労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  西日本旅客鉄道(西労広島脱退勧奨等) 
事件番号  東京地裁平成15年(行ウ)第269号 
原告  西日本旅客鉄道株式会社 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  ジェーアール西日本労働組合 
被告参加人  ジェーアール西日本労働組合広島地方本部 
判決年月日  平成16年 4月19日 
判決区分  請求の棄却 
重要度   
事件概要  会社がジェーアール西日本労働組合(西労)及び西労広島地方本部所 属の組合員に対し、西労からの脱退を慫慂したこと、組合掲示板の掲示物を正当な理由なく撤去要請し、又は撤去したこと、及び 組合員に対し、出向命令を行なったことがそれぞれ不当労働行為であるとして争われた事件で、広島地労委は、会社に対し脱退慫 慂による支配介入の禁止、組合掲示物の撤去又は撤去要請による組合活動妨害の禁止及び文書交付を命じ、その余の申立てを棄却 したところ、会社はこれを不服として中労委に再審査申立てを行ない、中労委は初審命令を維持したところ、会社はこれを不服と して東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。
判決の要旨  2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2700 威嚇・暴力行為
3410 職制上の地位にある者の言動
Y1所長の料理屋における発言については、別組合結成の動きが明らかになり、同組合の勧誘活動等により組合からの脱退者が相 次ぎ、広島地本が広島支社に対し、「現場監督者が、組合を脱退して別組合へ加入するよう呼びかけるなど、組合へ公然と介入し てきている」旨の抗議を行っていた状況下において、Y1所長が「組合は必ずつぶす、この流れは組合が0になるまで続く、よく 考えることだ、悪いようにはせん」、「会社にドスを向けている者に甘い物はやらん」など、組合にとどまれば不利益を被ること などを仄めかすものであって、現場長がX1組合員ら3名に対し人事上の措置を仄めかすなどして組合からの脱退を働きかけたも のとして、組合の組織運営に対する支配介入に当たるといわざるを得ず、また、Y1所長の会社における地位等に照らすと、Y1 所長の右発言が会社の意を体して行われたものであることは明らかであるから、会社に帰責させることができ、不当労働行為にな るとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2625 非組合員化の言動
3410 職制上の地位にある者の言動
Y2部長の個人面談における発言については、Y2部長は、本件面談が行われた日は年休をとっており、X2組合員との面談は予 定していなかったにもかかわらず、広島支社の課長から「組合が分裂して新しい組織ができるとの噂があるので、現場規律に気を 付けるように」との指示があったと報告を受けた直後に本件面談を行っていること、日頃挨拶程度の言葉しか交わしたことのない X2組合員と個人面談をわざわざ自宅で行っていることなどを考慮すると、単なる出向に関する話をするだけの面談としては不自 然であるといわざるを得ないこと、Y2部長の「組合にいても会社は話をしてはくれないが、この会は会社も話をしてくれる」、 「組合にいても何一つ良いことはないだろう。同じ仕事をしているのだから一円でも多く給与をもらいたいだろう」などの発言 は、会社が組合を他組織と同等に扱っておらず、組合に所属することは不利であり、組合を脱退すれば給与において利益を受ける ことなどを仄めかすものであって、管理職である現場長がX2組合員に対し、会社の職制の立場を利用し、人事上の措置を仄めか すなどして組合から脱退を働きかけたものということができることからすると、Y2部長の本件発言は、組合の組織運営に対する 支配介入に当たるというべきであり、また、Y2部長は非組合員で会社の管理者の地位にあること等に照らすと、Y2部長の発言 は、会社の意を体して行われたものであることは明らかであるから、会社に帰責させることができ、不当労働行為になるとされた 例。

