事件名 |
東海旅客鉄道(東京運転所 第二脱退勧奨) |
事件番号 |
中労委 平成 7年(不再)第47号
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再審査被申立人 |
東海旅客鉄道株式会社 |
命令年月日 |
平成13年12月13日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
会社の新幹線鉄道事業本部東京運転所の現場長や助役が、①申立人組
合の結成直前頃、当時の会社内における単一組合であった別組合の組合員らに対し、組合の結成に加わらず、別組合にとどまるよ
う勧奨して組合結成に対して支配介入したこと、②組合の結成直後頃、組合員に対し、脱退勧奨したり、会社が組合からの脱退工
作を行うことを容認するよう働きかけたりして組合の運営に支配介入したことが争われた事件で、①脱退勧奨による支配介入の禁
止、②文書掲示を命じ、その余の申し立てを棄却した。 |
命令主文 |
主 文
初審命令を次のとおり変更する。
1 再審査被申立人は、再審査申立人のジェイアール東海労働組合新幹線地方本
部東京第一運輸所分会及び同東京第二運輸所分会の組合員に対し、再審査申立
人からの脱退勧奨を行うことにより、同組合の運営に支配介入してはならない
。
2 再審査被申立人は、本命令交付後速やかに、会社の本社正面玄関、新幹線鉄
道事業本部、東京第一運輸所及び東京第二運輸所の従業員の見やすい場所に、
縦50センチメートル、横80センチメートルの白紙に、下記の内容を楷書で
明瞭に墨書した文書を10日間掲示しなければならない。
記
年 月 日
ジェイアール東海労働組合
中央執行委員長 X1 殿
東海旅客鉄道株式会社
代表取締役社長 Y1
当会社新幹線鉄道事業本部東京運転所の科長が、ジェイアール東海労働組合
の組合員に対し、平成3年8月19日に組合員に対する会社の働き掛けを容認
するよう求め、同月22日に組合からの脱退を勧奨したことは、中央労働委員
会によって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定さ
れましたので、今後このような行為を繰り返さないようにします。
3 再審査申立人のその余の本件救済申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
組合員に対するY2科長の発言は内容及び東京運転所における科長の地位から、東海労組の組合員としての立場を超え、管理職と
しての立場においてした発言との性格を有し、JR東海労の運営に対する支配介入に当たり、労組法第7条第3号に該当する不当
労働行為であるとされた例。
2624 組合人事への干渉
東京運転所の科長らが分会員らの自宅へかけた電話は、会社の指示を受け、会社に意を受けてかけられたことを認める疎明がな
く、いずれの通話も具体的な状況や内容が不明であり、また、これらの電話が、会社の指示を受け、又は会社の意を受けてかけら
れたことを認めるに足る疎明はなく、科長らが、東海労組の組合員であるとともに管理職であるとしても、JR東海労の結成を妨
害する行為とはいえないことから、同組合に対して支配介入する不当労働行為にはあたらないとされた例。
3410 職制上の地位にある者の言動
東海労組の組合員であるY2科長の組合員X1に対する発言には、組合の分裂の動きに対する分会員の対応の在り方と、分会員の
研修参加等とが関連付けた形で述べられたという証拠がない以上、分会員に対して利益誘導によりJR東海労の結成に参加しない
よう動きかけたものということはできず、利益誘導によるJR東海労の結成の妨害にあたらないとされた例。
3410 職制上の地位にある者の言動
組合員X2及びX3に対するY2科長の発言は、会社の指示を受け、又は会社の意を受けてかけられたことを認める疎明はないも
のの、電話がなされるまでの経緯や内容からして、仮に、東海労組の組合員としての立場におうてしたという場面があるとして
も、管理職としての立場においてした発言としての、性格を有するものというべきであり、また、人事上の措置にまで触れている
こと等から東海労組の組合員としての立場を超えて、管理職としての立場においてした発言としての性格を有するもので、JR東
海労からの脱退を勧奨するものであって、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。
4613 P.Nのみを命じ、他の救済の必要性を認めなかった例
組合の会議室の使用申し込みにたいして、会社がJR東海労の結成を目指す組合員らが同会議室を使用するのを妨害する目的で、
意図的に組合の会議室使用申込み期間にその会議室を使用した相談室を開設したとみるべき疎明がないことから、会社がJR東海
労の結成のたけの活動を妨害する意図で相談室を開設し、同組合の結成に対して支配介入したとは認められないとされた例。
3411 その他の従業員の言動
「東京の運転所・車両所を明るい職場にしよう!そしてJR東海を守ろう!」等の文書の差出人である科長や助役らが、東海労組
合員としての立場から、A派とB派の対立が激化する状況の中で、自分たちの組合である東海労組の従来からの路線を支持し、組
合分裂の回避を訴え、組合員の離脱を阻止しようとする内容のものとなっており、組合員としての立場を超えて、管理職としての
立場においてする呼び掛けや要請であるとみるべき内容が認められず、また、これらの文書の郵送が会社の指示を受け、会社の意
を受けてされたものであると認めるに足る疎明がないことから、科長や助役らによる文書の郵送が、会社の不当労働行為であると
は認められないとされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集121集749頁 |
評釈等情報 |
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