事件名 |
ネッスル・日高乳業 |
事件番号 |
札幌地裁昭和62年(行ウ)第1号
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原告 |
日高乳業 株式会社 |
被告 |
北海道地方労働委員会 |
被告参加人 |
ネッスル日本労働組合 |
被告参加人 |
ネッスル日本労働組合日高支部 |
判決年月日 |
平成 2年12月25日 |
判決区分 |
請求棄却・訴えの却下 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、申立人組合と同一名称の申立外組合しか存在しないとして
行った(1)団交拒否、(2)中止を申し入れたチェック・オフの続行及び申立外組合への交付、(3)管理職らによる組合への
支配介入をめぐって争われた事件で、北海道地労委の一部救済命令(62・2・27)を不服として会社が行訴を提起していた
が、札幌地裁はこれを棄却(一部却下)した。 |
判決主文 |
1 被告が、昭和58年道委不第1号、同第2号及び昭和59年道委
不第5号不当労働行為救済申立事件について、昭和62年2月27日付けでした命令の主文第2項後段(「また、同支部に所属す
る組合員の給与から昭和58年6月以降昭和59年6月までの間に控除した組合費相当額及び控除した日から支払い済みに至るま
での間、これに年5パーセントの割合による金員を附加して、同支部に支払わなければならない。」との部分)、及び同主文第4
項のうち、原告らに対し、補助参加人ネッスル日本労働組合を名宛人とし、掲示場所を被申立人ネッスル株式会社の正面玄関の見
やすい場所として陳謝文の掲示を命じた部分の取り消しを求める原告らの請求をいずれも棄却する。
2 被告がなした右命令のうち、主文第1項、第2項前段(「被申立人日高乳業株式会社は、申立人ネッスル日本労働組合日高支
部に所属する各組合員の給与から、組合費を控除してはならない。」との部分)、第3項、及び第4項のうち、原告らに対し、
ネッスル日本労働組合日高支部を名宛人として陳謝文の掲示を命じた部分の全部及びネッスル日本労働組合を名宛人とし、掲示場
所を原告日高乳業株式会社日高工場の正面玄関の見やすい場所として陳謝文の掲示を命じた部分の取り消しを求める訴えをいずれ
も却下する。
3 補助参加人ネッスル日本労働組合日高支部の補助参加申立てを却下する。
4 訴訟費用及び補助参加人ネッスル日本労働組合の参加により生じた費用は、いずれも原告らの負担とする。
5 補助参加人ネッスル日本労働組合日高支部の参加により生じた費用及び参加に対する異議により生じた費用は、いずれも同補
助参加人の負担とする。 |
判決の要旨 |
6160 訴訟参加
支部所属組合員が一人も存在しなくなったことは、同支部の消滅事由となり、かつて日高工場で勤務した支部組合員で構成する再
建支部は組合規約に合致せず、従前の支部とは別個のものであるから、再建支部の補助参加の申立ては却下する。
5140 資格審査
申立組合の労組法2条及び5条2項の要件は、救済申立時に要件を充足している必要はなく、合議の時点までそれが充足していれ
ばよいと解するのが相当であり、本件申立組合は、合議の時点までに要件を充足していたと推認できる。
6140 訴の利益
支部組合は、所属組合員が一人も存在しなくなったころ自然消滅しているから、同支部を名宛人とした部分は、命令を遵守するに
由なく、命令違反という事態の発生もありえないから、同部分を取り消す必要性はなく、会社は訴えの利益を有しない。
4200 組合解散・消滅
救済申立ての取下げは当該申立てから命令書が交付されるまでの間に限り可能であり、以後はできないのであるから、この期間経
過後になされた本件取下は本件救済命令の効力に何らの影響も及ぼさない。
4200 組合解散・消滅
支部は法人格を取得しており、その清算が結了するまでの間は清算の目的の範囲内で存続するから、金銭に関する公法上の債権関
係である事務はこの範囲において行う事務に属し、本件命令のうち金銭支払を命じた部分は有効に存続している。
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
5%を加算した組合費控除相当額の支部への支払命令は、返還の遅延がなかったと同じ事実上の状態を回復させる趣旨からのもの
で、支部らは組合員の委託を受けて返還についての交渉をしていたことも斟酌すると相当性を欠くとまでいえない。
6140 訴の利益
命じられたポストノーティス命令の掲示場所である工場が自己の支配下から離れ、しかもその従業員並びに支部組合員が存在しな
くなった場合においては、これを遵守するに由なく、これを取り消す必要性はないから、訴えの利益を欠く。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
課長らの言動は、会社の意を受けて、スト権投票及び大会開催に向けて、組合の結成を妨害し又はその組織を弱体化させることを
意図して、組織的かつ計画的に行った、反組合的、支配介入の言動であったと認めるのが相当である。
5007 謝罪・陳謝・誓約文の手交・掲示
ポストノーティス命令の「深く陳謝」との文言は、同種行為を繰り返さない旨の約束文言を強調するに過ぎないものであり、会社
に反省等の意思表明を要求することは、本旨とするところではないと解され、憲法19条違反の主張は採用できない。
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業種・規模 |
飲料・たばこ・飼料製造業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集25集661頁 |
評釈等情報 |
労働関係民事裁判例集 41巻6号 1030頁
判例時報 1386号 144頁
季刊労働法 小俣勝治 159号 199頁
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