事件名 |
岩井金属工業 |
事件番号 |
東京高裁平成13年(行コ)第241号
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控訴人 |
岩井金属工業株式会社 |
被控訴人 |
中央労働委員会 |
被控訴人参加人 |
岩井金属労働組合 |
判決年月日 |
平成14年 3月26日 |
判決区分 |
控訴の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が組合員らの平成2年年末一時金及び平成3年夏季一時金の各支給額並びに平成3年度賃上げ額について差別があったとする申立てにより発せられた大阪地労委の救済命令に対し、会社は再審査申立てを行ったところ、中労委は初審命令を一部変更し、組合員への支給額の平均が非組合員の平均と等しくなるよう是正し、是正後の額と既支払額との差額及びこれに年率5分を乗じた額の支払いを命じた。会社はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は会社の申立を棄却した。会社は東京高裁に控訴したが、同高裁は会社の控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1202 考課査定による差別
会社は組合の活動に対して極めて強硬な姿勢をとり、同組合を弱体化させる意図のもとに不当労働行為を繰り返してきたものと認められ、組合員に対する一時金及び昇給額が従業員平均や非組合員平均より明らかに低く抑えられている一方で、組合員の勤務成績が特に劣っていたことを窺わせる事情は何ら存しないことを考え併せると、一連の不当労働行為と同様に、組合の活動を弱体化させる意図のもとに、組合員の一時金支給及び賃上げを差別し、不当に低くしたものであり、これが不当労働行為にあたることは明らかである。
4415 賃金是正を命じた例
本件命令は、一時金及び賃上げについて、組合員平均が既支払額を下回ることなく非組合員と等しくなるように是正し、是正後の額と既支払額との差額及びこれに年率5分を乗じた額の支払いを命じたものであって、具体的な支給額までは明示されていないものの、組合員の各勤怠状況を考慮した上でその金額を容易に算定しうるものであって、不合理とはいえず、明確性を欠くものともいえない。
4415 賃金是正を命じた例
組合員が会社に対して賃金請求をしていないことから、会社は、権利を行使できるときから2年を経過したとして、消滅時効の援用をするが、労組法二七条の救済制度は、労働者の団結権及び団体行動権の保護を目的とし、これらの権利を侵害する使用者の一定の行為を禁止した同法七条の規定の実効性を担保するために設けられたものであり、私法上の賃金債権の消滅時効の期間が経過したことをもって、不当労働行為によって生じた状態を是正する必要がなくなったとはいえないから、本件命令が不適法となるとはいえない。
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業種・規模 |
金属製品製造業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集37集163頁 |
評釈等情報 |
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