事件名 |
岩井金属工業 |
事件番号 |
東京地裁平成11年(行ウ)第157号
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原告 |
岩井金属工業株式会社 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
岩井金属労働組合 |
判決年月日 |
平成13年 9月26日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、組合青年部長を解雇したこと、組合副執行委員長及
び書記長を配置転換したこと、「退職お願い」と題する書面に従業員の署名を集め、組合員に手交したこと、組合員2名に対して
社員寮からの退寮を求めるなどしたこと、平成2年年末一時金、平成3年夏季一時金、平成3年度賃上げについて、組合員を差別
したことが、それぞれ不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
初審大阪地労委は、会社に、平成2年年末一時金、平成3年夏季一時金、平成3年度賃上げの額をそれぞれ是正し、既支給額と
の差額を組合員に支払うこと、賃金関係を除く事項の文書手交及び掲示を命じたところ、会社から再審査申立てがなされ、中労委
は、初審命令を一部変更し、その余の申立てを棄却した。
会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、原告の請求を棄却するとの判決を言い渡し
た。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じたものも含め、原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合の青年部長に対する解雇は、会社が組合を嫌悪し、敵視する発言を繰り返し、これに呼応する形で係長らが取締役の指示の下
に従業員から組合脱退の署名を集めたり、青年部長から班長としての職務を取り上げる等の行為をし、さらに、組合掲示板や組合
事務所の一方的撤去又は破壊という組合活動への妨害行為を繰り返していたことからすれば、会社が組合を嫌悪し、組合員である
こと、又は、組合活動を理由として同青年部長を不利益に取扱うものであるとともに、組合の運営に対し支配介入したものであ
り、労組法七条一号及び三号に該当する不当労働行為に当たるとされた例。
2620 反組合的言動
会社が入寮者に対して退去を求め、寮を解体するという一連の行為がなされた前後の会社役員や次長、係長といった職制の発言内
容に加え、社長を始めとする会社側の言動や組合事務所の撤去されたことを併せ考えると、会社が入寮者に対して退去を求めたこ
とは、入寮者である組合員の部屋等で組合活動が行われていると考え、これを阻止するため、寮への部外者の立入禁止、退寮要求
等の言動をとったことは明らかであり、このような会社の行為は、組合の組合活動を理由として、組合員に対し不利益な取扱いを
するものであり、組合の運営に支配介入する労組法七条一号及び三号に該当する不当労働行為に当たるとされた例。
2620 反組合的言動
会社の組合及び組合員に対する敵対的言動を併せ考えると、会社の係長らが従業員に対して「退職お願い」への署名の徴収を行っ
たことは、係長らの独断によるものではなく、会社が組合員を退職させ、組合の組織を壊滅させることを目的として組織的に行っ
たものと容易に推認でき、このような行為は、組合の弱体化を図るものであり、労組法七条三号に該当する不当労働行為に当たる
とされた例。
1300 転勤・配転
会社が行った副委員長及び書記長に対する職務変更を伴う本件配転は、本件配転について合理的な理由を認めるに足る証拠がない
こと、また、会社の組合及び組合員に対する言動を併せ考えると、組合の組合員の過半数が所属していた第一機械部門から副委員
長と書記長を、それぞれ別の部門に異動させることにより、組合員を分断し、組合の弱体化を図るものであると同時に、組合活動
を理由に副委員長と書記長に対して不利益な職務変更を命じる不利益な取扱いであり、労組法七条一号及び三号に該当する不当労
働行為に当たるとされた例。
1202 考課査定による差別
賃上げ率及び一時金支給額について、組合員と非組合員との間に顕著な格差が存在し、この格差が生じたことについて合理的な理
由がなく、しかも、客観的な基準によらずに恣意的な査定をし、支給額を定めていたと認められ、また、会社が組合及び組合員に
対して敵対的な言動を繰り返していたことからすれば、会社が賃上げ率及び一時金支給額について組合員を差別的に取り扱ったこ
とは、労組七条一号及び三号に該当する不当労働行為に当たるとされた例。
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業種・規模 |
金属製品製造業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集36集815頁 |
評釈等情報 |
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