概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪高裁令和6年(行コ)第43号
不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 |
控訴人(一審原告) |
X会社(「会社」) |
被控訴人(一審被告) |
大阪府(代表者兼処分行政庁 大阪府労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
Z組合(「組合」) |
判決年月日 |
令和6年8月30日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、組合が、組合員の賃金の支給を止めている理由の開示等を求めて団体交渉を申し入れた(以下「本件申入れ」という。)ところ、会社が、組合が会社の代表取締役を正当な代表取締役と認めていないこと等を理由として応じなかったこと(以下「本件対応」という。)が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事件である。
2 大阪府労働委員会は、労組法7条2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、団体交渉応諾及び文書交付を命じた。会社は、これを不服として大阪地裁に行政訴訟を提起した。
3 大阪府労委は、大阪地裁に緊急命令を申立てたところ、認容された。
4 大阪地裁は、会社の請求を棄却した。
5 会社は、これを不服として大阪高裁に控訴したところ、大阪高裁は控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所の判断
当裁判所も、組合による本件申入れは有効なものであり、会社による本件対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるから、会社の請求は理由がなく棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり当審における会社の補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 会社は、組合が本件申入れ以外の場において、積極的に会社からBを排除しようとしていたため、本件申入れにBを会社の代表者として認識している旨の記載があっても、真意とは異なるものであって、本件申入れは有効ではない旨主張する。
しかし、組合が会社の代表者はA2でありBではない旨の主張を維持し、別件訴訟等で争う権利を留保しつつ、本件申入れにおいてはBを会社の代表者としたことは、本件申入れにおける要求事項(本件要求事項)が、賃金の支払や業務に関する説明を求めるものであること、Bが賃金の支払について従業員に対し文書を配布していたことなどからすると、組合の立場からみて現実的な選択といえ、そのことをもって本件申入れが有効ではないとまではいえないから、会社の上記主張を採用できない。
(2) 会社は、組合がBの代表権を否認し、侵害している状況においては、構造的に労働協約の締結が不可能であるから、団体交渉拒否には正当な理由がある旨主張する。
しかし、組合が、本件要求事項について団体交渉を申し入れるに際し、Bを会社の代表者として認めることを会社から再三要求されたため、法律的には会社の代表取締役の地位にあるのはBであると認識しているとの説明をして、上記要求に一定の配慮をしたことに照らすと、団体交渉を通じて会社と組合間の信頼関係が回復される可能性がないとはいえない。また、本件要求事項は賃金の支払等を求めるものであるところ、賃金の支払という会社の負担に属する事項については、組合が労働協約の締結を徹底的に拒むとは考えにくく、会社の主張するように構造的に労働協約の締結が不可能であるということもできない。そうすると、労働協約の締結が不可能であるため団体交渉を拒否する正当な理由があるとの会社の上記主張は認められない。
2 結論
以上によれば、会社の請求は理由がないから棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当である。よって、本件控訴は理由がないから棄却する。 |
その他 |
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