労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  済生会中央病院 
事件番号  東京地労委昭和50年(不)第61号 
申立人  全済生会労働組合中央病院支部 
申立人  全済生会労働組合 
被申立人  社会福祉法人 恩賜財団済生会 
被申立人  社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会中央病院 
命令年月日  昭和52年 3月 1日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  就業時間中の組合集会開催、争議通知及び争議行為に対し警告書並びに通告書の交付、組合脱退勧奨、広報紙の配布、組合員への新賃金の支給遅延、チェック・オフの一方的中止、過払金返還についての団交を拒否した事件で、警告書並びに通知書の撤回、組合脱退勧奨の禁止、チェック・オフの応諾、ポスト・ノーティス及び履行報告を命じ、副医科長の脱退勧誘、新賃金の支給遅延は棄却した。 
命令主文  1. 被申立人社会福祉法人恩賜財団済生会支部東京都済生会中央病院は、申立人全済生会労働組合中央病院支部に対して発した昭和50年 4月5日付、同月16日付および 5月10日付(2通)「警告書並びに通知書」を撤回しなければならない。
2. 被申立人病院は、職制を通じて申立人支部組合員に対して同組合からの脱退を勧誘してはならない。
3. 被申立人病院は、申立人支部から対象者名簿を添えてチェック・オフの請求を受けたときは、同組合の対象者全員についてチェック・オフしなければならない。但し、被申立人病院において、対象者のうち組合員資格の有無について疑義を生じた者があるときは、当該対象者に限り、チェック・オフを留保することができる。この場合は、その理由を明確にして同組合に申し入れ、直ちに同組合と協議しなければならない。
4. 被申立人社会福祉法人恩賜財団済生会および被申立人病院は、本命令書受領後1週間以内に、55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、下記のとおり明瞭に墨書して、被申立人病院の従業員の見易い場所に、10日間掲示しなければならない。
              記
                  昭和 年 月 日
  全済生会労働組合
    中央執行委員長 X1 殿
  全済生会労働組合中央病院支部
    委員長 X2 殿
           社会福祉法人恩賜財団済生会
               代表理事 Y1
           社会福祉法人恩賜財団済生会支部
           東京都済生会中央病院
               院  長 Y2
 社会福祉法人恩賜財団済生会支部東京都済生会中央病院が、
(1) 全済生会労働組合中央病院支部に対し、集会及び争議通知並びに争議行為について昭和50年 4月 5日付、同月16日付、同年 5月10日付(2通)の「警告書並びに通知書」を交付したこと
(2) 同支部組合員に対するチェック・オフを中止したこと
(3) 同支部組合員に対し脱退を勧誘したこと
(4) 病院全従業員に対し、支部の争議権確立手続についての警告を内容とする「違法ストには処分」と題する同年 4月16日付「労務情報」を配布したこと
(5) 支部と昭和50年春季賃上げ交渉中、病院全従業員に対し、新賃金を支給する旨の「お知らせ」を配布したことは、いずれも貴支部に対する不当労働行為であると、東京都地方労働委員会で認定されました。今後このような方法で貴組合の運営に支配介入することはいたしません。
 この掲示は同地方労働委員会の命令によって行うものであります。
 (注、年月日は文書を掲示した日を記載すること)
5. 被申立人は、第2項を除く前各項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告しなければならない。
6. その余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  2620 反組合的言動
午後3時過ぎに昼休みに相当する休憩時間中に行われた組合集会は、病院が突然提起した急患室勤務条件変更について、応急に対処するためのもので、集会の時期、内容並びに結果等から考えれば、同集会の緊急性と必要性が認められ、また、昼休み集会は、春闘中、大詰の段階であって、組合員の結束、討議等のため時間を費やし、結果として就業時間内に多少の時間が食い込んだものであるから、就業時間中の集会であったからといって処分を前提とする厳重な警告をなしたことは行過ぎであり、支配介入である。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
3500 処分の時期
明文の協定のないまま長時間実施されてきたチェックオフを病院が一方的に中止したことは、新労の結成により、両組合の組合員および非組合員の仕分けが困難になったとしても、給与支給の際組合に照会または協議すれば知りうるところ、何らの手続をとらなかったこと、是正された組合員名簿が提出された後も、全員について再開せず、さらに、チェック・オフを中止した日が新労の結成大会の翌日であり、しかも、組合脱退勧奨が盛んに行われていた時期であること等からして、支配介入である。

1201 支払い遅延・給付差別
申立人組合員に対する新賃金の支給が遅れたのは、組合との協定の成立が遅れたことによるものとされた例。

2620 反組合的言動
スト権確立手続に問題があり、法に違反するとして、組合の争議通知及び争議行為に対して警告書並びに通告書を交付したことが支配介入とされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
看護婦長、医科長らの組合脱退を勧誘する言動等が支配介入とされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
副医科長の新労加入勧誘の言動が支配介入でないとされた例。

2620 反組合的言動
賃金交渉の途中で、新賃金の支給に関する文書を配布したことが支配介入とされた例。

3410 職制上の地位にある者の言動
看護婦長、医科長らの組合脱退勧誘が管理職の行為として病院の責に帰すべき行為とされた例。

3411 その他の従業員の言動
副医科長の新労加入勧誘の言動が新労の発起人としての行為とされた例。

3500 処分の時期
新賃金の支給に関する文書の配布が、新労の結成活動及び組合脱退者が続出し、しかも新労結成大会の前日のことであったことから組合の団結と統制に動揺を与えたものとされた例。

4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
過払金返還問題についてはすでに解決済であるから団交を命ずる実益はないとされた例。

4820 単一組織の支部・分会等
本件申立人組合である2つの組合は労組法上の労働組合であるとされた例。

4905 経営補助者
病院本部は病院各支部または支部の経営する施設の行為について共同して責に任ずべきであるとされた例。

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集61集196頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委昭和52年(不再)第26号/他 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和54年12月 5日 決定 
中労委昭和52年(不再)第25号/他 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和54年12月 5日 決定 
東京地裁昭和55年(行ウ)第10号 請求棄却・訴えの却下  昭和61年 1月29日 判決 
東京高裁昭和61年(行コ)第10号 控訴の棄却  昭和63年 7月27日 判決 
最高裁昭和63年(行ツ)第157号 控訴審判決の一部破棄自判  平成 1年12月11日 判決 
 
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