの脱退慫慂行為があったことが認められる。 ④ 会社の帰責性 X2に対する脱退慫慂を行ったY5区長は岡山運転区長で、非組合員であり、Y6総括助役及びY7指導助役は、いずれも別組合の組合員であったが、岡山運転区長の補佐又は代理をする立場にあったものである。いずれもX2の人事に事実上の影響力を有していたことが認められる。Y5区長らのX2に対する脱退慫慂行為は、いずれもX2の上司として、その人事、処遇に関して相互に意思を通じておくべき立場にあった者が、再乗務の可能性というX2にとって強い関心を有する事項について、会社が権限を有し、Y5区長らが事実上の権限を有する人事に属することに絡めて行ったものであり、組織的な対応であったと認められる。そして、Y5区長らのX2に対する発言には、会社の一員として、X2の人事に関する事実上の権限行使が十分に可能であることを、客観的に見ても、またX2から見ても解釈できるものである。会社が組合に対して嫌悪感を有していたことに照らすと、Y5区長らは、会社の意を体して、X2に対する脱退慫慂を行ったと認めるのが相当であり、このような行為は会社に帰責性のある支配介入に他ならないのである。 |