労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁平成28年(行コ)第177号
東日本旅客鉄道(千葉動労配転等)労働委員会命令取消請求控訴事件 
控訴人  X労働組合(「組合」) 
被控訴人  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  Z株式会社(「会社」) 
判決年月日  平成28年12月15日 
判決区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 組合は、会社が、組合の幕張支部の役員に対し、幕張車両センター本区から同センターの派出所へ配置転換を行ったこと等が不当労働行為に当たるとして、千葉県労働委員会に救済を申し立てた事案で、千葉県労委は、当該申立てを棄却した。
2 組合は、これを不服として、中央労働委員会に対し、再審査の申立てをしたが、中労委は、再審査の申立てを棄却した。
3 組合は、これを不服として、東京地裁に行政事件訴訟を提起したが、同地裁は、組合の請求を棄却した。
4 組合は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は組合の控訴を棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。  
判決の要旨  第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」第3の1ないし5に記載のとおりであるから、これを引用する。
 (原判決の補正)
(1) 原判決26頁24行目の「そうすると」から同27頁2行目末尾までを「そうすると、本件ライフサイクル配転について、労組法7条1号又は3号の各不当労働行為が成立するというためには、参加人が、本件ライフサイクル配転に名を借りて控訴人の組合員に対して不利益を与えようとし、又は控訴人の運営について支配し、若しくは介入することを意図して本件ライフサイクル配転を行ったことが認められる必要があるというべきである。」と改める。
(2) 同27頁23行目の「各派出所に」から同頁24行目の「比較的高く」までを「平成21年9月1日当時、各派出所に配置された車両職41名の年齢構成は、50歳以上の者が36名であり、しかも」と改める。
(3) 同28頁1行目の「勤務指定されていた経験がある者」を「指定されていた者」と改める。
(4) 同28頁12行目の「乙C5・」の次に「46頁、」を加える。
(5) 同29頁11行目の「行る」を「行える」と改める。
(6) 同30頁14行目の「③」から同頁15行目の「指定されていたこと」までを「③平成21年9月1日の時点で、鴨川派出所の予備要員は、本区ではA1副支部長のみであり、館山派出所に4名の予備要員がいたものの、同派出所には要員に余裕がなかったこと」と改める。
(7) 同30頁18行目の「乙B26、」の次に「乙B28、」を加える。
(8) 同31頁8行目の「同時点で」の次に「本区における」を加える。
(9) 同31頁10行目の「除外された。」の次に「また、当時、千葉派出所の予備要員として、前記本区の3名の他に、成田派出所に1名がいたが、当時、成田派出所は要員に余裕がなかった。」を加える。
(10) 同31頁15行目の「乙B26、」の次に「乙B28、」を加える。
(11) 同32頁16行目の「除外された。」の次に「また、当時、千葉派出所の予備要員として、前記本区の6名の他に、成田派出所に1名がいたが、当時、成田派出所は要員に余裕がなかった。」を加える。
(12) 同32頁21行目の「乙B26 、」の次に「乙B28、」を加える。
(13) 同33頁8行目の「同時点における」を「同時点で本区における」と改める。
(14) 同33頁10行目の「希望していた。」の次に「また、当時、成田派出所の予備要員として、前記本区の3名の他に、千葉派出所に1名がいたが、当時、千葉派出所は要員に余裕がなかった。」を加える。
(15) 同33頁17行目の「乙Aa110の3」を「乙Aa110の2及び3」と改める。
(16) 同34頁2行目の「C1」を「C1」と改める。
(17) 同35頁22行目末尾の次に改行の上、以下を加える。
「イ 予備要員の指定は、予備要員としての適性を有する者(多くは経験豊富なベテラン従業員)に対して、派出所での見習勤務をさせることから始められるが、派出所での見習勤務は、前月の勤務指定(当月1か月の勤務を前月の25日に発表される勤務指定表で指定する。)によって、見習先の派出所及び見習勤務日が指定される。そして、見習勤務が終了すると、当該派出所の予備要員としての勤務に就くことができるようになるが、その時点で改めて予備要員としての指定がされるということはない。」
