事件名 |
岩井金属工業 |
事件番号 |
中労委 平成 8年(不再)第17号
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再審査申立人 |
岩井金属工業株式会社 |
再審査被申立人 |
岩井金属労働組合 |
命令年月日 |
平成11年 5月12日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)組合の青年部長を解雇したこと、(2)副委員長及び
書記長を配置転換したこと、(3)「退職お願い」と題する書面に従業員の署名を集め組合員に手交したこと、(4)組合員の寮
生に退寮を求めるなどをしたこと、(5)一時金、賃上げについて組合員を差別したことが不当労働行為であるとして、申立がな
されたもの。その後組合員のうち2名の退職並びに上記(1)(2)の解雇撤回及び原職復帰がなされたことにより、これらの部
分に関する申立は取り下げられ、大阪地労委は賃金に関する部分についてその是正と差額支払いを命じるとともに、(1)ないし
(4)について文書掲示を命じたところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。なお、会社は、組合員のうち1名につい
ては再審査申立中に和解が成立したため、当該部分について取り下げた。
中央労働委員会は取り下げられた1名を除き、初審命令主文の賃金部分について変更し、組合員の平成2年度年末一時金、同3
年度夏季一時金及び同年度賃上額を組合員の平均が非組合員の平均と等しくなるよう是正を求めるとともに、文書掲示については
再審査申立を棄却した。(初審命令は組合員の是正後の金額を明示し、差額支払いを求めた。) |
命令主文 |
I 初審命令主文第一項のうち、X1に関する部分を除く部分を次の
とおり
変更する。
1 再審査申立人は、再審査被申立人組合員X2、X3、X4、
X5に対し、平成2年年末一時金及び同3年夏季一時金並びに同年度賃上げ
額(X4については、同2年年末一時金のみ。)を、それぞれ、既支払済額
を下回ることなく、組合員の平均が再審査申立人の班長以下の現場男子従業員の
うち非組合員の平均と等しくなるよう是正し、是正後の額と既支払済額との差額
及びこれに年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
II その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1202 考課査定による差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
「勤怠歩引」について、副社長は「基準はない」、「勘でやっている」旨の証言をし、欠勤、遅刻、早退の多い者の方が査定率が
良くなっていることからすれば、査定がおこなわれていること自体が疑問であり、仮に何らかの査定があったとしても公平に行わ
れたという疎明はなく、組合員と非組合員との賃金の差異は組合を敵対視し、組合を壊滅ないし弱体化させる意図の下に組合員を
差別したものであるとされた例。
0700 職場規律違反
1102 業務命令違反
1107 その他
従業員集会において青年部長が社長に対し、「不当だ」「あんまりおかしいんではないですか」と発言したことは穏当を欠くとし
ても解雇の理由となるような秩序違反にはあたらない。また青年部長がプレスのペンキを剥がす過程で「団結」の文字を浮かび上
がらせたことは、行き過ぎだった面はあるが、会社と組合との関係を考慮すれば、これを解雇の理由とすることは適当でない。さ
らに、青年部長が会社食堂に、無断で組合ニュースを貼りだしたことは社長が「組合ニュースも食堂にすべて掲示していく」と発
言し、以後食堂に会社によって組合ニュースが貼り出されていた状況でおこなわれたもので、責められなければならない非違行為
とはいえないとして解雇理由を否定した例。
1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
副委員長、書記長の配転はいままでに例の無いような配転であり、会社は本件配転について、合理性、必要性について明らかにし
ていないし、かつ配転により仕事上も組合活動上も不利益を受けていることは明らかであり、組合員であることを理由に不利益に
取り扱い、組合の運営に支配介入しようとしたものであるとした例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2人の係長によって行われた「退職お願い文書」の署名徴集行為は当時の労使関係の状況等からみれば、少なくとも、2人の係長
が会社の意を体して行ったと認められ、組合の運営に体する支配介入に当たるとされた例。
1601 福利厚生上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3020 組合活動への制約
組合員2名に、会社は退寮を求める必要がないのに退寮を求め、これに応じないとみるや、両名を退寮に追い込むため様々な圧力
をかけたものであり、当時の労使関係を考慮すると、寮で組合活動が行われていると考えた会社が組合の組合活動に打撃を与える
ことを目的とした行為であって、組合員に対する不利益取り扱いと組合の運営に対する支配介入に当たるとされた例。
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
年末一時金、夏季一時金、及び賃上げ額について、既支払額を下回ることなく、組合員の平均と非組合員の平均が等しくなるよう
是正し、差額の支払いと、差額に対して年率5分の付加を命じた例。
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業種・規模 |
金属製品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集114集482頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 1999年8月 956号 13頁
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