労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  西日本旅客鉄道(西労広島脱退勧奨等) 
事件番号  広島地労委 平成 9年(不)第1号 
申立人  ジェーアール西日本労働組合 
申立人  ジェーアール西日本労働組合広島地方本部 
被申立人  西日本旅客鉄道株式会社 
命令年月日  平成13年 2月14日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含 む) 
重要度   
事件概要  会社が、①組合の一部の組合員をして広島運転士会を結成させた上 で、組合員から組合員を脱退させた一部の組合員を同会に、一部の組合員を別組合に加入させようとしたこと、②組合の可部鉄道 部分会及び広島運転所分会において組合掲示物の撤去要請又は撤去したこと、③組織破壊攻撃に対する反撃の中心となって活動し ていた地方本部役員3人に対し、関連会社に出向させる旨の通知を行ったことが争われた事件で、①脱退慫慂による支配介入の禁 止、②組合掲示物の撤去又は撤去要請による組合活動妨害の禁止、③文書交付を命じ、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人ジェーアール西日本労働組合広島地方本部所 属の組合員
 に対して、同組合広島地方本部からの脱退を慫慂して、同組合広島地方本部の
 運営に支配介入してはならない。
2 被申立人は、申立人ジェーアール西日本労働組合広島地方本部の可部鉄道部
 分会及び広島運転所分会掲示板の掲示物を、正当な理由なく、撤去要請し、又
 は撤去して同組合広島地方本部の組合活動を妨害してはならない。
3 被申立人は、本命令交付後、速やかに申立人ジェーアール西日本労働組合及
 び同組合広島地方本部に対して、下記の文書を交付しなければならない。

                 記
 当社が行った次の行為は、広島県地方労働委員会において不当労働行為である
と認定されました。
 今後は、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1) 当社が、貴組合広島地方本部の徳山地域鉄道部分会X1組合員、X2組
  合員及びX3組合員並びに可部鉄道部分会X4組合員に対して、貴組合から
  の脱退を慫慂したこと。
(2) 当社が、正当な理由なく、貴組合広島地方本部可部鉄道部分会掲示板の
  掲示物を撤去要請し、及び貴組合広島地方本部広島運転所分会掲示板の掲示
  物を撤去したこと。
(3) 当社が、貴組合広島地方本部可部鉄道部分会X5組合員に対して平成9年
  2月24日付けで株式会社ジェイアール西日本リーテックスへ出向発令を行
  ったこと。

平成  年  月  日

ジェイアール西日本労働組合
 中央執行委員長 X6 殿
ジェイアール西日本労働組合広島地方本部
 執行委員長 X7殿
                      西日本旅客鉄道株式会社
                       代表取締役社長 Y1 印

4 申立人のその余の申立は、棄却する。 
判定の要旨  2620 反組合的言動
地本の組織部長であるX5に対する出向命令は、他の社員の差替出向として行われたもので業務上の必要性が認められるが、人選 については、選考基準の変更が突然なされており合理性を欠くこと、当時、地本から脱退者が相次いだ時期の組織部長の職にあ り、このような時期に出向させれば、本人に組合活動上の不利益が生じるばかりか、地本の組織運営に支障をきたすこととなるこ とは十分予測できることを総合すると、本件出向命令は労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされ た例。

2610 職制上の地位にある者の言動
X7に対する出向命令は、他社員の差替出向として行われたものであり、業務上の必要性が認められ、人選についても組合員の家 庭事情は出向に伴う通常甘受すべき範囲内の負担で、やむを得ないことであり、また、本件出向によって組合活動に支障を受ける ものと認められないこと等から不当労働行為に当たらないとされた例。

2621 個別的示唆・説得・非難等
X6に対する出向命令は、他社員の差替出向として行われたものであり、業務上の必要性が認められ、人選についても組合員の個 人的事情は通常甘受すべき範囲内のものであり、また、本件出向当時、広転分会の書記長であったが、分会の組合活動支障を洗え るものである等の疎明がなされないことから、不当労働行為に当たらないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
申立人が提出したすべての証拠を検討しても、会社が広島運転士会を結成させた上で、組合員を組合から脱退させ、同会へ加入さ せようとして地本の分裂を策したとは認められないないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
料理屋「すみ吉」での所長の「西労は百害あって一利なし、そう思っている」等の発言は、組合に対する敵意をあらわにし、組合 からの脱退の意思決定に重大な影響を与えることは明らかであり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされ た例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y6部長らが組合員らに対し、自宅で個人面談行うことは異例であり、あえて自宅で一対一で面談を行ったことは、何らかの意図 をもってなされたと疑われても仕方のない行為であり、その際の「西労にいても何一つ良いことはないだろう。」等の発言は、組 合員を組合から脱退させるよう勧誘したものと認められ、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社が、組合掲示物の撤去を要請し、撤去した掲示物のうち、可部分会における掲示物は、個人面談の際の他組合への加入勧誘に 抗議したものであり、多少過激な表現が用いられることがあっても地本の言論活動として是認し得るものであり、設置場所も会社 関係者以外の一般公衆の目に触れる機械はなく、会社の対外的信用を傷つけるものでなく、むしろ、総務課長等による掲示物撤去 要請は執拗で、分会長に反省文・謝罪文の作成とその掲示を求めたものであり、また、広転分会における掲示物は、地本の臨時地 本委員会の報告記事であり、そこに両名の個人名が記載されていたとしても個人を誹謗しているとまでいえず、掲示場所も乗務員 分所のロッカー室内に設置された掲示板で、会社の対外的信用を傷つけるとまではいえず、運転科長が組合の了解を得ないで一方 的に撤去していることから、これら掲示物について、会社が掲示物を正当な理由なく、撤去要請し又は撤去した行為は、組合活動 を妨害する目的でなされた労働組合法第7条だい3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集119集315頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委 平成13 年(不再)第10号 棄却 平成15年3月13日
東京地裁 平成 15年(行ウ)第269号 請求の棄却 平成16年4月19日
東京高裁 平成 16年(行コ)第182号 棄却 平成16年12月8日
最高裁平成17年 (行ツ)第84号
最高裁平成17年(行ヒ)第87号
上告棄却、上告不受理 平成18年8月30日
 
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