事件名 |
東海旅客鉄道(東京運転所第二脱退勧奨) |
事件番号 |
東京高裁平成15年(行コ)第37号
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控訴人 |
東海旅客鉄道株式会社 |
被控訴人 |
中央労働委員会 |
被控訴人参加人 |
ジェイアール東海労働組合 |
判決年月日 |
平成15年11月 6日 |
判決区分 |
一審判決の全部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社の新幹線鉄道事業本部の東京運転所の助役が、(1)
ジェイアール東海労働組合の結成を妨害したこと、(2)結成後に東京運転所分会所属の組合員に対し脱退するよう勧奨したこと
が、それぞれ不当労働行為であるとして争われた事件である。
愛知地労委は、組合の救済申立てを棄却したところ、中労委は初審命令を変更し、組合員に対する脱退勧奨については不当労働
行為であるとして支配介入の禁止及び文書掲示を命じ、その余の救済申立てを棄却した。会社は、これを不服として行政訴訟を提
起したが、東京地裁は、請求を棄却した。会社は、これを不服として、東京高裁に控訴を提起したが、同高裁は、分会員に対する
助役の発言を、会社の意向を受けて脱退勧奨を行ったと中労委が認定したのは事実誤認であるとして、中労委の救済命令を取り消
した。 |
判決主文 |
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が中労委平成7年(不再)第47号事件につき平成13年12月13日付けでした命令のうち、主文第1項及び第2
項を取り消す。
3 訴訟費用は、第1、2審とも、補助参加によって生じた費用は補助参加人の負担とし、その余は被控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
2625 非組合員化の言動
3410 職制上の地位にある者の言動
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
Y1科長のX1に対する酒屋における「何とかフィフティー・フィフティーにならないものか。」「会社があたることをとやかく
言わないでくれ。」等の発言は労使協調路線をとるY1科長が所属する別組合の組合員としてその拡大に努めたものであって、結
果的にその方向性が会社のものと符合していただけと認めるのが相当であり、また、Y1科長の地位を考慮しても、結果として発
言内容が会社の意向に適うところがあるからといって会社の意向を受けたものとは認められず、仮に、Y1科長が多少会社の威を
借りる形で人事制裁的な発言をしたとしても、それだけで直ちに会社の意向を受けた行為であるとまではいえず、同発言は支配介
入行為とはいえないとされた例。
2625 非組合員化の言動
3410 職制上の地位にある者の言動
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
Y1科長のX2に対する、労使協調で会社も良くなってきているのでそれをだめにするようなことは残念だなどとして、「これか
らは若くて優秀な人に職場で頑張ってほしい」「よい返事を待っています」等の発言は、Y1科長が自己の所属する別組合の組合
員数をできるだけ多くしたいと考えて行動したとみるのが自然かつ合理的であって、Y1科長の立場を考慮しても、会社の意向を
受けたものであると推認できず、支配介入行為とはいえないとされた例。
2625 非組合員化の言動
3410 職制上の地位にある者の言動
6341 事実認定の誤り
Y1科長のX3に対する「このままだったら見えない差がついてくるよ。」「早く抜けるのと遅く抜けるのとでは差がつくよ。」
等とする発言については、これを認めるに足る証拠はないとされた例。
2625 非組合員化の言動
3410 職制上の地位にある者の言動
6341 事実認定の誤り
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
上記によれば、会社が、労使協調路線をとっていた別組合に好意的で、これと連携する状況にあり、支配介入の動機があったこと
は窺わせるものの、中労委が本件救済命令において、Y1科長の組合員に対する発言を会社の意向を受けてしたものと認定したの
は事実誤認であり、Y1課長のX3に対する言動も認められず、全体として失当であるから、中労委命令の救済部分を取り消すこ
ととするとされた例
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2004年3月10日 1023号 46頁
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