概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京高裁令和4年(行コ)第5号
木村建設再審査棄却命令取消請求控訴事件 |
控訴人 |
株式会社X(以下「会社」) |
被控訴人 |
国(処分行政庁 中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
Z組合(以下「組合」) |
判決年月日 |
令和4年10月31日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、分会の組合員であるA2ら3名に対し、①分会結成の公然化の翌日等に配車を指示しなかったこと、②夏季賞与を例年の半額に相当する金額で支給したこと、③解雇したこと等が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、申立ての一部について不当労働行為の成立を認め、会社に対し、配車を指示しなかった日の賃金相当額の支払、夏季賞与未払分相当額の支払、解雇の撤回、原職復帰、バックペイ、文書の交付及び掲示等を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、初審命令主文に記載の掲示する文書等の一部を変更し、その余の申立てを棄却した。
4 会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
5 会社は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は、会社の控訴を棄却した。
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判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は控訴人の負担とする。
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判決の要旨 |
1 会社は、8月17日の配車不指示に関し、配車係であるB2において、A2分会長ら3名が夏季休業の開始日の前日である平成27年8月11日に欠勤したのは、同人らが示し合わせて行ったものと考え、夏季休業明けの同月17日も上記3名が欠勤すると危惧して配車不指示をしたものであって、配車不指示には合理的な理由があると主張する。
しかし、7月31日の配車不指示、8月1日のB1社長発言、8月3日のB2(B2は、会社の利益代表者である専務と相談の上、配車係としてダンプ運転手の配車指示業務を取りまとめ、具体的な業務指示を与える立場にあったものであり、専務の指示で会社の役員及び幹部従業員らが出席する会議にも同席していたというのであるから、使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者と認めるのが相当)及びB3(B2に同調して、同趣旨の発言をしていることからすれば、B2による発言と同視することができる。)発言、8月7日のB1社長発言といった会社の一連の不当労働行為及びこれに対する本件組合等の対応の状況等に照らせば、8月17日の配車不指示は、本件組合等を嫌悪し、その組合員であるA2分会長ら3名に処遇上の不利益を課すことにより、本件組合等の影響力を排除するためにされたものとみるのが自然である。
したがって、会社の上記主張は採用することができない。
2 会社は、8月1日のB1社長発言について、同日の会議の出席者は、会社の幹部等の経営者側の者に限られていたのであり、そのような会議において、弁護士費用の支払等のために夏季賞与を従業員に支給することが可能かといった議論がされるのは当然であるから、同発言をもって不当労働行為と認定すべきではないなどと主張する。
しかし、同日の会議には会社の従業員であるB2も出席しており、同人から他の従業員に対し、8月1日のB1社長発言が伝わり、その結果、反組合的感情が醸成されていること等がうかがわれるのであって、8月1日のB1社長発言は、組合員と非組合員の対立をあおり、本件組合等の自主性や組織力を損なうものであって、支配介入の不当労働行為に当たるとみるのが相当である。
したがって、会社の上記主張は採用することができない。
3 会社は、本件夏季賞与支給について、会社において、夏季賞与の支給の可否及び額を検討した当時、予想外かつ多額の支出を警戒しなければならず、その額は、いまだ不確定であったことから、前年の半額の夏季賞与を支給するに至ったものであって、経営上の数字を具体的に示して半額と算定した根拠を示せるような状況ではなかったとして、会社には、本件団交における誠実交渉義務違反はないと主張する。
しかし、そもそも、会社は、本件団交において、賞与の支給は、労働契約上定められておらず、B1社長の経営上の裁量で恩典として支給されているものであるなどと説明していたにすぎないのであって、上記のような説明をしたわけではないし、上記説明もそれ自体具体性に欠け、例年の時期に前年と同額の賞与を支給できないことを合理的に説明するものとはいえない。
したがって、会社の上記主張は採用することができない。
4 会社は、本件解雇に関し、原判決は、A2(組合分会長)夫妻の2度にわたる追突事故をあまりに軽視するものであって不当であると主張する。
しかし、上記追突事故をもって、A2夫妻のダンプカーの運転手としての技量が解雇事由に当たるほど低いと断ずることはできないし、そもそも、会社は、本件解雇通知書に解雇事由として上記追突事故の存在を挙げていないのであって、会社自身、解雇に当たって、上記事由を問題視していなかったものである。
したがって、会社の上記主張は採用することができない。
5 その他、会社は、種々主張するが、原審における主張を繰り返したり、原判決を正解しないでこれを論難するものなどであるにすぎず、いずれも採用することができない。
6 結語
よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却する。
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その他 |
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