労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  済生会中央病院 
事件番号  東京地裁昭和55年(行ウ)第10号 
原告  社会福祉法人恩賜財団済生会 
原告  社会福祉法人恩賜財団済生会支部東京都済生会中央病院 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  全済生会労働組合 
被告参加人  全済生会労働組合中央病院支部 
判決年月日  昭和61年 1月29日 
判決区分  請求棄却・訴えの却下 
重要度   
事件概要  本件は、社会福祉法人恩賜財団済生会支部東京都済生会中央病院が、(1)組合の職場集会及び争議行為について、「警告書並びに通知書」を発したこと、(2)婦長及び医長が、組合員に組合からの脱退を勧誘したこと、(3)チェック・オフを中止したこと、(4)新賃金の支給を別組合より遅らせたこと等が不当労働行為であるとして争われた事件である。初審東京地労委は、病院に対し、(1)「警告書並びに通知書」の撤回、(2)組合脱退勧誘の禁止、(3)チェック・オフの再開を命じ、また、社会福祉法人恩賜財団済生会及び病院に対し、これらについてのポスト・ノーティスを命じるとともに、その余の申立てについて棄却した。また、中労委も再審査申立てを棄却し、初審命令を維持したところ、済生会及び病院は、これを不服として55年1月26日、東京地裁に行政訴訟を提起した。東京地裁は、請求棄却(一部却下)の判決を下した。 
判決主文  1.原告社会福祉法人恩賜財団済生会支部東京都済生会中央病院の訴を却下する。
2.原告社会福祉法人恩賜財団済生会の請求を棄却する。
3.訴訟費用は参加によって生じた分を含めて原告社会福祉法人恩賜財団済生会の負担とする。 
判決の要旨  6150 当事者能力・当事者適格
病院は済生会の経営にかかる一施設にすぎず、民法上の権利能力を有する者ではなく訴訟当事者能力を有しないことから、病院の訴えは不適法として却下を免れない。

6140 訴の利益
病院は済生会の一施設としてこれと一体となっているので権利義務主体となり得ない病院を名宛人とする部分の救済命令は、実質的に済生会を名宛人としこれに対し命令の内容を実現すべきことを義務づけている趣旨と解すできであるから、済生会は病院を名宛人とする部分についてもその取り消しを求める法律上の利益がある。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
0202 会社施設の利用
2620 反組合的言動
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
就業時間内に病院施設を利用して行われた職場集会は、その目的、必要性、態様等からして違法とはいえず、これに対し病院が警告書を交付したことは組合に対する支配介入であると判断した労委の認定に誤りはない。

2620 反組合的言動
3102 争議対抗手段
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
スト権確立の組合決議に手続上の瑕疵があるとして責任追及する旨の意思を、組合のみならず全従業員にまで表明した警告書の交付及び労務情報の配布は、明らかに違法を是正するという範囲をこえ、支部組合の争議行為を抑圧し支部組合員に動揺を与えるためになしたものと認めざるを得ない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
看護婦長及び医長らの職制による支部組合員に対する組合脱退勧奨は、管理者の一員として病院等の意を体して行った行動と認めるのが相当である。

2620 反組合的言動
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
病院が、組合員の範囲を明確にするために行った「お知らせ」の配布が、その配布時期、内容等から組合内部に動揺を与える意図の下になされたものであり、「お知らせ」の配布をもって支配介入に当たると判断した労委の認定に誤りはない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
書面によらないチェック・オフであっても労基法24条に抵触せず、15年余にわたるチェック・オフを事前の通告もなく給与支給日当日に一方的通告をもって中止し、さらに、その後合理的理由も認められないのに再開しないのは組合を弱体化させることを目的とした支配介入であるとみるのが相当である。

4825 その他
6180 その他手続
全済労と支部組合は上部、下部の関係にあるものの別個の組合として団結権を有しており、支部組合に支配介入等がなされた場合、全済労及び支部組合はそれぞれの団結権を侵害するものとして双方が申立利益を有するものと認められ、二重申立には該当しない。

4603 その他
5008 その他
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
チェック・オフを中止したことが不当労働行為と認められ、これが継続している限り不当労働行為が継続していることから、チェック・オフの再開を命ずることは、労委の裁量権の範囲を超えるものではない。

業種・規模  医療業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集21集83頁 
評釈等情報  労働判例 467号 18頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委昭和50年(不)第61号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  昭和52年 3月 1日 決定 
中労委昭和52年(不再)第26号/他 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和54年12月 5日 決定 
中労委昭和52年(不再)第25号/他 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和54年12月 5日 決定 
東京高裁昭和61年(行コ)第10号 控訴の棄却  昭和63年 7月27日 判決 
最高裁昭和63年(行ツ)第157号 控訴審判決の一部破棄自判  平成 1年12月11日 判決 
 
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