概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道(西労兵庫脱退勧奨) |
事件番号 |
中労委 平成14年(不再)第53号
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再審査申立人 |
ジェーアール西日本労働組合近畿地方本部 |
再審査申立人 |
ジェーアール西日本労働組合 |
再審査被申立人 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
命令年月日 |
平成16年 7月 7日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、(1)加古川鉄道部の助役の総務科長Y1が組合員X1に組合のあっせん販売するネクタイを外すよう求めて別のネクタイを手渡したり、昇進後の賃金の試算表を交付したりするなどして、組合から脱退を慫慂したこと、(2)組合員X1の転勤に際し、Y1総務科長が組合に所属していては異動先について希望がとおらないことを示唆して、組合からの脱退を慫慂したこと、(3)組合員X1に対して、当直助役Y2が自ら加入している申立外組合に加入するよう勧誘したこと、(4)姫路鉄道部の助役の車両科長Y3が組合員X2に対して3回にわたり行った転勤に関する話にからめて組合脱退を慫慂したことが不当労働行為であるとして、争われた事件で、兵庫地労委は、本件申立てを棄却した。 組合らは、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令の一部を変更し、一部救済を命じた。 |
命令主文 |
Ⅰ 初審命令主文を次のとおり変更する。 1 再審査被申立人は、再審査申立人ジェーアール西日本労働組合近畿地方本部の姫路支部加古川鉄道分会の組合員に対し、人事異動における不利益を示唆すること、又は、昇進後における賃金を示して利益誘導することによって、再審査申立人からの脱退を慫慂するなどして、再審査申立人らの運営に支配介入してはならない。 2 再審査被申立人は、再審査申立人らに対し、本件命令受領後、速やかに下記の文書を手交しなければならない。 記 平成 年 月 日
ジェーアール西日本労働組合 中央執行委員長 X3 殿 ジェーアール西日本労働組合近畿地方本部 執行委員長 X4 殿
西日本旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 Y4 当社加古川鉄道部の総務科長が、ジェーアール西日本労働組合近畿地方本部姫路支部加古川鉄道部分会の組合員に対し、平成11年10月20日の昼食の席において、交番担当を外すことや転勤させることを示唆した行為及び同月26日に新たな昇進、賃金制度の下で昇進した場合の賃金試算表を手渡した行為は、中央労働委員会によって、貴組合からの脱退を慫慂する行為であり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。当社は、今後このような行為を繰り返さないようにします。 3 その余の本件救済申立てを棄却する。 Ⅱ その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
2621 個別的示唆・説得・非難等
交番担当として乗務員の点呼等の職務を行うようになった組合員X1に対し、加古川鉄道部助役の総務科長Y1がオリジナルネクタイの着用は組合意識を感じさせるもので好ましくないとの観点からネクタイの交替等を求めたものと認められ、本件事実関係のもとでは同人を組合から脱退させようとしてなされたものとまでは認められないとされた例。
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y1総務科長が組合員X1に対し、交番担当を外すことや転勤させる旨発言したことは、組合から脱退しなければ不利益に扱う旨を示唆したものであり、また、賃金の試算表を手渡した行為は、組合を脱退すれば昇格において有利に扱う旨を暗黙のうちに示唆したもの認められ、これらを一連のものとして考察すれば、X1を組合から脱退させることを企図してなされたものとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
組合員X1に対するY1総務科長の言動は、(1)個人あるいは別組合の組合員としての立場に基づくものとは認められないこと、(2)Y1が人事に関して一定の影響力を与えうる地位にあったことが認められ、従業員もそのように認識していたと推認されること、(3)X1に対する言動の時期がX1の昇格試験の合否発表前であったこと、これらを総合すれば、職務上の地位を利用し、会社の意を体して行ったもので、組合に対する会社の支配介入であるとされた例。
2620 反組合的言動
当直助役Y2が組合員X1に対して申立外西労組に勧誘する際に、その地位を利用して昇進や昇級などを有利に取り扱う旨をほのめかした疎明はなく、また、会社からの指示で脱退慫慂を行ったと認めるに足りる疎明もないから、Y2の言動は支配介入を企図してなされたものというよりも、自ら所属する組合の組合活動としてなされた行為とみるのが相当とされた例。
2621 個別的示唆・説得・非難等
姫路鉄道部の車両科長Y3が組合員X2と3回にわたり転勤に関する話をしているものの、その際にY3が組合に関する発言をしたことについて十分な疎明はなされておらず、組合の主張するような脱退慫慂を行ったことを認定するに足りる具体的な疎明もなく、組合の主張が採用できないとされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2004年11月10日 1034号 13頁 
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