(18) 同35頁23行目の「イ」を「ウ」と、同36頁4行日の「ウ」を「エ」と、同頁8行目の「エ」を「オ」とそれぞれ改める。
(19) 同36頁16行目の「乙Aa29、」の次に「乙Aa105の6ないし10、乙Aa126」を加える。
(20) 同36頁18行目の「オ」を「カ」と改める。
(21) 同38頁4行目の「乙B17」を「乙Ac9、乙B17」と改める
(22) 同38頁15行目末尾に続けて改行の上、以下を加える。
「(6) 鉄道事業配属採用社員
 参加人においては、平成3年から鉄道事業配属採用社員(「鉄事採」ともいう。)という採用制度が設けられている。鉄道事業配属採用社員とは、駅、乗務員(車掌・運転士)、列車制御システム、エネルギー、情報通信、車両、機械、保線、土木、建設、建築といった鉄道事業の「第一線」で、地域に密着し、鉄道事業を支えるプロフェッショナルとしての活躍に加えて、将来的には企面部門での活躍も期待して採用された従業員をいい、A7及びA8は鉄道事業配属採用社員である。」
(23) 同38頁24行目冒頭から同39頁25行目末尾までを以下のとおり改める。
「イ 前記前提事実(前記第2の2(4)ア、ウ、同(5))によれば、控訴人は、幕張車両センターにおいて、組合員の数が最も多い労働組合であり、参加人が進める業務委託・外注化の施策について、一貫して強く反対していたこと、平成21年10月、参加人は各労働組合に対し新規業務委託の提案を行ったが、控訴人はこれに対しても強く反対したこと、本件配転は、新規業務委託の提案と前後して行われ、約5か月間に控訴人の幕張支部の役員12名のうち副支部長2名、書記長1名及び執行委員2名の合計5名を幕張車両センターから派出所に配転するものであったことが認められる。
  しかし、前記認定事実(前記2(1))によれば、本件配転が行われた当時、派出所に配置された車両職41名のうち15名が平成21年度及び平成22年度中に定年退職予定という状況であり、参加人としては、業務を円滑に遂行するためにこれらの退職者の補充を確実に行っていく必要があり、本件配転はいずれも定年追職者の退職補充又はこれに関連する人事として行われたものであることが認められるところである。
  そうすると、本件配転は、参加人の業務上の必要性に基づいて行われたものであったということができ、本件配転の時期が新規業務委託の提案時期と近接していたこと、配転の対象者に控訴人の役員12名中の5名が含まれていたことという事実があるとしても、そのことから直ちに参加人の不当労働行為意思を推認することはできないというべきである。
 ウ 控訴人は、本件配転が行われる前に幕張車両センター本区の交番検査・機能保全班から控訴人の組合員がいなくなっていた事実を捉え、参加人が主張する平成16年以降の全社的な人事政策は、その内容は虚偽であって、運用は恣意的であり、交番検査・機能保全班所属の従業員の中から新たに控訴人の組合員になる者が出てきたことから、交番検査・機能保全班から控訴人の組合員を排除するとともに、本件配転の事前準備として控訴人の組合員を臨時検査や仕業検査の担当に担務替えをしたものである旨、そして、本件配転は前記担務替えから一連のものとして控訴人の影響力を低下させる意図のもとに行われたことは明らかである旨主張する。
  しかし、前記2(2)認定の参加人の車両職の育成政策に関しては、社会人採用者については平成16年以降の採用者であっても総合車両センターでの教育を受けていないものがいること、参加人の水戸支社においても同様の運用がされているが、配属される人数が少ないため、国鉄時代の採用者も交番検査・機能保全業務を担当していることとの事情があるのであり、これらを踏まえれば、前記育成政策の内容が虚偽であって運用が恣意的であるとの事実は認めるに足りない。そして、このような育成政策の結果、本件配転当時に、幕張車両センターの交番検査・機能保全班から控訴人の組合員がいなくなっていたとしても、そのことは、控訴人の影響を低下させる意図のもとに行われたものとは認められないというべきである。
  さらに、参加人が本件配転の事前準備として控訴人の組合員を臨時検査や仕業検査の担当に担務替えをしたものであるとの事実も、これを認めるに足りる証拠はない。
  控訴人の主張は採用することができない。」
