労働委員会裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件番号・通称事件名  大阪地裁令和5年(行ク)第108号
ティーワイケイ高槻生コン緊急命令申立事件 
申立人(本案事件被告)  大阪府労働委員会 
相手方(本案事件原告)  株式会社Y(「会社」) 
申立人補助参加人  Z組合(「組合」) 
決定年月日  令和5年11月10日 
決定区分  緊急命令申立認容 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、組合員の賃金の支給を止めている理由の開示等を求めて団体交渉を申し入れたところ、会社が、組合が会社の代表取締役を正当な代表取締役と認めていないこと等を理由として応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労委は、労組法7条2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、団体交渉応諾及び文書交付を命じた。
 会社は、これを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起した。
 大阪府労委は、大阪地裁に緊急命令を申立てたところ、認容された。 
決定主文  1 相手方は、相手方を原告とし、大阪府を被告とする当庁令和5年(行ウ)第91号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決の確定に至るまで、申立人が大阪府労働委員会令和4年(不)第32号事件について発した命令主文第1項に従って、申立人補助参加人が令和4年4月5日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。

2 申立費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は相手方の負担とする。  
決定の要旨  1 本件命令の認定及び判断について

(1) 一件記録によれば、本件命令の認定及び判断に重大な疑義があるとはいえず、これらは適法であると一応認められる。
 なお、会社は、初審事件において組合が会社に対して令和4年4月5日付けで申し入れた団体交渉(以下「本件申入れ」という。)について、会社の代表取締役であったBの代表権を裁判手続等で争っているため、有効な団体交渉の申入れに当たらず又は団体交渉拒否の正当な理由があるなどと主張していたが、一件記録によれば、組合は、本件申入れの時点では、登記記録上の代表者であったBを代表取締役と明記し、団体交渉を申し入れていることが一応認められるから、会社の主張を排斥した本件命令の判断に重大な疑義があるとはいえない。

(2) 会社は、①組合が団体交渉を求める事項のうち、賃金支払に関して、賃金の全額支給を通知しでおり、組合が振込先を明らかにしなかっただけである旨や、②会社は組合との話し合いを拒否しておらず、本件命令には重大な事実誤認がある旨を主張する。
 しかし、上記①に関し、本件申入れにおいては、令和3年11月度以降の賃金の支払に関する事項が団体交渉事項とされていたところ、本件申入れの時点において、組合の組合員に対する当該賃金が実際に支払われ、これが解決済みであったといった事情があることはうかがわれないから、本件命令の判断に重大な疑義があるとはいえない。
 また、上記②に関し、本件申入れ後の経過に関する本件命令の認定に誤りがあるとはうかがわれない上、会社は、当庁に本件命令の取消訴訟を提起し、本件申入れについて団体交渉に応じていないから、本件命令の判断に誤りがあるとはいえない。
 そのほか、会社の主張を検討しても、前記⑴の判断を覆すべきものとはいえない。

2 緊急命令の必要性について

(1) 本件申入れの団体交渉事項が賃金の支払に関するものであること及び本件命令がされた後の経過等の事情に照らせば、本案事件の判決の確定に至るまで会社が本件命令主文第1項を履行しない状態が継続した場合、組合の団結権侵害が進行し、回復困難な損害が生ずるおそれがあると一応認められるから、緊急命令を発する必要性がある。

(2) なお、会社は、本件申入れの要求事項の多くが決着済みであるか、現時点では意味を失っており、緊急性を欠く旨を主張する。
 しかし、会社の主張を前提としても、賃金の支給がされない理由や会社の稼働の意思の確認といった本件申入れの事由について、団体交渉の意義が失われているとはいえず、前記(1)の判断を覆すべきものとはいえない。

3 結論

 以上によれば、本件申立ては理由があるからこれを認容することとする。  
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和4年(不)第32号 全部救済 令和5年6月12日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約117KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。