概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪地裁令和5年(行ウ)第91号
不当労働行為救済命令取消請求事件 |
原告 |
X会社(「会社」) |
被告 |
大阪府(代表者兼処分行政庁 大阪府労働委員会) |
被告補助参加人 |
Z組合(「組合」) |
判決年月日 |
令和6年2月28日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、組合が、組合員の賃金の支給を止めている理由の開示等を求めて団体交渉を申し入れた(以下「本件申入れ」という。)ところ、会社が、組合が会社の代表取締役を正当な代表取締役と認めていないこと等を理由として応じなかったこと(以下「本件対応」という。)が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事件である。
2 大阪府労働委員会は、労組法7条2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、団体交渉応諾及び文書交付を命じた。会社は、これを不服として、大阪地裁に、行政訴訟を提起した。
3 大阪府労委は、大阪地裁に緊急命令を申立てたところ、認容された。
4 大阪地裁は、会社の請求を棄却した。
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判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。
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判決の要旨 |
1 争点1 本件申入れが有効な団体交渉の申入れに当たるかについて
本件申入れは、労働組合である組合が、法人登記事項上の代表者であるBを使用者である会社の代表取締役と明示し、Bが会社の代表者であることを認識している旨を示してなされたものであって、賃金の支払等を要求事項とするものであるから、有効な団体交渉の申入れであると認めるのが相当である。
2 争点2 本件対応は正当な理由のない団体交渉拒否に当たるかについて
(1) 本件申入れ後、会社は、本件対応をしているのであり、組合との団体交渉を拒否しているというべきである。
そこで、上記拒否に正当な理由があるかについて、以下、会社の主張を検討する。
ア 「組合は、Bを会社の代表者と認めていないから、本件申入れについて団体交渉を行っても、実質的に対等な立場で有効な協議を行うことは著しく困難である。」旨の主張について
組合は、本件申入れにおいて、Bを会社の代表取締役と明記して団体交渉を申し込んでいるから、会社の主張は採用することができない。
イ 「仮に会社が組合との間で外形上何らかの合意に至っても、組合は有効な合意と評価しないので、労働協約の締結ができない。」旨の主張について
本件申入れは、Bを会社の代表取締役と明記してなされたものであり、会社と組合との間で実質的な協議や労働協約の締結ができないことが明らかな状況にあったとは認められない。
加えて、団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときであっても、これが団体交渉を拒否する正当な理由に当たるということはできない(最二小判令4・3・18参照)。
ウ 「分会員は、Bの業務指示に従わないので、団体交渉によって問題を解決することもできない。」旨の主張について
分会員が、会社との団体交渉を妨害しようとしたことはうかがわれず、Bの業務指示に従わず、Bを会社事務所に立ち入らせないなどしたとしても、直ちに賃金の支払等について団体交渉を拒否する正当な理由に当たるということはできないから、会社の主張は採用することができない。
エ 「組合は、違法な株式会社変更登記申請をしてBを会社の代表者から排除し、会社を支配下に置こうとしたものであり、労使関係としての信頼関係を築くことができない。」旨の主張について
組合の元副執行委員長であったA2(以下「A2」という。)は、令和3年10月11日、同月10日付けでBを取締役から解任して代表取締役を退任し、自らが取締役及び代表取締役に選任され、会社の従業員であるC2が取締役に選任されたこと等を申請内容として、会社名義で大阪法務局北大阪支局に対して株式会社変更登記申請をした(以下「本件登記申請」という。)。
本件登記申請等を契機として、会社と組合との間で係争を生じ、会社の組合に対する信頼が失われたことは推認できるが、このような信頼関係の喪失が団体交渉を拒否する正当な理由に当たるとはいえないし、団体交渉を通じて両者間の信頼関係を回復する途も残されている。
したがって、会社の主張は採用することはできない。
(2) 小括
以上によれば、本件対応は、正当な理由のない団体交渉拒否(労組法7条2号)に当たるというべきである。
3 よって、会社の請求には理由がないから、これを棄却することとする。
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その他 |
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