(24) 同40頁19行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。
「 さらに、控訴人は、本件人選基準のI(派出所の業務は臨時検査と仕業検査であるから、それらを行える者であること。)について、仕業検査を一応行えるようになるためには実際は2日程度の見習をすればよいのであって、参加人が派出所へ異動できる者を多く準備することはいつでも可能であったとして、このような項目を人選基準とすることの合理性はない旨主張する。
  しかし、派出所においては臨時検査と仕業検査が主な業務であることからすれば、その経験を有し、これらの業務を行うことができる者を異動の対象者を選ぶ基準として考慮することは合理性を有するものと認められる。仮に、2日程度の見習をすれば仕業検査を一応行えるようになるものであるとしても、この認定を左右するものとはいえない。控訴人の主張は操用することができない。
  また、控訴人は、本件人選基準のⅢ(派出所への配転には、当該派出所の予備要員又は過去に当該派出所に配属されたことのある者を優先する)について、予備要員の見習期間は通常であれば3日から5日程度で済むのであるから、派出所に異動させる要員の人選に際して予備要員であるか否かを重視することは合理的でないと主張する。
  しかし、本件人選基準のⅢは、見習期間を要せずに直ちに派出所の業務に就けるという効率的運用を図るために設けられた基準であって、このこと自体合理性を有するものと認められる。他方、予備要員の見習は、派出所における業務を円滑に実施することができるように概ね10日間程度指定された派出所において実施されるものであり、千葉派出所の予備要員の場合にはだいたい2週間程度の見習期間を要していたことをも考慮すれば、予備要員の見習期間は控訴人の主張するように短期間のものともいえないのであり、控訴人の主張をもって、本件人選基準のⅢの合理性についての認定判断を左右するものとはいえない。
  さらに、控訴人は、参加人が、控訴人の組合員を予め仕業検査の日勤の予備や派出の予備要員にする等した上で、現実には大きな意味を持たないはずの本件人選基準I・Ⅲを含む基準に従ったところ、控訴人の組合員が多数配転対象に残ったという体裁を装っているものである旨主張する。
  しかし、本件人選基準は、そのI・Ⅲを含めて合理的なものと認められることは前示のとおりである。控訴人の主張は採用の限りではない。」
(25) 同41頁3行目の「しかしながら、」から同頁12行目末尾までを以下のとおり改める。
「しかしながら、参加人において、配転後約3年間勤務することができたA1副支部長のような者を「退職間際の者」として扱うという職場慣行があったことを認めるに足りる的確な証拠はないし、前記副所長の発言も、幕張車両センターの本区から派出所への異動は、千葉支社人事担当課長の権限において発令するものとされていることに照らせば、配転についての決定権限がない者が個人的見解を述べたにすぎないと解されるところであり、控訴人の上記主張は前記認定を左右するものではない。
  また、控訴人は、当時、鴨川派出所で必要とされたのは動力車免許保有者であり、他に免許保有者がいたにもかかわらず、あえて免許を保有していないA1副支部長を配転する特別の理由はなかった旨主張する。
  しかし、鴨川派出所でのA1副支部長の前任者はハンドル担当者ではなかったのであるから、控訴人の主張は採用の限りではない。」
(26) 同42頁24行目未尾の次に以下のとおり加える。
「なお、控訴人は、参加人がA2配転について異動の1週間程前に予めの打診もないまま突然異動通知を出すなど不自然な取扱いをした旨主張するけれども、控訴人主張のように突然異動通知が出されたとの事実を認めるに足りる証拠はない。」
(27) 同44頁2行目の「証拠はない。」の次に以下のとおり加える。
「控訴人は、臨時検査は、他の検査・機能保全等に比べて、現場でより迅速な判断が求められる等、より難しい側面があるのであり、不安を抱えていたA4執行委員を成田派出所に配転する合理性はなかった旨主張するけれども、検査の作業内容が大幅に変わるということはなかったものであり、控訴人の主張を考慮しても、A4配転が合理性を欠くものであったとは認められない。」
(28) 同44頁18行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。
「 控訴人は、本件人選基準に該当する従業員はA5執行委員以外にもいたこと、A5執行委員は気動車についての訓練を全く受けておらず、新系列車両の機能保全業務の経験もなかったことから、A5配転は不合理である旨主張する。
