事件名 |
ネスレ日本・日高乳業 |
事件番号 |
最高裁平成 4年(行ツ)第120号
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上告人 |
ネスレ日本 株式会社 |
上告人 |
日高乳業 株式会社 |
被上告人 |
北海道地方労働委員会 |
被上告人参加人 |
ネッスル日本労働組合 |
被上告人参加人 |
ネッスル日本労働組合日高支部 |
判決年月日 |
平成 7年 2月23日 |
判決区分 |
控訴審判決の一部破棄自判 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、事実上ネスレ日本(旧ネッスル)の1工場として経営されて
いた日高乳業が、(1)ネッスル日本労組日高支部(以下「日高支部」という。)からの組合費控除等に関する団交申し入れに対
し、社内には同一名称の他の組合支部しか存在しないとして拒否したこと、(2)日高支部所属組合員の意に反して組合費を控除
し、その返還にも応じなかったこと、(3)管理職らを利用して同組合本部役員を誹謗したことなどをめぐって争われた事件であ
る。
北海道地労委は、(1)組合費控除等に関する団交に誠意をもって応ずること、(2)支部所属組合員の組合費控除の禁止、既
控除相当額の支部への支払い(年5分加算)、(3)支配介入の禁止、(4)ポスト・ノーティスを命じたところ、ネスレ日本及
び日高乳業はこれを不服として行政訴訟を提起した。 第一審札幌地裁は、日高支部は組合員が1人も存在しなくなり自然消滅し
ているとして、地労委の救済命令中(1)同支部に係る団体交渉の応諾、組合費控除の禁止、支配介入の禁止、同支部を名宛人と
した陳謝文の掲示及びネッスル日本労組を名宛人として掲示場所を日高乳業日高工場とする陳謝文の掲示等を命じた部分は、訴え
の利益を欠くからとして却下し、その他については両会社の請求を棄却し、かつ(2)日高支部の補助参加申立てを却下したた
め、(1)に関して両会社が、(2)に関して日高支部がそれぞれ控訴をしたが、札幌高裁は、一審判決の(1)、(2)とも維
持して労使双方の控除を棄却したため、さらに労(委)使双方が上告したものである。(本件は(1)に関して地労委(補助参加
人ネッスル日本労組)・日高支部が、(2)に関して日高支部がそれぞれ上告したもの)
最高裁は、一部取消し、却下し、その余の上告を棄却した。 |
判決主文 |
原判決のうち、被上告人が昭和58年道委不第1号、第2号及び昭
和59年道委不第5号不当労働行為救済申立事件につき昭和62年2月27日付けでした命令の主文第2項後段に関する部分を破
棄し、第一審判決主文第1項のうち右部分を取り消す。
上告人日高乳業株式会社の本件訴えのうち、被上告人のした右命令の主文第2項後段の取消しを求める訴えを却下する。
上告人らのその余の上告をいずれも棄却する。
訴訟の総費用及び被上告補助参加人ネッスル日本労働組合の参加によって生じた訴訟の総費用は上告人らの負担とし、被上告補助
参加人ネッスル日本労働組合日高支部の参加によって生じた訴訟の総費用は同支部の負担とする。 |
判決の要旨 |
6140 訴の利益
組合員が1人もいなくなった組合日高支部に対し、控除組合費相当額の支払いを命じた救済命令部分は既に拘束力が失われている
ので、会社がその取消を求める訴えの利益は失われているとして会社の上告が却下された例
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
本件ポスト・ノーティス命令において、支配介入の言動の具体的事実と「陳謝します」等の文言を使用したことは、将来同種行為
を繰り返さない旨を強調する趣旨のものであり、本件命令が労委としての裁量権の範囲を超えるものとはいえないとした、原審の
判断が相当とされた例
6150 当事者能力・当事者適格
申立組合の労組法2条及び5条2項の要件は、命令の合議の時点までにそれが充足していればよいと解するのが相当であり、本件
申立組合は、合議の時点までに要件を充足していたため、本件救済申立についての当事者適格を有するとした原審の判断が相当と
された例
4914 経営委任をしている者
日高乳業とネスレ日本の業務形態等の諸事情に鑑みると、ネスレ日本は実質的に日高乳業と同一視しうる程度の直接の支配力ない
し影響力を日高乳業に及ぼし得る地位にあったから、労組法7条所定の使用者として救済命令の当事者になりうるとした原審の判
断が相当とされた例
3410 職制上の地位にある者の言動
課長らの言動は、会社の意を受けて、スト権投票及び大会開催に向けて、組合の結成を妨害し又はその組織を弱体化させることを
意図して、組織的かつ計画的に行った反組合的、支配介入の言動であったとした原審の認定判断が相当とされた例
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業種・規模 |
飲料・たばこ・飼料製造業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集30集132頁 |
評釈等情報 |
判例タイムズ 875号 81頁
最高裁判所民事判例集 49巻2号
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