事件番号・通称事件名 |
東京高裁平成28年(行コ)第195号
大阪広域生コンクリート協同組合外7社中労委再審査申立棄却命令取消請求控訴事件 |
控訴人 |
X1労働組合関西地区生コン支部 |
控訴人 |
X2労働組合総連合関西地方総支部生コン産業労働組合 |
控訴人 |
X3労働組合関西地方大阪支部(X1、X2と併せて「組合ら」)
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被控訴人 |
国(処分行政庁・中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
Z1協同組合 |
被控訴人補助参加人 |
Z2株式会社 |
被控訴人補助参加人 |
Z3株式会社 |
被控訴人補助参加人 |
Z4株式会社 |
被控訴人補助参加人 |
株式会社Z5 |
被控訴人補助参加人 |
Z6株式会社 |
被控訴人補助参加人 |
Z7株式会社 |
被控訴人補助参加人 |
Z8株式会社(Z2からZ7と併せて「セメントメーカー7社」)
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判決年月日 |
平成28年12月21日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 組合らは、Z1及びセメントメーカー7社に対し、それぞれ団体
交渉を申し入れたところ、補助参加人らはいずれも団体交渉を拒否した。組合らは、これらの団体交渉拒否が、労働組合法7条2
号の不当労働行為に当たるとして、大阪府労働委員会に救済を申し立てたところ、大阪府労委は、補助参加人らは組合らの組合員
の労組法上の使用者に該当しないとして申立てをいずれも却下した。
2 組合らは、本件各初審命令を不服として中央労働委員会に対し再審査を申し立てたところ、中労委は、補助参加人らの使用者
性に関する大阪府労委の判断を維持した上で、本件各初審命令に係る組合らの各救済申立てをいずれも棄却した。
3 組合らは、これを不服として、東京地裁に本件再審査命令の取消しを求める行政訴訟を提起したが、同地裁は、組合らの請求
を棄却した。
4 組合らは、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は、組合らの控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、控訴人らの負担とする。
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判決の要旨 |
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、原判決と同様に、組合らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり原判決を補正
し、下記2のとおり控訴人らの当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第4 当
裁判所の判断」の1ないし3で説示するとおりであるから、これを引用する。
(原判決の補正)
(1)
原判決15頁7行目の「同条の」から同16行目末尾までを、「雇用主以外の者がここにいう「使用者」に当たるといえるためには、単に労働者の労働条件に影響を与える地位に
在るというだけでは足りず、雇用関係の存在を基準として、これと同視できるような法律関係にあって、現実的かつ具体的な支配
力を有している者であることを要するというべきである。そうすると、控訴人らの上記主張は、雇用関係の存在を基準とするもの
ではなく、使用者概念の外延を不明確にするものであって、同条の趣旨に合致しないから、これを採用することはできない。」に
改める。
(2)
原判決16頁24行目の「弁論の全趣旨」を「甲13、弁論の全趣旨」に改め、同17頁5行目の「甲11」の次に「、13」を加える。
(3) 原判決19頁22行目の「原告らの準備書面(3)の別表」を「原判決別表」に改める。
(4)
原判決20頁12行目から同13行目にかけての「弁論の全趣旨」を「乙A106、乙C1、弁論の全趣旨」に改め、同行目の「乙A28」の次に「、106、乙C1」を加え
る。
(5) 原判決23頁23行目の「平成23年当時」を「平成23年9月当時」に改める。
(6)
原判決23頁26行目の「労働契約」から同24頁6行目末尾までを「雇用関係はなかったのであるから、補助参加人Z1が控訴人らの組合員である労働者との関係で労組法7条
の「使用者」に当たるといえるためには、前記のとおり、単に労働者の労働条件に影響を与える地位に在るというだけでは足り
ず、雇用関係の存在を基準として、これと同視できるような法律関係にあって、現実的かつ具体的な支配力を有している者である
ことを要するというべきである。」
(7)
原判決24頁26行目の「補助参加人Z1は」から同25頁1行目の「決定権を持たないから」までを「補助参加人Z1は、組合員企業が当該決定権を行使するに当たって、何ら
かの支配力を行使し、あるいは決定を行うものではないから」に改め、同9行目の「主張するが、」の次に「補助参加人Z1が生
コンの大幅な値引き販売を行ったと認めるに足りる証拠はない。また、」を加える。
(8) 原判決28頁23行目冒頭から同29頁18行目末尾までを、次のとおり改める。
「 しかしながら、経営者会と控訴人らの間の交渉に係る労働条件の内容が、いわゆる政策事項として、他の同業者にも影響を与
える内容を含んでいた場合に、経営者会が交渉妥結に当たり関係団体である補助参加人Z1の意向を確認してあらかじめその同意
を得ることや、補助参加人Z1が経営者会と控訴人らとの間で妥結された事項の実施に協力することは、経営者会が労働条件に関
して実効的な交渉を行い、かつ、妥結した合意内容を的確に実施する上で必要なことであって、このようなことが行われているか
らといって、補助参加人Z1が経営者会と同等の立場で控訴人らと交渉しているものとはいえないし、補助参加人Z1が控訴人ら
の組合員である労働者の労働条件の決定に現実的かつ具体的な支配力を有していたということはできない。そして、上記認定に係
る協定や確認書の内容は、いずれも経営者会の会員企業である補助参加人Z1の組合員企業のみならず、会員企業以外の組合員企
業にも影響を与えるものであったのであるから、それらが補助参加人Z1の理事会で確認を経たものであったり、同協定の内容の
実現について補助参加人Z1が検証していたりしたことは何ら不自然なことではなく、そのことから、補助参加人Z1が、これら
の事項について実質的な決定権を有していたとか、あるいは雇用主と同視することができる程度に控訴人らの組合員の労働条件を
支配し、決定していたということになるものではない。
かえって、本件全証拠によっても、補助参加人Z1は、組合員企業が雇用する労働者の労働条件の決定や組合員企業のための
団体交渉をその事業とするものとは認められず、組合員企業が自ら、又は経営者会に委任して労働組合との間で行うべき団体交渉
について、何らかの決定権限を有していたものとは認められない。」
2 組合らの当審における補充主張に対する判断
(1)
組合らは、補助参加人Z1がその立場上、組合員企業の労働条件につき直接の雇用主以上に大きな影響力を持っており、ミキサー車運転手の賃金を実質的に決めているに等しい旨
主張する。
しかしながら、前記のとおり、補助参加人Z1は、組合員企業が自ら行う労働条件についての判断や決定に対して影響を与える
にとどまり、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配し、又は決定することができる地位に在るとは認められない。ま
た、補助参加人Z1が生コン価格を決定するに当たり、その輸送費を考慮に入れるのは当然のことである一方、そのような考慮の
対象となった輸送費が、そのまま組合員企業の労働者の労働条件を決定していることになると認めるに足りる証拠はない。
また、組合らが主張するように、補助参加人Z1が労働組合と使用者団体との集団交渉の長い経過を踏まえて設立されたもので
あるとしても、そのことは前記判断を左右するものではない。
(2) よって、組合らの前記主張はいずれも採用することができない。 |
その他 |
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