  しかし、参加人が、本件人選基準に該当する従業員の中から通勤時間の比較などにより、A5執行委員を木更津派出所に配転することとしたこと、木更津派出所は参加人の千葉支社で唯一気動車の検査修繕作業を担当しているため、木更津派出所に移動となる従業員は、気動車に関する教育を約2か月行う必要があることは、前記2(3)カ認定のとおりであり、このような事情を踏まえてA5配転をしたことが合理性を欠くものとはいえない。」
(29) 同45頁20行目末尾の次に以下のとおり加える。
「控訴人は、本件配転前にあえて控訴人の組合員・役員を多く予め予備要員に指定しておいたこと自体が、一連の組合差別の流れというべきであると主張するけれども、参加人における予備要員選任基準及び予備要員の指定の状況については、前記2(1)、(4)認定のとおりであり、参加人が本件配転前にあえて控訴人の組合員・役員を多く予め予備要員に指定したとの事実を認めるに足りる証拠はない。」
(30) 同45買22行目の「強く推認する」を「推認させる」と改める。
(31) 同45頁25行目の「本件配転は、」の次に「当時、派出所に配置された車両職41名のうち15名が平成21年度と平成22年度に定年退職予定という状況の中、業務を円滑に遂行するためにこれらの退職者の補充を確実に行っていく必要があり、本件配転は、いずれも定年退職者の退職補充又はこれに関連する人事として、」を加える。
(32) 同48頁12行目の「参加人が」から同頁14行目末尾までを「参加人が、本件ライフサイクル配転に名を借りて控訴人の組合員に対して不利益を与えようとし、又は控訴人の運営について支配し、若しくは介入することを意図して本件ライフサイクル配転を行ったものと認めることはできない。」と改める。
(33) 同49頁4行目の「規定している。」の次に「また、鉄道事業配属採用の従業員については、乗務員として勤務するだけでなく、駅や、列車制御システム、情報通信、車両、機械、保線といった多様な分野で就労することが予定されていると認められ(前記認定事実)、一旦運転士職に就いたからといって職種が限定されるような規定ないし運用があるものとも認めることができない。」を加える。
(34) 同50頁2行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。
「6 控訴人の主張について
  控訴人は、本件の経緯をみると、控訴人は、平成12年の外注化提案以降、業務委託・外注化に一貫して反対し、平成21年10月の検修業務の全面外注化提案当時も強く反対していたところ、その前後の短期間に、控訴人の最大支部である幕張支部の多くの役員が派出の予備要員見習指定を受け、また、本件配転の対象となったものであり、本件配転前にあえて控訴人の組合員・役員を多く予め予備要員に指定しておいたこと自体が一連の組合差別の流れというべきであって、本件配転・本件予備要員見習指定が控訴人への組織破壊であることは明白である旨主張する。
  しかし、本件配転・本件予備要員見習指定が平成21年10月の前記外注化提案の前後の短期間にされたのは、派出所に配置された車両職41名のうち15名が平成21年度と平成22年度に定年退職予定という状況の中、業務を円滑に遂行するためにこれらの退職者の補充を確実に行っていく必要があり、本件配転はいずれも定年退職者の退職補充又はこれに関連する人事として業務上の必要性に基づき行われたものであり、本件予備要員見習指定も予め定年退職者がいる派出所の予備要員を新たに育成することを目的として業務上の必要性に基づいて行われたものであること、また、本件配転・本件予備要員見習指定について不当労働行為意思があったものと認めるに足りないことは、前示のとおりである。
  控訴人の主張は採用することができない。」  
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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
千労委平成22年(不)第3号 棄却 平成24年3月26日
中労委平成24年(不再)第23号 棄却 平成26年2月19日
東京地裁平成26年(行ウ)第462号 棄却 平成28年4月11日
最高裁平成29年(行ツ)第129号・平成29年(行ヒ)第134号 上告棄却・上告不受理 平成29年5月31日
 
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