事件名 |
済生会中央病院 |
事件番号 |
最高裁昭和63年(行ツ)第157号
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上告人 |
社会福祉法人 恩賜財団済生会 |
被上告人 |
中央労働委員会 |
被上告人参加人 |
全済生会労働組合 |
被上告人参加人 |
全済生会労働組合中央病院支部 |
判決年月日 |
平成 1年12月11日 |
判決区分 |
控訴審判決の一部破棄自判 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、済生会及び病院が、(1)組合の時間内・無許可職場集会及
び争議行為に対する警告、(2)組合からの脱退勧誘、(3)チェック・オフの中止等をしたことが争われた事件である。
東京地労委の救済命令に対して病院側から再審査申立てがなされ、中労委は初審命令を維持したところ、済生会及び病院はこれ
を不服として東京地裁に行政訴訟を提起した。同地裁は、病院については訴訟当事者能力を有しないとしてその請求を却下し、済
生会はの請求を棄却したところ、済生会はこれを不服として東京高裁に控訴した。同高裁は、控訴を棄却したところ、済生会はこ
れを不服として最高裁に上告した。最高裁は(1)本件の労働時間中に病院の許可を得ないで病院の管理する施設を利用して行わ
れた職場集会に対して、病院が警告書を交付した行為は、不当労働行為に該当しない。(2)本件チェック・オフは書面による協
定でなく、その中止は労基法24条1項違反を解消するものであり、当時の事情としてチェック・オフをすべき組合員の特定が困
難な状況にあったこと等から本件チェック・オフの中止は不当労働行為意思に基づくものではないとして、控訴審判決の一部を破
棄、第一審判決の取消し、中労委命令のうち該当部分を取消す判決を行い、その余の上告は棄却した。 |
判決主文 |
原判決のうち被上告人のした再審査申立棄却命令の左記部分に関す
る部分を破棄し、第一審判決のうち右部分を取り消す。被上告人のした再審査申立棄却命令のうち左記部分を取り消す。
上告人のその余の上告を棄却する。
訴訟の総費用はこれを五分し、その二を被上告人の、その余を上告人の負担とし、参加によって生じた訴訟費用はこれを五分
し、その二を被上告補助参加人らの、その余を上告人の負担とする。
記
東京都地方労働委員会の昭和52年 3月 1日付初審命令(都労委昭和50年 (不) 第61号事件初審命令)の
(1) 主文第1項のうち昭和50年 4月 5日付「警告並びに通告書」及び同年
5月10日付「警告並びに通告書」のうち集会にかかるもの(1通)、
(2) 主文第3項、
(3) 主文第4項(1)のうち同年 4月 5日付「警告並びに通告書」及び同年
5月10日付「警告並びに通告書」のうち集会にかかるもの(1通)並びに主文第4項(2)を維持した被上告人の昭和54年12月
5日付再審査申立棄却命令(中労委昭和52年 (不再) 第25号事件再審査命令)のうちの該当部分 |
判決の要旨 |
1400 制裁処分
病院が、労働時間中に行われた職場集会に対して、警告書を交付したとしても、組合又はその組合員の労働契約上の義務に反し、
企業秩序を乱す行為の是正を求めるものにすぎないことから、不当労働行為に該当しない。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
本件チェック・オフの中止は、労基法24条1項違反を解消するものであり、チェック・オフをすべき組合員を特定することが困
難であること等により中止したものであることから、不当労働行為に該当しない。
5141 補正されない申立て・要件不備
初審命令の名宛人記載誤りを理由とする病院の主張は、理由がない。
2621 個別的示唆・説得・非難等
2700 威嚇・暴力行為
争議行為に対する警告、組合からの脱退勧誘は、不当労働行為である。
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業種・規模 |
医療業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集24集291頁 |
評釈等情報 |
最高裁判所民事判例集 43巻12号 1786頁
最高裁判所裁判集民事 158号 487頁
ジュリスト 道幸 哲也 953号 50頁
ジュリスト 小宮 文人 957号 221頁
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