0200 宣伝活動
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2700 威嚇・暴力行為
3410 職制上の地位にある者の言動
総務科長らによる分会掲示板の掲示物の撤去要請については、組合可部分会の本件文書は、会社の面談者が広域出向に関する個人 面談の際、組合所属の組合員に対して脱退慫慂を行ったこと等を内容とするもので、当時、可部鉄道部においてY2部長が個人面 談の際に同分会執行委員であるX2組合員に対し脱退慫慂を行ったことは事実であり、加えて、本件文書は一般の者や勤務箇所に 関係のない会社社員が出入りすることのない場所に設置されている掲示板に掲示されていたこと、交代制勤務のため組合員が一同 に会することが非常に困難である同分会では、掲示板を利用する情報宣伝活動が極めて重要な役割を担っていること、現に個人面 談が行われている状況であったことからすれば、組織防衛の観点からこの事実を緊急に組合員に伝える必要性が高かったこと等の 事情が認められ、これらの事情を考慮すると、「出向の脅しをかけ」、「恫喝をかけている」などといった不適切な言葉が使用さ れていることを勘案したとしても、Y3助役が同分会に無断で掲示物をはがしコピーをとったことのほか、Y4総務科長あるい は、Y5運輸科長が、X2分会長に対し、「事実に反する」又は「内容に誤りがある」として、乗務途中の同人に電話で掲示物を 外すよう注意するなど、執拗に撤去要請を行い、掲示物の内容が誤りであったことについて反省文や謝罪文を作成して掲示するよ う求めたのは、行き過ぎた措置であったといわざるを得ず、Y5運輸科長、Y4総務科長らが行った撤去要請は同分会の正当な組 合活動に対する支配介入に当たるとされた例。

0200 宣伝活動
3106 その他の行為
Y6運転科長らによる分会掲示板の掲示物の撤去要請については、組合広転分会の掲示物には、個人名をあげた上で「会社により わずかばかりのおこぼれもらい」など必ずしも適切ではない記載が見受けられるが、Y1所長及びY2部長が組合所属の組合員に 対し脱退慫慂を行っていた時期に掲示されたこと、掲示物を目にすることができる者は広島運転所に勤務する社員にほぼ限られて いたこと、Y6運転科長は、本件掲示物が個人名を出して誹謗しているとして一度の撤去要請をもって一方的にこれを撤去してい ることのほか、組合広転分会が個人名を塗りつぶして再掲示をするたびに無修正の個人名があることを理由に撤去要請も行わずに 再三にわたり撤去を繰り返し、かつ掲示物を撤去したことを同分会に伝えてないというのは行き過ぎた措置であったといわざるを 得ず、Y6運転科長らが行った掲示物の撤去は同分会の正当な組合活動に対する支配介入に当たるとされた例。

0200 宣伝活動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3106 その他の行為
3410 職制上の地位にある者の言動
Y4総務科長、Y5運輸科長及びY6運転科長が行った可部分会及び広転分会の掲示物撤去要請及び撤去は、会社の意を体して行 われたこと、当時、広島支社管内において、Y1所長及びY2部長が同組合所属の組合員に対して脱退を慫慂していた等の事情を も併せ考慮すると、Y4総務科長、Y5運転科長及びY6運転科長の右記行為は会社の意を体し、両分会の勢力を弱めることを目 的として行ったもので、会社の不当労働行為に当たるとされた例。

1301 出向
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
組合員X3に対する出向命令については、同人は、本件出向当時組合広島地本の組織部長として組合組織の強化防衛、分会指導な どの組織問題を中心に担当していたこと、広島運転士会結成の動きが表面化した平成9年月の時期に、他分会では組合からの脱退 者が相次いでいたところ、組合員X3がかつて分会長を務め、自らも所属していた可部分会においては、脱退する組合員がいな かったことからすると、X3組合員をこのような時期に出向させれば、X3組合員が組織部長としての責任を果たせなくなり、組 合活動上の不利益が生じるばかりか、可部分会ひいては広島地本の組織運営に支障を来たすものというべきであり、本件出向には 人選の合理性が認められないことをも併せて考慮すると、X3組合員の組合活動を理由として差別的に行われたものであると推認 するのが相当であり、労働組合法7条第1項の不利益取扱いに当たるというべきであり、また、判示事項1ないし同4等の当時の 会社と可部分会との間の状況を併せて考慮すると、組合の組織運営に対する支配介入に当たるとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献   
評釈等情報  中央労働時報 2004年12月10日 1035号 48頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
広島地労委平成9 年(不)第1号 一部救済 平成13年2月14日
中労委平成13年 (不再)第10号 棄却 平成15年3月13日
東京高裁平成16 年(行コ)第182号 棄却 平成16年12月8日
最高裁平成17年 (行ツ)第84号
最高裁平成17年(行ヒ)第87号
上告棄却、上告不受理 平成18年8月30日