労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ネッスル・日高乳業 
事件番号  北海道地労委昭和58年(不)第1号 
北海道地労委昭和58年(不)第2号 
北海道地労委昭和59年(不)第5号 
申立人  ネッスル日本労働組合 
申立人  ネッスル日本労働組合日高支部 
被申立人  ネッスル 株式会社 
被申立人  日高乳業 株式会社 
命令年月日  昭和62年 2月27日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  事実上ネッスルの一工場として経営されている日高乳業が、(1)申立組合の日高支部からの組合費控除等に関する団交申入れに対し、社内には同一名称の組合支部しか存在しないとして拒否したこと、(2)申立人組合の日高支部所属組合員の意に反して組合費を控除し、その返還にも応じなかったこと、(3)管理職らを利用して組合本部役員を誹謗する言動をしたこと、(4)組合員3名の職種を変更したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、組合費控除等に関する団体交渉に誠意をもって応ずること、支部所属組合員の組合費控除の禁止、既控除相当額の支部への支払い(年5分加算)、支配介入の禁止(ただし、申立ての一部は却下)、これらに関するポスト・ノーティスを命じ、上記(4)に関する申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人日高乳業株式会社は、昭和58年9月16日付けで申立人ネツスル日本労働組合日高支部執行委員長X2が申し入れた組合費控除等に関する団体交渉に、誠意をもつて応じなければならない。
2 被申立人日高乳業株式会社は、申立人ネツスル日本労働組合日高支部に所属する各組合員の給与から、組合費を控除してはならない。
  また、同支部に所属する組合員の給与から昭和58年6月以降昭和59年6月までの間に控除した組合費相当額及び控除した日から支払い済みに至るまでの間、これに年5パーセントの割合による金員を附加して、同支部に支払わなければならない。
3 被申立人らは、申立人ネツスル日本労働組合日高支部が申し入れた組合費控除等に係る団体交渉を拒否したり、また、同支部に所属する組合員の給与から、組合費を控除し、その返還に応じなかつたり、更に日高支部再建委員会の構成員である係長・班長らの職制を利用するとともに、管理職らをして、同支部の弱体化を図る言動をさせるなどして、同支部の運営に支配介入してはならない。
4 被申立人らは、次の内容の陳謝文を縦1メートル、横 1.5メートルの白色木板にかい書で墨書し、被申立人ネツスル株式会社及び同日高乳業株式会社日高工場の各正面玄関の見やすい場所に本命令書の交付の日から7日以内に10日間掲示しなければならない。
               記
            陳  謝  分
 当社は、昭和58年9月16日付けで、貴組合日高支部から申入れがありました組合費控除等に関する団体交渉に対し、日高乳業株式会社内には、貴支部など二つの日高支部が存在し、かつ、これを認識していたにもかかわらず、X1氏を執行委員長とするネツスル日本労働組合日高支部しか存在せず、X2氏を執行委員長とする貴日高支部は存在しないとの理由で、これを拒否しました。
 また、当社及びネツスル日本労働組合間において締結された組合費の控除に係る協定に基づくとの理由で、貴日高支部に所属する各組合員の給与から昭和58年6月以降昭和59年6月までの間、貴組合及び貴組合員の意に反して組合費を控除し、その返還を求める申入れを拒否しました。
 更に、当社は、貴組合を嫌悪し、その弱体化を意図して、当社日高工場の管理職や係長らの職制を利用し、貴組合の本部役員をひぼうしたりして、貴支部の組合活動に支配介入する言動をしましたが、これらはいずれも北海道地方労働委員会によつて、労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 ここに深く陳謝致しますとともに、今後このような行為を繰り返さないことを誓います。
  昭和 年 月 日(掲示する初日を記載すること。)
 ネツスル日本労働組合
  本部執行委員長 X3 殿
 ネツスル日本労働組合日高支部
  支部執行委員長 X4 殿
           ネツスル株式会社
            代表取締役社長 Y1
           日高乳業株式会社
            代表取締役社長 Y2
5 昭和56年7月23日、苫小牧市内で開かれた製造課長会議において、被申立人らが、係長らの職制を利用して支配介入の言動をした旨の申立ては、これを却下する。
6 申立人らのその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
執行委員X5を品質管理課から総務課守衛班への職種変更は、組合の執行委員会の開催状況及びX5の執行委員会への出席状況からみて、X5の出席に支障があったと認められず、X5の組合活動を妨害する意図のもとになされたとは認められないとして組合の主張が斥けられた。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
申立人組合所属組合員X6及びX7の同一課内の職種変更は、労働協約に定める事前通告を要する場合とは認められないことから、事前通告をしなかったことが支配介入には当たらないとされた。

1601 福利厚生上の差別
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社が、申立人組合の存在を否認し続け、申立人組合からの再三にわたる組合費の控除の中止及び既に控除した額の返還の申入れにもかかわらず、所属組合員から申立外組合員として組合費控除を継続したことが不当労働行為とされた例。

2114 組合の不存在
2901 組合無視
会社に二つ支部が存在するに至った日以降の団交申入れを会社が、申立外支部のみしか存在しないとして、拒否したことが団交拒否であるとともに支配介入とされた。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
工場長、製造課長ら管理職が、申立人組合員に対して組合役員を誹謗したり、大会代議員選挙の実施、支部大会開催に干渉するなどの反組合的言動をしたことが支配介入とされた。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
申立外組合に所属する係長、班長らが、会社管理職らの一連の反組合的言動と同時期に多数回にわたり行われ、その発言内容においても、同趣旨のものであることから会社の意を受け、申立人組合員に対して、組合役員を誹謗するなどの反組合的言動をしたものと判断され、支配介入とされた。

4600 対抗的団体に対する措置(解散・団交禁止・協定破棄・経費援助の停止等)に触れた例
会社が、申立人組合員らの意に反し、組合費の控除を行い申立外組合に引き渡したことに対し、会社が責任をもって同控除額相当額に年5%の金員を付し、申立人組合に返還を命じた。

4820 単一組織の支部・分会等
申立人組合及び同支部は、臨時全国大会及び同支部大会が開催された時点においてそれぞれ独立した労働組合としての存在が明確となったものであり、申立人適格を有するとされた。

4916 企業に影響力を持つ者
ネッスルと日高乳業は、経営面及び労使関係の実態的側面からみると別法人であるが、日高乳業は実質的にネッスルの一工場として機能していると認められ、ネッスルも被申立人適格を有するとされた。

5200 除斥期間
課長補佐Y3が、定期大会に向けた代議員選出に当たって落選させるよう工作を指示した旨の事実は、その発生から本件救済申立てまで1年以上経過したことが明らかであり、継続する行為とは認められないとされた。

業種・規模  食料品製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集81集244頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
札幌地裁昭和62年(行ウ)第1号 請求棄却・訴えの却下  平成 2年12月25日 判決 
札幌高裁平成 3年(行コ)第7号/他 控訴の却下  平成 4年 2月24日 判決 
札幌高裁平成 3年(行コ)第3号/他 控訴の却下  平成 4年 2月24日 判決 
最高裁平成 4年(行ツ)第120号 控訴審判決の一部破棄自判  平成 7年 2月23日 判決 
最高裁平成 4年(行ツ)第119号 上告の却下  平成 7年 2月23日 判決 
 
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