概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道(西労兵庫脱退勧奨) |
事件番号 |
東京高裁平成17(行コ)第314号 |
控訴人 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
被控訴人 |
中央労働委員会 |
被控訴人補助参加人 |
ジェーアール西日本労働組合 JR西日本労働組合神戸地方本部 |
判決年月日 |
平成18年9月14日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が助役らをして、組合員Xに対し、①組合があっせん販売するネクタイをはずすよう別のネクタイを手渡し組合からの脱退を慫慂したこと、②昇進後における賃金を示して利益誘導したり、転勤に関する人事の権限を利用して組合からの脱退を慫慂したことが不当労働行為であるとして、申立てのあった事件である。初審兵庫県労委は救済申立てを棄却し、中労委は利益誘導や転勤に関する人事権を利用して組合からの脱退を慫慂したことを不当労働行為と判断し、初審命令の一部を変更した。会社は東京地裁に行政訴訟を提起し、同地裁は会社の請求を棄却したところ、会社はこれを不服として東京高裁に控訴を提起し、同高裁は、本件控訴を棄却するとの判決を言い渡した。 |
判決主文 |
本件控訴を棄却する。 |
判決の要旨 |
① Y科長がXに対し「組合のことをどう思っている」「君を転職させようと思えばできる」などと発言したことは、組合を脱退しない場合の不利益を示唆したものであり、脱退慫慂に当たることは明らかであること、Y科長が、新人事制度においては、昇職しない限り交番担当になれないX組合員に対して、同人が本件大会において「助役を目指して頑張る」と発表した直後、本件試算表の交付を約束し、昇格試験の合否判定前にわざわざ「誰にも見せるな」と断った上、新人事制度における暫定昇職試験等に合格した場合の資格級を前提に、その賃金を具体的に試算し、これをXに交付していることに照らすと、Y科長には、Xに昇進等に可能性を示唆することで、組合からの脱退を図る意図があったというべきであるとした原判決は相当であるとされた例。
② Y科長は別組合の組合員であったが、特段組合活動をしていたとは認められないこと、Y科長の発言は本件大会に引き続いて行われたものであって、本件試算表の作成は明らかに職務に関連して行われていること、Y科長は組合員資格を有する助役であるが、部長に次ぐ地位である総務科長の職にあり、事実上、人事に関して一定の影響力を与えうる地位にあり、従業員もそのように認識していたこと、他方、組合は、会社と協力的でスト権確立に消極的な別組合を批判して分裂して発足した労働組合であり、その経緯からいっても、会社と組合との間には緊張関係が続き紛争があったこと、以上のような事実を総合すれば、Y科長がXに対して脱退を慫慂するような発言をし、また、本件試算表を交付したのは、会社の意を体して行ったもので、労働組合法7条3号に規定する支配介入に該当するとした原判決は相当であるとされた例。 |