労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東海旅客鉄道(東京運転所第二脱退勧奨)
事件番号  最高裁平成16(行ヒ)50号
上告人補助参加人 ジェイアール東海労働組合
被上告人 東海旅客鉄道株式会社
判決年月日  平成18年12月8日
判決区分  破棄差戻
重要度   
事件概要   本件は、東海旅客鉄道株式会社の新幹線鉄道事業本部の東京運転所の助役が、①ジェイアール東海労働組合の結成を妨害したこと、②結成後に分会の組合員に対し脱退勧奨を行ったことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
 初審愛知県労委は、申立てを棄却したが、中労委は、組合員に対する脱退勧奨については不当労働行為であるとして、会社に対し、支配介入の禁止及び文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起した。同地裁が、会社の請求を棄却したところ、会社はこれを不服として、東京高裁に控訴を提起した。同高裁は、分会員に対する助役の発言を、会社の意向を受けて脱退勧奨を行ったと中労委が認定したのは事実誤認であるとして、中労委命令の救済部分を取り消す旨の判決を言い渡した。
 中労委は、これを不服として、最高裁に上告受理申立てを提起したところ、最高裁は、原判決を破棄し、本件を東京高裁に差し戻した。
判決主文  原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
判決要旨  ① 労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して労働組合に対する支配介入を行った場合には、使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも、当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができるとされた例。
② ①東京運転所の助役は、科長を含めて、組合員資格を有し、使用者の利益代表者とはされていないが、現場長である所長を補佐する立場にある者であり、特に科長は、各科に所属する助役の中の責任者として他の助役の業務をとりまとめ、必要に応じて他の助役に指示を与える業務を行っていたのであるから、Y科長は、使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にあったということができること、②別組合から脱退した者らが組合を結成し、両者が対立する状況において、会社は労使協調路線を維持しようとする別組合に対して好意的であったところ、Y科長による組合員に対する働きかけがされた時期は、上記の組合分裂が起きた直後であり、右働きかけが別組合の組合活動として行われた側面は否定できないとしても、Y科長の本件各発言には、「会社が当たることにとやかく言わないでくれ」「会社による誘導をのんでくれ」「もしそういうことだったら、あなたは本当に職場にいられなくなるよ」など、会社の意向に沿って上司としての立場からされた発言と見ざるを得ないものが含まれていることの事情の下おいては、Y科長の本件各発言は、別組合の組合員としての発言であるとか、相手方との個人的な関係からの発言であることが明らかであるなどの特段の事情のない限り、会社の意を体してされたものと認めるのが相当であり、会社の不当労働行為と評価することができるとされた例。
③ 右②の特段の事情が存在することについて首肯すべき説示をすることなく、本件各発言をもって会社の不当労働行為であると認めることはできないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決は破棄を免れえず、右「特段の事情」の存否について審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すのが相当であるとされた例。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
愛知県労委平成3年(不)第5号 棄却 平成7年10月23日
中労委平成7年(不再)第47号 一部変更 平成13年12月13日
東京地裁平成14年(行ウ)第46号 棄却 平成15年1月20日
東京高裁平成15年(行コ)第37号 全部取消 平成15年11月6日
東京高裁平成18年(行コ)第326号 棄却 平成19年10月25日
最高裁平成20年(行ツ)第36号、平成20年(行ヒ)第36号 上告棄却・不受理 平成20年3月18日
 
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