労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  本四海峡バス 
事件番号  中労委 平成12年(不再)第40号 
再審査申立人  本四海峡バス株式会社 
再審査被申立人  全日本港湾労働組合関西地方神戸支部 
命令年月日  平成14年 1月 9日 
命令区分  再審査棄却(初審命令をそのまま維持) 
重要度   
事件概要  会社の従業員のうち運転士及び整備士58名全員が、会社とユニオン・ショップ協定を締結している申立外海員組合を脱退して全港湾に加入したところ、会社が、海員組合から組合員を脱退させた首謀者として除名処分とされたX1ら3名を、ユニオン・ショップ協定に基づく措置要請を受けて解雇したため、全港湾神戸支部から、平成11年8月9日付けで、解雇撤回等の要求を議題とする団体交渉を申し入れられたが、会社がこれに応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、兵庫地労委は、会社に対して、全港湾神戸支部から同11年8月9日付けで申入れのあった解雇撤回要求等を議題とする団体交渉に誠意をもって応じることを命じ、誓約文の掲示に係る救済申立てを棄却した。
 これを不服として会社は再審査の申立てを行ったが、中労委は再審査の申立てを棄却した。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  1000 ユニオン・ショップ
2300 賃金・労働時間
運転士らは、海員組合に対し連名で署名した脱退届を提出したうえで、同日全港湾に加入し、その後、分会を結成して分会役員を選出していること、翌10日に全港湾神戸支部は、会社に対し、分会結成を通告する書面や分会役員ほか分会員全員の名前を記載した書面を送付していることが認められる。さらに、全港湾神戸支部は、分会員である運転士らが各人別に作成した、海員組合の組合費のチェック・オフの中止及び全港湾の組合費のチェック・オフの実施を求める文書を郵送していること、数名の運転士らが全港湾の組合員として全港湾神戸支部の団体交渉申入れに同行していることが認められる。運転士らは、海員組合を脱退し、全港湾に加入して分会を結成し、その分会員として活動していることは明らかであるから、従業員中に全港湾の組合員が存在するとは認められないとの会社の主張は採用できないとされた例。

2111 唯一交渉団体条項
2246 併存団体との関係
運転士等58名は、連名の組合脱退届を海員組合に提出しているのであって、各人が脱退の意思を明確にしたものと認められ、各組合員から組合脱退の意思が組合に対して明確に表示されたと認められる場合には、組合の手続が定める個別の脱退届を提出していないからといって、組合脱退の効力が否定されるものではない。運転士らは、海員組合に連名の脱退届を提出した日に全港湾に加入したのであるから、全港湾への加入手続は適正に行われたものと認められ、会社の主張は採用できないとされた例。

2114 組合の不存在
X1ら3名は、解雇問題について民事訴訟を提起しているが、裁判等の司法手続きと団体交渉とは、労使間の紛争の解決手段として、その目的や機能を異にするものであるから、X1ら3名が民事訴訟を提起することによって、団体交渉を行う実益が失われるものではなく、会社から、全港湾神戸支部らが同問題を団体交渉事項と考えていないとする格別の疎明はなく、この点に関する会社の主張は採用できないとされた例。

1000 ユニオン・ショップ
2301 人事事項
海員組合からユニオン・ショップ協定に基づく措置を要請されたものであっても、同人らの解雇を決定し、通告したのは会社自身であり、同人らの解雇撤回等についても、その対応は会社自身が判断すべき事柄であって、同問題について処分権を有していないとの会社の主張は認められない。したがって、X1ら3名の解雇問題は団体交渉事項には当たらないとの会社の主張は採用できないとされた例。

2111 唯一交渉団体条項
2249 その他使用者の態度
会社は、X1ら3名の解雇問題以外の団体交渉事項については既に団体交渉が行われているなどと主張しているが、初審命令交付後においても会社が団体交渉に応じた事実は認められず、また、会社と全港湾神戸支部との折衝についてみると、会社は、その折衝においても問題解決の当事者能力がない旨発言しているほか、全港湾神戸支部と一定の合意形成に向けて協議がなされたと認めるに足りる格別の疎明はなく、団体交渉開催のための事務折衝の域を出ないものといわざるを得ない。会社が上記折衝を団体交渉と認識していたとは解しがたく、また、平成12年8月29日付け回答メモ等によれば、会社が、従業員中に全港湾の組合員の存在を認めていないことは明らかであり、このような姿勢で臨んでいる折衝を団体交渉と認めることは到底できないとされた例。

2400 その他
会社は、X1ら3名の解雇問題を交渉事項に含む8.9団交申入れについて正当な理由なく拒否しているのであるから、これを労働組合法第七条第二号に該当する不当労働行為であると判断した初審命令は相当であるとされた例。

業種・規模  道路旅客運送業(バス専業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集122集852頁 
評釈等情報  中央労働時報 2002年4月10日 997号 16頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地裁 平成14年(行ク)第96号 全部認容  平成15年 1月15日 決定 
東京地裁 平成14年(行ウ)第68号 請求の棄却  平成15年 1月15日 判決 
東京高裁 平成15年(行コ)第94号 控訴の棄却  平成15年 8月20日 判決 
最高裁 平成15年(行ツ)第289号
最高裁 平成15年(行ヒ)第308号
上告棄却・上告不受理  平成16年 2月26日 判決 
 
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